第三十五話:三体合体レンセイオー
「見て下さい、これが私の機体ですよ♪」
アオイ嬢が両腕を広げてドヤ顔で自慢するのは青いロボット。
「新幹線っぽい、先頭が龍の頭をした列車型かな?」
ミズホ国にある勇者団の基地に呼び出された俺に、格納庫内で嬉しそうに己が乗り込むロボットを自慢するアオイ嬢。
彼女の機体が俺にはどこか、新幹線みたいな列車みたいに見えた。
「そこがミソなんです♪ 敵に対して突進するにはこの流線形が良いんです♪」
アオイ嬢が更にドヤ顔をする。
「アルタイスタイラントは、空も飛べて海中であろうとも突き進めるのじゃ♪」
開発者のアデーレ様もドヤ顔だ。
俺が自分の機体であるフラメスナイトのテストを終えてから数日後。
ミズホ国で俺達の乗るロボットの開発に専念していたアデーレ様から、俺とアオイ嬢とフローラ嬢に加えてレオンが呼び出されていた。
「良いねえ、これも人型になるんですよねアデーレ様♪」
「うむ、レオン殿の言う通りじゃ」
「アデーレ殿には感謝ですよ♪」
「うむ、女神より天才的な頭脳を与えられた妾に感謝せよ♪」
自分の機体の開発状況を見に来たレオンが、アデーレ様に尋ねる。
アオイ嬢は嬉しさからか、アデーレ様に抱き着いていた。
「アオイ様の機体が、タイラントと言うのはいかがなものかと思うのですが?」
フローラ嬢は、機体のネーミングに対して苦い顔をした。
「良いじゃないですか、アルタイスタイラント♪」
「まあ、本人がそう仰られるなら」
フローラ嬢は苦笑いだ、アオイ嬢は前世から暴れん坊だったからな。
名は体を表す、ついでに俺達の前世からの業も表している気がする。
「フローラ殿のポラリスガードも第三工場で組み立て中じゃ♪」
「まあ、私の機体もですの♪」
「と言う事は、赤青黄色の信号機トリオが出来るのか?」
「マッカの信号機とやらは知らぬが、三体合体のテストもできるのじゃ♪」
どうやら、今日中にフローラ嬢の機体もできるらしい。
そして、前世よりもロボの合体のバリエーションが増えるみたいだ。
「ならば、フローラ殿の機体の組み上げも待って、三体で試しましょう♪」
アオイ嬢の提案に俺達は頷き、三体合わせてのテストを行う事となった。
フローラ嬢の機体、ポラリスガードも組み上げが完成した。
黄色いカラーリングでボディと手足が太い、騎士と言うよりは力士っぽいロボだ。
熊の要素は両肩のアーマーが熊の頭を模している。
人型に変形した、アルタイスタイラントと三体並んで外に出る。
赤青黄色と信号機カラーのロボが揃うと、三色戦隊の気分だ。
「ふっふっふ~ん♪ ついに私も変身出来てロボに乗れましたよ~!」
アオイ嬢ことアルタイスが、ロボの外部通信で叫ぶ。
「いや、通信を外部にもらすなよな?」
俺は外に流れているアルタイスの声を拾って呆れる。
『大丈夫でしょうか、アオイ様?』
「ああ、あの性格は前世から変わらないと思う」
ポラリスは機体同士の内部通信で語りかけて来た。
スクリーンが機内に浮かび、ポラリスの様子が見える。
『二人とも、内緒話は狡いですよ!』
アルタイスが内部通信を覚えたようでこちらに連絡を飛ばす。
『三人共、通信魔法で遊んでいないで仕事をするのじゃ』
アデーレ様からも通信が入る。
今の俺の目の前には、ウェブ通話のウィンドウが三つ浮かんでる状態だ。
「まあそれは置いておいて、テスト開始するぞ?」
雑談で気分をリラックスさせてから、お仕事の開始だ。
俺が意識を切り替えようとした時、空から渡り鳥の群れがやって来た。
『王様、がけ崩れ起きた! 人間の村、危ないみたい!』
鳥の一羽がまくしたてる。
『わかった、ありがとう。 案内を頼む!』
思念で鳥に答えてから俺は、三人に通信を入れる。
「鳥から通報があった、近くの村が崖崩れで危険らしいから救助に向かうぞ」
『うむ、わかったのじゃ♪』
