第三十八話:転生の理由

 レンセイオーで敵の三種混合魔獣を撃破した俺達。


 俺は病み上がりで無茶をするなと、また仲間達に怒られてしまった。


 「まあ、頑張り過ぎも良くねえよな?」


 女神様から貰った林檎を食いつつ、自室で休む。


 休める時は休むのは兵の仕事だ。


 とは言いつつも、退屈しのぎのついでにこちらの世界の伝承。


  特に聖女伝説について調べる事にした。


 「先輩ヒーローの活躍は調べないとな」


  先人の知恵が現代でも役立つ事はある。


 そもそも俺達が転生してきたせいか?


 何と言うか乙女ゲームな世界が、ここまで特撮っぽくなったのは?


 世界をおかしくしたのが俺らなら、責任を持ってどうにかせねば。


 世界を救って死んだら、仲間達共々また地球に転生させてもらおうかな。


 メジャーリーグから日本野球界に復帰するみたいに。


 林檎を食ってから、調べ物を再開するかと想いかじる。


 だが、俺は急な眠気によってベッドに倒れた。


 「お帰り~♪ 送った林檎は美味しかった♪」

 「いや、なんでほっかむりして野良仕事してるんですかアップルさん!」


 緑あふれる日本とも西洋とも取れる、田舎の田園風世界。


 放し飼いにされてる動物達は、聖獣か? 見た事もないのがいるぞ?


 林檎の女神を自称する美少女。


 得体のしれない存在が、天気のいいお外で緑色の作業着着て野良仕事してる。


 いや、なんでだよ! 朝ドラヒロインかよ! すげえいい笑顔だよ!


 「いや、私は農耕神でもあるのよ♪ ここは私の任された世界の中の世界♪」

 「何となくわかるっす、異次元出身のヒーローとか知り合いにいたんで」

 「うんうん、そう言う君だからハレール様に頼んで引き抜いてもらったの♪」

 「え、今なんか大事な事を言いませんでした?」


 てきぱきと一人で畑を耕し、林檎の収穫をするアップル様に俺が尋ねる。


 アップルさん付けしてたけど、実は様呼びしないと駄目な人では?


 ハレール様とは、この世界チェリッシュランドの主神である女神様。


 地球で死んだ俺をこっちに転生させてくれた、上司とも言える方だ。


 アップル様が俺にもぎたての林檎を手渡して告げる。


 「うん、君の前世の前世の名前はジャスティン・サンハート♪ 私の旦那様♪」

 「な、なんですと~~~!」

 「だから、君が私にときめいたのは間違いじゃないのさ♪」

 「いや、前世の前世までは感知できねえっすよ!」


 女神様が前前世の嫁さんとか衝撃的すぎるんですが?


 「君の前世からのお友達グループも、更に前世はこっちの英雄様達だよ」

 「あ~、つまり俺らは縁があったと?」

 「うん、だからお帰りなんだよ♪」


 まさか、前世の前世で縁があったとは思わなかったよ。


 「しかし、何でその時の俺はあなたを置いて行ったんです?」


 新たな情報から、更にわからん事が増えた。


 「うん、英雄の魂を異なる世界に流して進化させる。 神様達の間では定期的に何度もそう言う狙いで交流会が開かれているのよ」


 そういや、そんな事を生ま変わってから最初の啓示で聞いたな。


 「その時、神様達のドラフト会議とスカウトに君は応じたんだよ」


 そうか、今の俺でもそう事言われたら行く気がする。


 「魂が、鮭の放流みたいに世界をあちこち行き来してると?」

 「そう言う事、可愛い子には旅をさせよだっけ? まあ、帰って来たから良し♪」

 「いや、いいのかよ!」

 「本当は私も行きたかったんだけどね、君の帰る家は守らないと♪」


 アップル様のしんみりした態度から一変、あっさりとした言葉に思わず叫ぶ。


 何だこの面白い女は? 目が離せなくなる。


 「ほら、林檎食べて力付けてよ♪ 今度の魔王と邪神もぶっ飛ばす為に♪」

 「うっす、いただきます♪」

 「う~~~ん♪ その食べっぷり、素敵♪」

 「いや、胸がときめくんですが?」

 「生まれ変わっても、私を愛するって言ってたもんね♪」

 「いや、ちょ! 惚れる!」

 「惚れて良いのよ、私もあなたの嫁なんだから♪」

 「甘酸っぱすぎるっす!」


 改めて、自分がこの世界に生まれ変わった理由を知った俺。


 同時に目の前の女神様に翻弄されて困惑もしていた。


 ラブコメしている場合じゃないはずだが、心が揺れる。


 この世界は魂的な意味で、生まれ故郷でもあったのか。


 俺の中でこの世界を守りたいという思いが強くなった。


 前世でも郷土愛が強いとか言われていたが、そのルーツがこの世界か。


 「ジャスティンの時の君も、地元愛が強い男の子だったよ♪」

 「え、俺の心が読まれてる?」

 「読まなくてもわかるもん、夫婦だから♪」


 何だろ、彼女の良い笑顔とこのヒロイン力の高さ?


