第五章:月面聖戦編

第四十三話:強化武装

 女神様からの託宣、八体の聖獣巨人から聖獣大巨人を誕生させた俺達。


 テスト運転と友軍との連携の為の演習に出かけたら敵も出てきた。


 どうにか敵を退けられたが、友軍部隊の損耗や後始末に足を止められていた。


 「アウトドアでカレー食いながらだと、会議じゃなくてキャンプだな」


 友軍部隊の皆さんもそれぞれの国のミリ飯を広げてお疲れ様会だ。


 俺達は自陣のテントの下でカレーを作っての会議。


 調理はフローラ嬢が率先して行った。


 「私のカレーの腕を、皆様にお披露目できて光栄ですわ♪」

 「ぐぬぬ、フローラ殿の主婦力マウントですか! おかわりです!」


 アオイ嬢は、先輩チームのイエローみたいにカレーを食いまくる。


 「うむ、これは胃袋が掴まれる味じゃ♪」


 アデーレさまも納得の美味さらしい。


 「負けませんよ、私もクリームシチューなら得意です」

 「妾も腕には少々心得があるのじゃ、料理はレシピに忠実が一番じゃ」


 アデーレ様とクラウは対抗心を燃やすなよ?


 しかし、仲間に飯マズがいないって最高だな。


 「神様の林檎が隠し味かなこれは?」


 レオンは分析しながら食ていた。


 「皆でカレーは前世でも食ったが、相変わらず美味いな」

 「生まれ変わっても美味しいカレーが食べられる、最高ですねお♪」


 クレインとバッシュも美味そうに食っている。


 いや、美味いけどな。


 戦いが終わって、仲間達と食うカレーは最高だよ。


 ここに、権田原長官がいないのが残念だ。


 「ヨーグルトもありますから、皆様忘れずに飲んで下さいね」


 フローラ嬢がヨーグルトを皆のグラスに注いで回る。


 「慈母の如しじゃのう、手強い」

 「私、マッカ様の良妻賢母ですので♪」


 フローラ嬢がドヤ顔をすれば、アオイ嬢達が唸る。


 「それにしても、全部合体したからとはいえすぐに決戦は無理だな」


 クレインが周りを見ながら呟く。


 「宇宙戦艦も必要ですが、どうやって用意すれば良いんですか?」


 バッシュが疑問を述べる。


 「心当たりはあるよ、巨大な箱舟伝説がブロンズ王国にある」


 レオンが語るのは巨大な箱舟の伝説。


 かつての戦いの時。女神が建造させた巨大な箱舟。


 それが、ブロンズ王国にある巨大湖に沈んでいると言う話だ。


 「そうか、ならレンセイオーで引き上げだな」

 「そしてアイゼン帝国ン技術で修復と改造じゃ♪」


 俺が呟けばアデーレ様が乗っかる。


 敵も備えているようだがこっちも備えて行くぜ。


 英気を養う為の仲間達との安らぎの時間は魂に効く。


 カレーも美味い、ヨーグルトも美味い。


 俺は自分がレッドではなく、イエローではないかと思うほどにカレーを食った。


 アップルから貰った林檎も入っているから、食が進むんだ。


 翌日。


 予定がずれたが友軍の部隊とチーム分けをして模擬戦をした。


 レオン軍とアデーレ軍に別れての対戦。


 俺は救護係として、フェニックスの力でケガ人の治療に当たった。


 フェニックスの力がレベルアップしたのか?


 自分でも驚いたが、マジックメイルなどの無機物も治せた。


 「馬鹿、マジックメイルや魔法の道具にも回復魔法は効くと習っただろ?」


 救護係の仕事を終えた俺が、様子を見に来たクレインとバッシュに語る。


 だが、クレインにはそう言われて呆れられた。


 「いや、それにしても治り過ぎな気がするんだが?」


 無機物に実際使う事が無かったので驚きつつ言い返す。


 「まあ、マッカさんのやり過ぎはいつもの事ですから」


 バッシュはいつも通りに笑う。


 クレインにツッコまれ、バッシュには笑われたが聖獣の力の凄さを思い知った。


 仕事を終えた俺は、草むらに寝ころび黄金の林檎を食いつつ一休みと洒落込む。


 アップルからは、魂の治療薬だから毎日食えと貰って食っている。


 食い終えても翌朝にはログインボーナスみたいに支給される。


 聖獣にも食わせろと言う事なので、ヒヨちゃんにも食べさせている。


 ヒヨちゃん、育ち盛りなのか?


 前より大きくなってないか?


 まあ、聖獣が強くなれば俺もパワーアップするから良いかな?


 何か急に眠気に襲われた俺は、気が付くと緑豊かな農場にいた。


 「お帰りなさい、マッカ♪」


 林檎の木にもたれかかっていた俺に野良着の美少女ことアップルが声をかけた。


 「いや、ただいまって言うのは違う気が?」


 あの世的な要素のある世界に帰るとかはまだ遠慮したい。


 「良いのよ、あんたは私の旦那でもあるんだから♪」


 アップルの笑顔が可愛くて目をそらしてしまう。


 「いや、それよりも呼び出しのご用ってのは?」


 俺はアップルに尋ねる、主神の下とは言え女神の呼び出しとは穏やかじゃない。


 「うん、ハレール様からマッカにご褒美を上げるようにって」


 アップルがナチュラルに俺の頭を撫でながら微笑む。


 「いや、俺だけには駄目だろ? 皆、頑張ってるんだぜ?」


 流されかけたが俺は待ったをかける。


 俺だけが頑張ってたわけじゃない、仲間達に助けてくれた皆も報いはあるべきだ。


 「うん、勿論人々にも幸運とか欲しい物が手に入るとかで賞与はあるよ♪」


 アップルが俺に抱き着いて告げる。


 「いや、それならまあ行けど抱き着く程かよ?」


 女神の抱擁とかで十分じゃね?


