第三十六話:模擬戦、マジックメイル合戦

 俺達はこの世界で初の巨大合体ロボ。


 聖獣巨人レンセイオーを誕生させて起動させた。


 当初の予定では武装などの戦闘データを取る予定だった。


 だが、舞い込んだ救助要請による平和利用が出来たのは何よりだった。


 自分の力を戦いだけでなく、平和や人々の幸せの為に使えるのは嬉しい。


 助かった人々の笑顔を見て、此方も笑顔になれた。


 戦いの為には力は必要だが、強る過ぎる恐怖の怪物になってはいけない。


 不和が孤立や孤独を生み、それは滅びとなる。


 人間、一人だとどんどんヤバい思考が溢れてとんでもない事件とかに繋がる。


 世間や人間関係から孤立し孤独から無敵の人が事件を起こす。


 ネガティブは人々に感染して負のスパイラルがとか最悪である。


 社会や人同士の繋がりは鬱陶しくもなるが、やはり大事だ。


 前世でも戦隊に入ってなかったらとか、ヒーローを目指さなかったらとか思うと怖い。


 ヒーローになろうと思った時点で失格とか言う奴がいるが、そんなクソ野郎の戯言に負けてはいけない。


 英雄からの影響を受けて、己の胸に宿した正義に恥じぬ自分を目指そう。


 俺も自省しつつ仲間と戦って行かねば。


 「マッカ殿は風呂や厠で思索に耽る性質でござろうか?」

 「ああ、一度考え込むと中々戻ってこないのが困りものでな」

 「マッカさん、のぼせますよ?」

 「大変だよ! マッカ、戻って来て!」

 「おい兄弟、しっかりしろ!」


 気が付くと俺は浴場の床に寝かされ、腰にタオルを巻いたレオン達に囲まれていた。


 「あれ? 俺は確か正義とは何かとか考えてたはず!」

 「兄弟、取り敢えず水でも飲め!」


 ダイダイマルが俺に水を飲ませる。


 いかん、風呂に入っていたのを忘れて考え事に耽り過ぎた。


 「まったく、お前は考え過ぎるな!」


 クレインが呆れる。


 「そうですよ、マッカさんは脳筋なんですから♪」


 バッシュ、俺は脳筋じゃねえ!


 「マッカ、ワーカーホリックになっちゃダメ!」


 いや、そこまでじゃねえよレオン。


 「ここはひとつ、冷えた甘い物でも食べて頭を休めましょうぞ」


 ソウキュウの提案は良いなと皆が同意した。


 俺はのぼせた体を水で冷やされ、落ち着いてから風呂を上がった。


 風呂上がり、基地にある和風の大会議室で仲間達と語り合う。


 俺がのぼせたせいか、皆の机には色取り取りのアイスクリームがあった。


 「巨大な化け物に乗り込んで操るって、こっちと似た事するね?」


 花鬼生徒会からムラサキがアイスを食いつつ、疑問を口にする。


 「ジェスターって、蝙蝠仮面もいるからな」

 「敵と同じ土俵に立てるように、女神様が力をくれたと思うよ」


 俺とレオンが考えを述べる。


 ていうか、レオンもムラサキもアイス食いつつ語るなよ。


 「我々勇者団の六人が前世の世界からこちらに来たのも敵への対抗手段だろう」

 「そうそう、僕達前世で同じような敵と戦ってましたから♪」


 クレインとバッシュが前世の事も含めて語る。


 花鬼生徒会にも、俺達は前世の事を話した。


 その結果、俺達の存在はあっさりと受け入れられた。


 「なるほど、マッカ殿達は異界の英傑の生まれ変わりでしたか♪」


 豪快にスミハル殿が笑い、この世界版のコーラをあおる。


 この世界こと、チェリッシュランド自体にも昔から英雄が生まれ変わると言うのは知られた話らしい。


 「マッカ、学園の教科書にも転生者や転移者について書かれてたでしょ?」


 レオンが学園の歴史の教科書を俺に見せる。


 いや、他所の学校とか国ではどうかわからんだろ?


