第三十九話:五体合体、ゴダイレンセイオー

 アップルが降臨し、さらにやかましく。


 もとい賑やかになった俺達。


 前世からの魂の因果は、消えない。


「マッカさん、人たらし過ぎますね」

「バッシュ、人聞きの悪い事を言うな」


 学園の部室にて仲間達と話し合い。


 俺は何も悪い事はしていない。


 味方が増える事は良い事だよ。


 「そうだな、英雄伝説の時代の話を生の声で聞ける」


 クレインが呟く。


 確かに、俺達の学園での部活動は民間伝承研究会だからな。


研究どころか伝承の存在と戦ってるが。


 剣術部とも掛け持ちだが、剣術部の方は花鬼生徒会の面々も入り俺がこっちの部室に行ける割合も増えた。


 各地の敵の調査などもローテーションを組んで行っている。


 俺が学園や基地にいる事が多いのは、諜報活動に向かないからだ。


 「そうですよ、又どこかで女性を誑しこまれたらと思うと気が気ではありません」

 「いや、フローラ嬢? 俺、そう言うフラグ立てした覚えはないんだよ?」


 俺は俺の胸に宿る正義のハートや情熱に従って動いているだけなんだ!


 「マッカ様、フラグビルダーだとご自覚なさって下さいね♪」

 「いや、フローラ嬢の笑顔が怖いんだけど?」

 「マッカ様が、私だけを愛して下されば怖くはありませんのよ?」


 圧を掛けないでくれ、頼むから。


 く、前世から彼女の尻に敷かれてるな俺。


 学生時代に同じクラスで柔道部だった彼女。


 彼女の家が古武術の道場だと聞き、興味本位で遊びに行ったら気に入られた。


 戦隊でも一緒になり、カレーで胃袋を掴まれるはで合わせ技を色々と決められて行き抑え込まれて一本どころか十本以上取られて結婚。


 まあ、惚れた弱みなんだが情けない。


こうして今世でも面倒を見てくれるのだから、大事にせねばとは思うんだ。


「マッカ殿、私達の事もお忘れなく!」


アオイ嬢が、恨めしそうに俺を睨む。


「いや、忘れてるとか無いけどな?」

「でしたら、何故私達をデートに誘うとかアクションが無いんですか!」

「いや、デートって?」


 距離感とか身分とか関係性とかあるだろ?


 ゆるいように見えて時折苛烈になる乙女ゲーム的な貴族社会。


 下手な事をすると断罪イベントとか起きるんだ。


 俺は悪の組織とかとは戦うが、破滅フラグとは戦いたくない。


 「何度も言ってますけど、私達はあなたの妻です!」

 「マッカ様が私達に対して、全員俺について来いと仰ってますから♪」


 アオイ嬢とフローラ嬢が主張する。


「妾達は事実上、婚約中と言えるぞ」

 「女神様も認めています、観念しましょうね?」

 「私もお嫁さんに復帰するから♪」


 アデーレ様にクラウ、アップルも降臨して話に加わった。


 レオンを除く嫁レンジャーに包囲される俺。


 「マッカ、頑張って責任を取れよ」

 「そうですよ、マッカさん以外この人達をどうにかできないんですから」


 クレインとバッシュは、相変わらずの視聴者ポジションだよ。


 「だから、邪神も魔王軍も倒して学園を卒業するまではな?」


 学校はきちんと卒業しようぜ?


 「では、学生時代の思い出作りでデートですね♪」


 フローラ嬢が笑顔で述べる。


 「レオン殿を抜かすと面倒じゃから、彼も含めて割り振り作りじゃな」


 アデーレ様がレオンの事も告げる。


 「レオン殿も入札に参加させないと、後々不利になりそうですね」


 前世でレオンに出し抜かれたアオイ嬢が苦い顔をする。


 「ですね、公明正大に決めましょう」


 クラウが学級委員みたいな事を言う。


 「あの子、前世の前世から変わらないのよね?」


 アップル、マジか?


 女子達が俺を放置して話を進める。


 駄目だ、ここで俺が口を挟めば地獄になる。


 「間に合った、皆抜け駆けは駄目だよ!」


 慌てた様子でレオンが部室に入って来る。


 レオンの登場で、女子達の目が怖くなる。


 こうして、俺が誰と行動するのかと言う時間割表が作られた。


 「マッカとお風呂に入るのは僕の特権だね♪」

 「レオン殿はミズホでも同室だった抜け駆け罪です!」

 「風呂はマッカ一人で入らせて、残り湯は妾達で分け合おうぞ♪」


 アデーレ様、あんた何をいってるんだ?