 「あんたが良い奴だから嬉しいの♪ 戦いに役立つ物だから受け取りなさい」


 アップルが俺を立ち上がらせ頬にすり寄る、くそ恥ずかしい。


 「ああ、新しい武具とかならまあありがたく」


 今後に活かせる武器とかなら、そりゃ貰っとくかな。


 俺はそれならと受け入れる。


 迫る脅威への対抗手段は幾らでも欲しい。


 「うん、じゃあ厩舎へ行こうか♪」


 アップルが俺の手を引く、何で馬小屋?


 俺は良く晴れた牧歌的な土道を歩き、馬の牧場へ。


 現世の農場と同じく全身に浄化魔法の光を浴びてから立ち入る。


 「って、いつの間に俺も野良着にされてる!」


 気が付いたらアップルと同じく赤色の野良着姿に服が変化していた。


 「何よ、ペアルック最高じゃない夫婦なんだし♪」


 アップルは喜んでるが前前世の記憶が思い出せないので何とも言い難い。


 「で、馬のブラシ掛けとかか?」


 一応、貴族の事して馬術も習いはしたし馬の世話も教わった。


 「ただの馬じゃないわ、神獣よ♪」


 厩舎の前でアップルがドヤ顔をする。


 いや、神獣ってのは聖獣の進化系で神の乗騎では?


 「待ってくれ、恐れ多いんだが?」


 ご褒美って、神獣の力をくれるのか?


 俺はまだ人間だぞ?


 「謙遜しない、女神の勇者にして私の眷属♪ あなたは神の候補者よ♪」


 アップルが俺の背中をバシッと叩く。


 「ちょっと待って、俺はそこまでの事したのか?」


 いや、借りた力を使わせてもらってただけなんだが?


 「いや、無自覚かい! 散々人助けして来たじゃない?」


 アップルが俺の腹にチョップを入れてツッコむ。


 「いや、それは使徒として勇者として当然の業務だろ?」


 あくまで俺は代行業よ?


 「きちんと業務こなして成果を出したら、昇格する資格を得るのは当然でしょ?」


 アップルが俺を正論で殴る。


 いや、そこまでか?


 「赤天狗様って、神様として民に崇められて神の剣技である秘剣も覚えた」


 アップルが指で数えて、俺の行いでフラグになってる事を挙げて行く。


 「わかった、受け入れますからもう挙げなくても良いです」


 良かれとやった事がフラグだったのか。


 「まあ、今は人間から神に変身できるみたいな限定的な物だから♪」

 「もしかして、あの林檎もフラグ?」


 俺はアップルに尋ねる、魂の回復なんて一番のフラグじゃねえか?


 「ええ、あなたの救命と決戦の為に必要な措置だから」


 アップルが頷く。


 仲間も林檎食ってるんだけど?


 「あの子達も資格者だし、あなたと同じく百年後位には神になるわ♪」

 「とんでもない情報を聞いてしまったんだが?」

 「大丈夫よ、悪い事じゃないから♪ 私や女神様を信じなさい♪」


 アップルとの会話はまだ納得しかねる物もあるが、受け入れた。


 俺は彼女と厩舎に入り、虹色に輝くお馬さんと目が合った。


 「……もしかして、このお馬さんがご褒美ですか?」

 「正確には、この子から生まれた仔馬達がご褒美♪」


 アップルがお馬さんの頭を撫でながら告げる。


 「何か、懐かしい気がするな♪」


 俺にも懐いて来たアップルの神獣を撫でる。


 「じゃあ、私達の魔力をこの子に注ぐわよ♪」

 「わかった、撫でれば良いんだな?」


 俺とアップルは、虹色の輝くお馬さんを撫でる。


 急激に魔力を吸われた俺は、膝から落ちて気絶した。


 再び意識を取り戻した俺はベッドの上だった。


 俺が寝てるベッドの周りを仲間達が囲んでいる。


 「良かった、マッカが目を覚ましたよ♪」


 右から時計回りにレオンが叫ぶ。


 「マッカ様、気付けと栄養回復のカレーですわ♪」


 カレー皿を抱えたフローラ嬢がスプーンで俺にカレーを食わせる。


 うん、美味い。


 「うう、マッカ殿は先走りすぎですよ」


 アオイ嬢が涙ぐむ。


 「アップルさんから話は聞いた、回復したらお前の馬を見に来いよ♪」


 クレインは珍しく微笑んでいた。


 「いや~、僕達が神様になるとは驚きですよ♪」


 バッシュは嬉しそうだった。


 「マッカさん、心配かけすぎですよ?」


 クラウがジト目で睨む、すまない。


 「全くお主と言う男は、いい意味でも悪い意味でも気が気ではないのう?」


 アデーレ様は呆れていた、反論できねえ。


 「と言うわけで、皆にも説明して仔馬を与える事になったから♪」


 最後にアップルがまとめる。


 俺達全員のご褒美が神の馬か、どんな力があるのか楽しみだ。

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