第四十一話:レオンのTSと二号ロボ!

 ついに敵が悪の巨大ロボを出して来た。


 バトルジェスターロボ。


 幹部自身をモチーフにした機体と言うのは、悪の組織がやりがちだ。


 今後も増える可能性がある.


 敵方にはどうも、対ヒーロー用のノウハウががありそう。


 「あんにゃろう、次は完膚なきまでにぶっ潰す!」

 「そうね、マッカと私達ならやり遂げられるわ♪」

 「いや、レオンはさらっとしてるがお前この大事な時に性別を変えるなよ!」

 「良いじゃない、これで私も立派に嫁ゴールドを名乗れるわ♪」


 民間伝承研究会の部室にて憤る俺のカップに紅茶を注いでいるのはレオンだ。


 だが、鼻歌を痛いながら嬉しそうに紅茶を入れる姿は完全に女子だった。


 そんな、声まで変わって! 


 美少女アニメのヒロインかよ、親友がガチで女になっちまった!


 赤いブレザーにグレーのスカートと女子の制服を着こなしてご機嫌なレオン。


 いわゆる、金髪ショートカットの巨乳お姉さんキャラか?


 レオンが頬を赤く染めながらナチュラルに俺の手の上に白い手を重ねてくる。


 見つめ合う瞳と瞳。


 いや、頬を染めるな? 


 獲物を物色する雌獅子の瞳が輝いたぞ?


 「大丈夫、戦う時は男に帰るから安心して♪」

 「いや、自由に変えられるんかい!」

 「まだ弟も小さいしね、両親からも普段は男でいてくれって♪」


 王様と王妃様、胃が壊れてそうだな。

 

 魔法ってやつは奥が深すぎる。


 俺達が地球にいた頃にも、自由に性別を変える魔法とかで混乱が起きたな。


 「もしかしてバッシュもその魔法を覚えたら、性別スイッチするのか?」

 「だと思う、魂から前世を遡って性別を切り替える魔法だから」

 「さらっと、べらぼうな原理の術式だな?」

 「良いじゃない、幸せの魔法よ♪」


 ご機嫌よろしく俺に抱き着いてくるレオン。


 俺の首筋の臭いをかぐな!


 「これがマッカの臭い、素敵すぎる♪」

 「おい、急に立ち上がって抱き着くなよ?」

 「男の時に嗅ぐのとはまた違った味わい♪」

 「変態、止まれ!」


 ヤバイ、健全! 健全! 俺は世界の平和とレーティングも守らねば!


 どこからかピリリリと、ホイッスルの音が鳴り響きフローラ嬢達が突入して来た。


 「警告! 抜け駆け禁止です!」

 「レオン殿、御法度ですよ!」

 「風紀の乱れを感じます」

 「やはりレオン殿は油断ならんのう?」

 「あんた、前世の前世でも変わらないわね!」


 俺の嫁を名乗る五人の女子達が、俺とレオンを引き離す。


 「もう、皆も嗅げばいいじゃない♪」


 レオン、原子炉に核爆弾を投げるな!


 「皆の者、マッカを囲むのじゃ!」

 「猫吸いならぬマッカ様吸いですわね!」

 「マッカ殿、お覚悟を!」

 「遠慮なく行きます!」

 「私もやるわ♪」

 「いや、お前ら止めろ! お淑やかになろうな?」


 俺の声が届くわけがなく、五方向から仲間達に包囲される。


 何で前世でメンバーでもないアデーレ様達が、戦隊時代の技であるネッケツジャースクラムを知ってるんだよ?


 俺はこの後エネルギー流し込まれて爆破されるの?


 ネッケツジャースクラムとは、怪人一体を包囲するように体当たりして拘束。


 同時に、全員のネッケツソウルを放出し怪人を爆破するフォーメーション技だ。


 仲間達からワンコの如く纏わりつかれて臭いをかがれる俺。


 満足した仲間達から解放されたは良いが、制服がぐちゃぐちゃだ。


 「もう、皆ずるい~~♪ 私ももう一回マッカの臭いかぐ~♪」

 「いや、もう良いだろ?」


 レーティングは守った、アイアム清らか。


 「ふう、これからは週二でマッカを吸わんとな♪」


 アデーレ様、何を申されるのですか?


 「マッカ殿、拙者にもして良いのですよ♪」

 「アオイ様、抜け駆けは禁止ですよ♪」

 「フローラさん、さりげなくマッカさんに抱き着いてましたよね?」

 「いやあ、生まれ変わっていても自分の旦那はやっぱり最高だわ♪」


 個性的な女性陣に圧倒される。


 俺、前世の前世でどんな業を背負ったんだ?