 「俺達は皆、何処かの誰かの生まれ変わりって奴らしいぜ♪」

 「前世がどうあろうとも、今は同じ時代に生まれた同胞でござる♪」


 ダイダイマルやソウキュウが豪気にのたまう。


 自分達を誰かに受け入れて貰えるって、良いよな。


 「我々生徒会も、戦に備えて巨人の開発を進めて行きます」


 シンベエ君が語る。


 俺達の聖獣大巨人は、花鬼生徒会達がロボットで戦う時のモデルケースでもあるのか。


 そう言えば、前世でフローラ嬢が遊んでいた乙女ゲームでもキャラクターがロボットで戦う奴があったな。


 聖女の戦記とか言うので、英雄騎士とか言うロボのパイロット達と学園でラブコメしつつ推しと一緒にロボットに乗って戦うとか。


 「機体がまだできてない組は、巨大戦では既存のマジックメイルも使い随伴歩兵などで戦いますね」


 クラウが告げる。


 「しかし、マジックメイルとやらも良い物であるなあ模擬戦でもいかがかな?」

 「スミの大将、良いアイデアだぜ♪」

 「うむ、勇者級も既存のマジックメイルと操縦方法は同じ故に良いじゃろう♪」


 スミハル殿の提案にアデーレ様も乗った。


 まあ、仲間全体での訓練は大事だよな。


 他のヒーロー達との共同戦線を思い出すぜ。


 しかし、アオイ嬢はフローラ嬢に付き添われて宿題地獄か。


 表の顔が学生でもあるから、皆で勉強会とかもしないとな。


 そして六月も半ば、アイゼン帝国が回してくれた練習用のマジックメイル十体。


 だだっ広く山に囲まれた草原で向き合う。


 卵に手足の生えた形状の、白い機体。


 各機体の肩には個人識別の為、パーソナルカラーが塗られていた。


 機体の頭部には、勇者団側は赤の旗。


 生徒会側は白い旗が付いていて、旗を落とした方が勝ち。


 アイゼン帝国式のフラッグ戦ルールでの勝負。


 花鬼生徒会はフルメンバー五人。


 勇者団は俺、アオイ嬢、フローラ嬢、クレイン、バッシュの戦隊基本カラー五色。


 レオンは王国の政務、クラウとアデーレ様は監督。


 クラウが吹き鳴らしたほら貝を合図に、いざ勝負。


 ドカドカと大地を鳴らし、ぶつかり合う各機。


 「ほう、我が打ち込みを止めるとは流石は未来の義弟♪」

 「いや、そっちは兄弟子に当たるんだけどさ!」


 練習用の模擬刀で切り結ぶ俺とスミハル機。


 「おいおい、俺の相手は黄色の嬢ちゃんか♪」

 「生意気な弟はしつけて差し上げますね♪」


 フローラ嬢とダイダイマルの機体も、ハルバードとハンマーがぶつかり合う。


 「フン! マジックメイルの操縦も筋肉が命♪」

 「同感だ、ソウキュウ殿!」


 クレイン機とソウキュウ機は、槍同士で打ち合う。


 「へえ、そっちも薙刀なんだ♪」

 「前世では、薙刀小町と呼ばれてました♪」


 ムラサキとバッシュも、薙刀同士の対決。


 「アオイ様、負けませんよ!」

 「シンベエ、それはこららもです!」


 アオイ機とシンベエ機も、模擬刀同士で同門対決だ。


 各々が武器を振るい易いように、位置をずらして戦い出す。


 仲間同士だからこそ、こういう模擬戦は真剣勝負。


 背中を預け合う仲間だから、ぶつかり合い互いを高め合うんだ。


 「ほほう♪ そちらも二刀を使われるか♪」

 「大の二刀流とは豪快な!」


 スミハル機は打太刀の二刀流、こっちは大小での二刀。


 こちらは脇差と打太刀を攻防使い分けで相手の猛攻に立ち向かう。


 何と言うか、機体越しに相手が楽しんでるのが伝わって来る。


 「我が秘剣お見せしよう、二刀九面飛ばし!」


 上下左右斜めに突きと二刀を、九連の斬撃を飛ばして来たスミハル機。


 これに対抗するべく俺は一旦打太刀を納刀し、脇差を投げて斬撃の数発を無効化。


 旗以外落とさなければ勝ちと言うルールを利用して、旗だけを守りダッシュ。


 「見様見真似、熱血一刀流番外・星切りの太刀!」


 機体にダメージを受けつつも抜刀し、スミハル機の旗を落として切り抜ける。


 「お見事、されど無茶はし過ぎぬように」

 「どういたしまして」


 スミハル機に判定で勝利した俺の機体は、手足がバラバラになって倒れる。


 無傷だったスミハル機に受け止められて怪我は無かった。


 だが、模擬戦後にアデーレ様達に無茶をした事で怒られたのであった。

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