 日南子さんことフローラ嬢にも負けてない。


 「まあ、恋は世界を守りながらで良いから♪」

 「それって、俺が前世から言ってたような?」

 「ずっと言ってたよ、生まれ変わっても変わらない物はあるんだよ♪」

 「そう言えば、今度の魔王ってどういう事っすか?」

 「うん、前も女神と聖女と英雄達と邪神とその部下の魔王と言う構図だった」


 対立する善と悪みたいか、そして双方が世代交代をすると。


 何処の世界でも、善と悪の戦いは終わらないって奴か。


 「今の敵が君達とどこか似てるのって、向こうも君達と似た世界から魔王を呼んだんだと思う。 戦いは、似た者同士のぶつかり合いって感じになるから」

 「邪神も改心するとかすれば、終わるんですかね?」

 「そうなれば良いけど、新しい敵が出て来る気がする」

 「わかります、戦いが終わってもしばらくしたら助っ人とかで別の敵とか」

 「神様でも、どうにもできないみたい根元的な物なんだ」


 アップル様が溜息を吐く。


 何処の世界でも闘争はなくならない、まあ神々も戦争とかするしな。


 攻める者がいれば守り抗う者がいるのは、変わらない摂理か。


 「ま、それはそれでこの世界を守ります、あなたには笑顔でいて欲しいから♪」

 「……うん、やっぱり君はいつまでも私のヒーローだよ♪」

 「いやあ、恥ずかしいっすね?」

 「そうやって照れる所も、変わらないな君は!」


 俺はアップル様に背中を叩かれて、現実へと戻って来た。


 「……くそ、なんなんだあの人は?」


 俺の心を狂わせる、俺は乙女ゲームの攻略対象か!


 様呼びよりさん付けと言うか、もう呼び捨てで良い位のフランクさだよ。


 いや、恋よりもバトルだろ? 


 世界の危機だってわかってるのに。


 「マッカ! 無事? 新たなライバルが現れたんだね!」


 部屋のドアをバンと開けてレオンが入って来る。


 「マッカ様、私の愛妻カレーを食べて私とのエンディングに参りましょう!」


 続いてフローラ嬢がカレー入りの鍋を抱えて入って来る。


 「待って下さい、マッカ殿の御台所は私ですよ!」


 アオイ嬢が俺の部屋に突撃して来た。


 「マッカよ、妾のアップルパイを食べるのじゃ!」


 アデーレ様もエプロン姿でアップルパイの載った皿を駆けて現れる。


 「マッカさん、聖獣シルバーバイソンのミルクを飲みましょう!」


 クラウは牛乳の入った銀のタンクを抱えてやって来た。


 「ヤッホ~~~~♪ 現世に降臨したわよ~~~♪」


 六番、野良着姿でエントリーして来たのはアップル。


 何かもう、一気に敬称付けで呼ぶ気が失せた。


 「いや、お前らいい加減にしろ!」


 流石にこれはツッコむ。


 クレインとバッシュは、見に来もしない。


 気持ちはわかるがグリーンとピンクは薄情じゃね?


 「う~ん、こうして皆でマッカを囲んで見ると私も戦隊の気分ね♪ 嫁レッド!」


 いや、囲むなよ! 人を怪人みたいに言うな。


 ていうか嫁レッドて、何ですか?


 「何ですか、私が嫁ブルーですか!」


 アオイ嬢が驚く。


 「私、嫁イエローと言う事になりますわね?」


 フローラ嬢、乗っからなくて良いから。


 「ふむ、妾は嫁ブラウンじゃな」


 ブラウンはレアな色ですねアデーレ様。


 「私が嫁シルバーですか?」

 「僕が嫁ゴールド? 確かに追加戦士だったけどさ?」


 クラウとレオンも戸惑い気味に呟く。


 「そう、私達六人で嫁レンジャー♪ 皆でマッカのお嫁さんになりましょう♪」

 「いや、嫁レンジャーって皆ちょっと待とうか?」


 アップル様の言葉にツッコむ、俺に発言させてくれ?


 「仕方ありませんね、こうなれば戦隊を組んでマッカ様を管理しましょう」

 「大奥結成ですね、いたしかたありません」

 「六等分ならタイムテーブルも考えないとね」


 ちょっと待てレオン、俺を六等分するな!


 「マッカよ、もはやそなたは我ら六人の夫となる以外の道はない!」

 「アデーレ様の言う通り、責任は取っていただきます」

 「そうよマッカ♪ 前前世から立てて来たフラグ、今世でコンプリートよ♪」


 マジかよ、俺は嫁を名乗る仲間達からは逃げられなかった。

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