『参りましょう! アデーレ様は、食料や薬などを私の機体へお願いします』
『了解です、人助けも勇者の任務ですからね♪』
スタッフさん達が食料などの物資が入った木箱を運んで来る。
ポラリスとアルタイスの機体にそれぞれ分けて物資を積み込む。
「良し、物資は積み込んだな? バラバラで行くより合体して現場へ向かおう!」
『了解ですわ♪』
『私の機体が、お二人を支える足腰になるんですね♪』
こうも早く、ロボの三体合体のパターンを試す事になるとは思わなかった。
俺が自分の機体を飛ばして頭部と両腕に変形と分離を行う。
ポラリスの機体もジャンプして胴体に変形し俺の機体の頭部と合体。
俺の機体から分離した腕が、ポラリスの機体の腕と合体。
黄色い熊の頭の肩アーマー、赤い上腕に黄色い前腕となり胴体部と合体。
アルタイスの機体は人型から列車みたいなドラゴン形態になると二つ折りで直立する。
アルタイスの機体がロボの足腰となり、俺達が乗っている胴体部と合体。
俺達の三体のロボが一つになった。
「よっし、見事に三体合体成功だ♪」
『コクピットは一緒にならないのですね』
『全員一緒の操縦席だった、ネッケツオーが懐かしいです』
『ふむ、改良の余地はあるのう?』
「まあ、救助活動の方が先だ。 行くぜ、レンセイオー!」
レンセイオーは漢字で書くと、
『え、何でそんな合体名なんですか?』
アルタイスが通信で尋ねる。
「何気に俺達の聖獣は、地球だと星座に縁があるんだよ」
俺は豆知識を披露する。
『鹿はオリオン座や御者座に縁があるんでしたっけ?』
「そう言う事、俺達のロボが連って星の王となるみたいな?」
『うむ、王族や皇族の生まれもおるし良い名じゃ♪』
どうやら、合体後の名前はレンセイオーになりそうだ。
鳥達に先導されて現場に着地。
村と外を繋ぐ道を塞いでいた大きな岩や土砂を撤去し、改めて整地を行う。
『こういった作業をしていると、前世の頃を思い出しますわね♪』
「あの頃も、ガレキの片付けや建設作業をやったよな」
『荒事以外の人助けも気持ち良いです♪』
「人型ロボは人体の拡張にして、人がしたいと思うデカい手仕事をするってのが真骨頂だぜ♪」
手仕事をする為に人は重機や建機を生み出し、その発展形で人型ロボができた。
レンセイオーの初仕事は、救助の為の道づくりとなった。
道を開いた先の裏では、配った医薬品や食料が歓迎された。
「天狗様じゃ、噂の赤天狗様が巨人を連れて村を救いに来てくださったぞ!」
レンセイオーと俺達の姿を見た村人の一人が、喜びの叫びを上げたほど。
崖崩れで行商人も来れず、病人も出ていた所に俺達が来たと聞かされると間に合って良かったと思った。
「レンセイオー、ドラゴンスピア!」
穂先が龍の頭をした青い槍、ドラゴンスピアを持ったレンセイオーが槍で大地を穿って水源を掘り起こして井戸を作った。
後に天狗の井戸とか呼ばれそうだな。
次に動物達に魔法で話を付けて、ロボで森を切り開いて新たな道を作り外部と村と繋げる。
外部とつながることでトラブルも起こりえるが、陸の孤島となり孤立して滅ぶのも良いとは言えない。
村人達は、懸念事項もある事を飲み込んで俺達に感謝してくれた。
こうして俺達はロボを使って、村の窮地を助ける事が出来た。
ひと仕事を終えた俺達は帰還して、ロボのメンテや洗浄を行った。
「まあ、動作テストとしては成功だな」
ロボットが戦闘以外にも建設作業等に使えるのはわかった。
「うむ、マジックメイルの可能性が見えたのじゃ♪」
アデーレ様が何かを考える。
「二十メートルを越える敵には、レンセイオーで対抗しましょう♪」
「全部合体も楽しみだな」
俺は基地の休憩所でくつろぎながらロボットが全部合体する日を夢に見た。
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