第二十七話:友軍登場、花鬼生徒会

 この頃都に流行るもの。


 悪の仮面を断つ勇者。


 夜の都の裏通り。


 月が地上を照らす中、見えたのは事件。


 「ひい、助けてくれ! 辻斬りだっ!」

 「……木偶が動くでない、苦しむだけぞ」

 「そうはさせねえ、助けに来たぜ!」


 空を飛んでのパトロール中に事件を見つけたので炎を纏って急降下。


 オーガにしては貧相な庶民と、白い仮面を被った人間の素浪人の間に割り込む。


 「て、天狗様! お助けを!」

 「いや、良いから逃げなよおじさん!」

 「はい~っ!」


 よし、避難はできたな。


 天狗じゃねえよと言いたい所を堪える。


 「……貴様、噂の赤天狗か? 面白い♪」

 「不死鳥の勇者フラメスだ! 仮面に捕らわれし剣鬼に堕ちたか、哀れな奴だ」

 「抜け、天狗の剣とやらを試してみよう」

 「熱血一刀流、参る!」


 こちらは霞、相手は上段。


 踏み込み、刀の根で相手の一撃を受ける。


 「ほう、止めるか我が剣を♪ ならばこれはどうだ?」


 辻斬りは飛び退きっつ刀を振り、黒い斬撃を飛ばして来た。


 「舐めるな、熱血一刀流浄化剣!」


 俺は刃を燃やして振るい、斬撃に当てて打ち消す。


 魔法剣の一種なら魔法剣で対抗できる。


 「見事なり赤天♪ ならば我が奥義受けて見よ、秘剣蛇流れ!」


 辻斬りは、ヤイバに黒い魔力を螺旋状に纏わせて突いて来た。


 「熱血一刀流、フェニックスダイブ!」


 こちらも全身を燃やし突きの構えで火の鳥となって突撃。


 火の鳥が黑き蛇を嘴で飲み込むかの如く敵の刀を粉砕し、俺の突きが仮面を砕く。


 「悪いな、勝負ありだ」


 倒れた辻斬りの手足を縛り、罪状を書いた紙を貼り付けてから持ち上げて飛ぶ。


 「おお、勇者の赤天狗殿ではないか! そ奴は一体?」

 「辻斬り事件の下手人だ、仮面はもう使えないから後はそっちで頼む」


 奉行所前に降り立ち、下手人を地面において奉行所の門番に引き渡す。


 仮面の怪物なら、勇者の力で倒して人に戻す。


 そしたら後は司法に引き渡しだ、悪人は倒すが殺すまではしない。


 犯罪者も一応は俺達の側の同胞だから、罪と向き合わせて刑を受けさせる。


 勇者の力は人外の邪悪の怪物を倒す為に、女神様から授かった物。


 人殺しや人間同士の争いの道具じゃねえ。


 前世でも戦隊の職務上、和解や更生や共生の見込みがない怪人や怪獣は元が人間であって殺すまでやってた。


 世や人を守る為とはいえ、命を奪うのは気分が良いもんじゃねえよ。


 自分や仲間の魂を澱ませたくねえし、悪党の末路は司法の裁きに任せる。


 食う為の獣とか、もう完全に敵対する邪悪な輩には容赦しないがな。


 取り敢えず今日は、もうひと回りしてから帰るか。


 ひとまず納刀、浄化の炎で血振りいらずは便利だぜ。


 再び空へと飛び上がり熱源と生命反応で探知をしながらパトロール。


 生命反応が微妙な所には、回復魔法のサービスだ。


 金は振り撒けないが、光の雨の様に回復魔法の雨を降らせていく。


 正直、江戸っ子気質なので都人とか苦手だ。


 けど、江戸っ子だから弱ってたり苦しんでる奴らを見捨てるわけにもいかねえ。


 命を救う力は遠慮なく振るわせてもらう、女神様に会ったら土下座は覚悟だ。


 学院の寮の前へと戻り変身を解く。


 「お帰り、マッカ♪」

 「おう、そっちはどうだった?」


 部屋に入るとレオンも戻っていた。


 「うん、こっちの貴族の屋敷通りは胡散臭いかな?」

 「あ~、嫌だねえいつの世もそこらは伏魔殿じゃねえか?」

 「色街はクレインが回ってる、女子は寝てるはず」

 「バッシュは市場や寺社回りと、俺らも寝ようぜ?」

 「一緒の布団で良いかな♪」

 「耽美本みたいな事は嫌だ、こっちでも描かれてるら氏じゃねえか!」

 「耽美本は女子の嗜みって事かな♪」

 「何でだよ、歯を磨いてねるぞ?」


 そして休息を取って朝になる。


 朝は朝で男子寮の食堂で、学院の男子四天王と向き合って朝飯。


 剣道場みたいな板張りの食堂で向き合って飯、これは和洋乙女ゲーム対戦か? 