 ぐだぐだな時間は終わり翌日。


 基地の第二格納庫へと行けば、新たな機体ができていた。


 「いやあ、ついに僕達の機体ができたね♪」


 男になったレオンが微笑む。


 白地に胴体が金の獅子の頭のロボはレオンの機体だ。


 「私の機体も素晴らしいですよ♪」


 クラウの機体は、銀色で牛の頭を被った戦士型のロボだ。


 「妾の機体も見よ、ドリルとクローじゃ♪」


 アデーレ様の茶色の機体、胴体は土竜の頭で鼻にドリルが付いているな。


 「マッカも、一緒にテストに参加してくれるよね♪」

 「そなたは我らの真の頭なのじゃからな、責任じゃぞ?」

 「私達の機体とも合体できるように、術式が組まれてます」

 「わかってる、お前らも放っておかねえよ」


 合体変形のバリエーションが増えるな。


 今日は追加戦士組との訓練だと、俺達は変身した。


 「武器のテストから始めるか?」


 フラメスナイトの中で通信魔法を使い、アデーレ様ことヘリオスに尋ねる。


 今回のメンバー全員でロボに乗り山に来ていた。


 採石場になりそうな岩山、ロボが暴れても平気な数少ない場所だ。


 『ふむ、まずは各々の動作じゃのう変形機能も付けておるし』


 ヘリオスが悩む、武装や動作に合体などチェックする事はあるはずだ。


 『まあ、まずは索敵とかしてみよう♪』


 レオンことレグルスが全体に通信を入れて来る。


 『確かに、何時どこから敵が来てもおかしくないですしね』


 クラウことタウラスも通信に加わる。


 俺達はそれぞれの機内でセンサーを発動させる。


 魔王軍の奴らが発する邪悪度が高い魔力は感なし。


 周辺に敵はいない事を確かめたので、訓練スタートとなった。


 ロボ同士で模擬戦から始める。


 『どうじゃフラメス、我がヘリオスモールの円匙さばきは♪』

 「いや、スコップ格闘術か!」


 ヘリオスのロボと俺のロボの対戦、巨大なスコップ対大太刀で切り結ぶ。


 レグルスとタウラスの機体も格闘してるが余所見はできねえ。


 一通り模擬戦を終えたら合体訓練だ。


 「行くぜ、各自変形開始だ!」


 俺は自分の機体を鳥型に変形して空を飛ぶ。


 俺の基地は頭部とボディが分離し、頭部はヘッドパーツで残りは背中。


 レグルスの機体が胴体でヘリオスとタウラスの機体が分離して左右の手足になる。


 四つの機体が一つになり現れしは、カルテットレンセイオーだ。


 『完成、カルテットレンセイオー♪』


 合体したら皆で名乗るのはお約束。


 『うむ、一体感が半端ないのう♪』

 『巨人に乗るのも初めてなのに合体まで、世の中不思議過ぎです!』


 ヘリオスとタウラスはそれぞれ衝撃を受けたらしい。


 「全部合体の前の別パターン、良いなあ♪」


 昔は六体合体で終わりだったから、こういう派生のロボットとかがある先輩や後輩のチームが羨ましかった。


 何だかんだんでゼロから始めた異世界での戦隊活動も落ち着いて来た。


 これはもう、負ける気がしねえ♪


 「よし、海へ巨大な獲物を狩りに行こうぜ♪」

 『いや、発想が飛びすぎじゃない?』

 『だが、迷惑を掛けずに技を試すなら的確じゃの』

 『狩った獲物はきちんといただきましょうね♪』

 「よし、ひと狩り行こうぜ♪」


 俺はカルテットレンセイオーを飛ばして、太平洋相当の海へと向かい仲間達とロボで飛び込んだ。


 「気密性と耐圧性は問題ないな」


 パワーソースの聖獣達、陸と空の生き物なんだが海中でも問題なかった。


 海の中を観察していると、海底から光る眼。


 「これは、巨大な鰻の魔物か!」

 『蒲焼だね、これはもう♪』

 『ウナギ料理が食べ放題じゃな♪』

 『皆さん、イールってそんなに美味しいんですか?』


 現れたのはジャイアントイール、超巨大鰻だ。


 移動相度はこちらよりも早い、ギリギリで敵の体当たりを回避する。


 『捕えましょう、ホーンアンカー!』


 タウラスが右肩鎧になっている牛の頭から角を射出。


 いわゆるワイヤークロ―の類だ。


 ジャイアントイールの背びれに刺さるも、俺達の機体はロデオよりも激しく巨大鰻の動きに振り回される。


 『ぐぬぬ、聖獣の守りの上からでも圧が来るのじゃ!』

 『パワーでは負けてませんよ!』

 『駄目だ、角の刺さっている背鰭が千切れる!』


 海中での力比べで背びれが千切れ、吹き飛ばされたカルテットレンセイオー。


 こちらの動きが止まった所で、ジャイアントイールが大口を開けて迫る!


 「よし、フェニックスオオダチとネメアカリバーで行くぜ!」


 俺の操作により、真紅の大太刀と金のグレートソードの二刀流で左右の劍を十字に構えるカルテットレンセイオー。


 敵が迫る中、刀と大剣に炎と光が灯る。


 「熱血二刀流巨大奥義、十文字割りっ!」


 敵と自分たちの間合いを計り、振るうタイミングを合わせて十字に斬る。


 見事、ジャイアントイールの頭部のみが四つ割りに分断されて首から分かれた。


 「女神の下へ行ってくれ」


 俺は倒したジャイアントイールを弔い、残った巨体をロボで抱えて地上へ戻る。


 地上に戻ってからもカルテットレンセイオーの剣裁きの練習も兼ねて巨大鰻を切り下ろしたりして食肉へと加工。


 基地周辺の民にも鰻を振舞い、食べきったのであった。

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