 「マッカさんの成分入りのお湯、鼻血が出そうです♪」


 おいクラウ、お前も変態になるな真面目枠でいてくれ。


 「アデーレ様、素晴らしい提案ですわ♪」

 「畑にまいたら野菜が育ちそうね♪」


 アップルは俺の残り湯を肥料にするなよ?


 「お前ら、人を鶏がらみたいに扱うな!」


 俺はラーメンのスープの出汁か? おちおち風呂にも入れなくする気か?


 月曜日はクラウ、火曜日がアップル、水曜日がアオイ嬢、木曜日がフローラ嬢。

 

 金曜日がレオン、土曜日はアデーレ様で日曜日は全員。


 「見事に俺が一人でいる時間がない監視体制だな?」

 「マッカ、君を一人にさせたりはしない!」


 レオン、真面目な顔で言っているが真意は違うだろ?


 一人の時間も大事なんだよ。


 「今日は私の日のはずですが?」

 「フローラ殿、マジクメイルのテストは仕事であるから許されよ」

 「そうですよ、今日は五体合体を試す日なんですから」

 「仕方ありませんね、良妻賢母なので我慢いたします」

 「ぐぬぬ、前世マウントですか!」

 「フローラ殿は手強いのう」

 「いや、格納庫で揉めないの!」


 五体のロボットが並ぶハンガー前で叫ぶ。


 ようやく、クレインとバッシュの機体もできた。


 戦隊の基本メンバーカラー五色のロボが揃ったのだ。


 なので、今日は五体合体のパターンを試す日として集まった俺達。


 アデーレ様は博士ポジなのでいてもらわないと困る。


 新たなロボはピンクとグリーン。


 鹿頭に人型の緑の機体、エラポスワイズマン。


 胴体が羊の頭のピンクの機体は、アリエススカウト。


 五体のロボが太陽の下に並ぶと壮観だな。


 アデーレ様から、スタッフさん達には休みを与えてるから壊すなと念を押された。


 「よし、じゃあ合体を試して見るか♪」


 合体は早めに馴れておいた方が良い。


 『良いだろう、お前達となら目を摘むっていても合体できる』


 エラポス、ロボ戦でも頼りになる男だ。


 『この機体、ネッケツオーと操縦システム同じですよ!』


 通信で俺と同じように驚きの声を上げるのはアリエス。


 『あの頃は、動物と乗り物が混ざったメカが人型にでしたわね♪』


 ポラリスが昔を思い出す。


 イエロー時代の彼女の機体は熊を模したブルドーザーだ。


 『皆さん、恥をかかないようにしましょうね♪』


 アルタイスのテンションから、彼女の仮面の下はドヤ顔だと想像できた。


 鉱山を舞台に横並びでダッシュし変形と分離を始める。


 赤青黄色は縦一列のレンセイオーになる。


 ピンクは右腕で、グリーンは左腕にドッキング。


 右肩が羊の頭、左肩が鹿の頭となった五体合体。


 名付けて、ゴダイレンセイオーの誕生だ♪


 「「完成、ゴダイレンセイオー!」」


 全員で名乗るのはお約束だ。


 乙女ゲーム風世界観をぶち壊してるのが申し訳ない。


 だが、世界をぶち壊しに来てる敵の野望をぶち壊せるのは俺達しかいない!


 『いやっほう♪ 本当に一発で合体出来ましたね僕達♪』

 『レオン達のロボとも合体したら、どうなる事やら』

 『さあ皆さん、暴れ回りますよ♪』

 「いや、暴れるなよ!」

 『アルタイス様、敵が出てからにしましょうね?』


 合体の成功にはしゃぐアルタイスを窘める。


 『まあ、武装は見てみたいな。 ディアリカーブ』


 エラポスが叫ぶ。


 ゴダイレンセイオーの左手には鹿の頭を模したアーチェリーの弓が現れた。


 弓を消すと次はアリエスが武器を出す。


 『シープハンマー! ……デカイ!』


 アリエスが出したのは、巨大な羊の頭が槌頭のハンマーだった。


 『僕だけギャグ武装じゃないですか!』

 「いや、武装にギャグとかないだろ?」


 でかいハンマーで木っ端微塵だよ。


 色々な必殺技で敵を倒せるな。


 残りの仲間のロボもどんな物ができるのか楽しみだよ。


 おさらいで、フェニックスオオダチやドラゴンスピアにベアアックス。


 赤青黄色の三色のメンバーが出せる武器も出して見る。


 『やっぱり、僕のは色物臭がしませんか?』

 『何よ、私の武器はめちゃんこ強いんだからね!』


 アリエスは自分の聖獣に怒られていた。


 新たな力を得て、俺のやる気は燃えて来ていた。

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