 お向かいは、黒のストレートやオレンジの天パに青いポニテや紫のメカクレと個性的な色と髪型のイケメン鬼男子。


 白い狩衣の上に黒たすきは生徒会の証らしい。


 イケメン鬼男子達に並んで座り同じ黒たすきのシンベエ君が縮こまってる。


 シンベエ君、苦労人枠か?


 「マッカ殿は、お疲れの様だな?」

 「スミハル殿、お気遣いに感謝を、仮面退治は使命なので」


 俺の向かいで綺麗に魚を切り分けて食う、黒髪美白に金眼の鬼男子。


 「我ら生徒会も動いてはいるが、小者の騒ぎには手を焼いていてな」

 「こちらが少しでもお力になれているなら幸いです」

 「ああ、実際助かってはいる。 アオイが貴殿を自慢するわけだ♪」


 スミハル殿、アオイ嬢の異母兄なんだよな。


 「それはそうと天狗、昼休みに相撲取ろうぜ♪」

 「ダイダイマル、長は真面目な話をだな?」

 「ムラサキ、飯の場で辛気臭いのは駄目だろ?」


 オレンジ天パと紫メカクレが口論になりかける。


 腐女子なら喧嘩ップルかとか言いそうだ、俺も毒されてるな。


 「ダイの言葉も正しい、食事は陽の気を取り込む時間だからな」


 二人の会話に斬り込んだのは、青いポニテのソウキュウ。


 「うむ、ソウキュウとダイダイはすまぬな。 ムラサキよ、咎めるな」


 スミハル殿が治める。


 彼らも色の名がついているのも俺達と近いな。


 シンベエ君は苦労人枠なのか、生徒会の面子の言葉に疲れた顔だ。


 彼ら花鬼生徒会と共闘して、俺達は都での活動にあたっていた。


 「私は、異国の方の手を借りるのは悔しいですね」

 「ムラサキ、我らでは切り捨てるしかできなかったが彼らは救えたのだ認めよ」

 「ええ、認めているから悔しいのです」


 ムラサキ殿は何か術師っぽいキャラで闇落ちが怖いな。


 「へ、ムラサキが素直に気持ちを表すとはいい刺激だな留学生達は♪」

 「ダイダイは、隠さなすぎるのですよ」

 「新たな友と出会い、飯を食い語り合う。 素晴らしいですな♪」

 「うむ、それでは本日の見回りは合同で組んで回ろう」


 スミハル殿が提案する。


 「まあ、異存なしです」


 こちらも俺が決める。


 そして授業だ、この国の文化などを学ぶのは敵を知るにも繋がる。


 昼休み、女子とも合流して情報を交換する。


 「そちらの様子はどうじゃ? 妾の方は良い取引先ができたぞ♪」


 アデーレ様が、ロボの材料と開発の目途がついたと語る。


 「アデーレ殿、ミズホに工業の里を作り巨人を作るそうです」


 アオイ嬢が告げる。


 「これで再び巨大ロボで戦えますわ♪」


 フローラ嬢は笑顔だ、彼女は前世からロボ好きだったな。


 「アイゼン帝国から人や品を大量に運んでの共同作業です?」


 クラウは良くわかっていないみたいであった。


 「発想の転換だな、輸入より現地で組み立てか」


 クレインが呟く。


 「これで僕達もまたロボで戦えるのか♪」

 「長かったな、バッシュ♪」


 校庭の隅で輪になり語り合う俺達八人。


 「よう、話は終わったか♪」

 「あ、ダイダイマル!」

 「おお、ダイダイマル殿か。何かご用で?」


 俺達の所にボールを持って現れたダイダイマル。


 「話し込むのも良いが、蹴鞠で親睦を深めようぜ♪」

 「良し、じゃあ全員参加で行こう♪」


 俺達はダイダイマル殿の誘いに乗り、生徒会とメンバーをシャッフルしてチームを作って蹴鞠と言う名のサッカーで連携の訓練を行った。


 「マッカ殿、決められよ!」

 「了解したぜ、フェニックスシュート!」


 スミハル殿からのパスでシュートを放った俺。


 見事にゴールを貫き、勝利点を決めたのであった。


 「くっそ、負けちまったか!」

 「ダイダイ君、頑張ったよ♪」


 レオンがキーパーだったダイダイマルを労う。


 「ふむ、クレイン殿は細いが逞しいな♪」

 「そちらはがっしりしているが足が速いな」


 クレインとソウキュウが讃え合う。


 「バッシュ、あなたは鞠を取って味方に回すのが巧みですね」

 「ムラサキさん、羨ましがらないで下さいよ♪」


 バッシュとムラサキも距離が縮まったようだ。


 「アオイよ、マッカ殿は好きか?」

 「はい、兄上♪」

 「あれは父上のように女子にも男にもモテる故に励めよ」


 アオイ嬢とスミハル兄弟はちょっと待て?


 まあ、俺達は新たな味方と絆を結んだのであった。

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