第二十五話:勇者団の実績:東方編

 「俺とお前で作った刀だ、折るなよ? 手入れは怠るなよ?」

 「は、はい。 気を付けます」


 鞘や鍔に柄も揃って、立派な刀になったフェニックスブレード。


 キヨムネさんが脇差も打ってくれていたので、大小二本差しである。


 工房の中でキヨムネさんから、出来た刀を受け取り腰に差して見る。


 着物じゃなくて、ブレザーの学生服というのがまあ今一つだが仕方ない。


「付け加えて、失くすのも奪われるのも止めろよ?」


 当たり前の事だがキヨムネさんから念押しされる。


 そう簡単に無くしたり壊したりはしないと言おうとしたところであった。


 俺の聖獣フェニックスのヒヨちゃんが、突如異界から現れるとまるで鵜飼いの鵜のように刀と脇差を丸っと飲み込んでしまった。


 「「ああ~~っ!」」


 突然の事態に叫ぶ俺とキヨムネさん。


 無くさないと言った傍から、これである。


 「お前、言った傍から何してんだ!」

 「ストップキヨムネさん! ヒヨちゃん、どうした!」

 『マスター、武器は取り込みましたので戦闘の際には私から出します』

 「えっと、俺の聖獣自体が鞘と蔵を兼ねて必要な時に出すそうです」


 キヨムネさんに説明する。


 「なるほど、それなら安全だな。 無暗に振り回す真似はできねえだろうし」

 「アオイ嬢がそう言う事をしたんでしょうか?」

 「ああ、そう言う事だ。 あの馬鹿姫が悪者退治だとかで暴れて壊して」


 キヨムネさんが、その時の事を思い出してうなだれる。


 アオイ嬢、見た目は清楚だが脳筋だったからな。


 こうして、俺の武器の問題は解決した。


 城の敷地内にある屋敷に集い、今後の方針を話し合う。


 「さて、相談したいのは勇者団としてどうこの国に恩を返すかだ?」


 屋敷の居間で仲間達と車座になり、俺から話を切り出す。


 「はい、提案♪ やっぱり、悪党退治とかじゃないかな♪」

 「レオン様に同意です、マッカ様がお世話になりましたし♪」

 「うむ、妾も同感じゃ。 それに快くミズホ鉄を確保したいしのう♪」


 時計回りに、レオンが提案しフローラ嬢とアデーレ様が続く。


 「俺達は、謎の集まりでしかないしな」

 「縁もない、益体もない相手に力は貸したくないって思うものですしね」


 クレインとバッシュも頷く。


 「武王様がお約束してくれましたが、民が納得するかは別ですよね」

 「皆さん、ミズホの為にありがとうございます!」


 クラウが納得し、アオイ嬢が礼を言う。


 「でも、良いのかな? 敵も動いているだろうし?」


 レオンが疑問を口にした。


 「問題ありません、女神様にお伺いを立てた所このミズホの地で敵が動くので阻止せよとのお告げを得ました」


 「それじゃあ、敵を倒して人望を得る人気者作戦の開始だ」


 俺自身も、ここで悠長な事をしている暇はあるのか?


 敵も西方諸国の事も心配だったので、クラウに女神様へ託宣を頼んでいた。


 俺達のトップである女神様に、報告連絡相談をした結果の作戦提案だ。


 こうして、、仲間の承諾を得てミズホ国で人助け活動をする事にした俺達。


 「待った、作戦は良いけど敵について話そうよ?」


 レオンが待ったと声をかけた。


 「レオン殿、感謝するぞ♪」

 「レオンさん、変態ですけど鋭いですね?」

 「当然さ、妻として夫を支えないと♪」


 レオンの俺の妻発言に女子達が彼を睨む。


 「ほら、脱線せずに話すぞ?」


 クレインが話を変える。


 「敵は西方では、異種族排斥主義者を操って悪さをしていた」

 「ふむ、何処にでもおるからの。 オークは許せんエルフは許せん人間は許せんと」

 「そう言えば、国家転覆を企むのは人間族が多いですね!」

 「ブロンズ王国は、ダークエルフを襲ってましたしね」

 「私とマッカ様も襲われました」


 仲間達がそれぞれ語る。


 「で、悪党に魔物の力を与えてるのが魔族のジェスターって奴だ」

 「僕達の聖獣武装と似た方法で、魔物の力を与えてるよね」

 「まあそこは同じような事は、誰もが思いついてやるからな」


 敵もこちらと同じ事はできると見ておこう、と俺は告げる。


 「マッカよ、それはこちらが巨人を出せば敵も出すとかありえそうじゃの?」

 「あると見て動きましょう、なるはやで素材集めて開発したいっす」


 前世で使っていた巨大ロボ、ネッケツオーがあれば楽なんだがな。


 ロボに乗って動かせはしても、作ったりメンテはできないのが辛い。


 「大きい工場が必要なのじゃ、巨大魔導炉もいるし金も人手もかかるのじゃ」


 アデーレ様が溜息、金と人と物の問題は尽きないな。


 「良い考えがあります、悪者から奪えば良いのです♪」

 「私も、アオイ様の提案に賛成ですわ♪」

 「いや、二人共それは脳筋過ぎるだろ?」

 「うむ、確かに敵の金や道具を利用するのは悪くはないのじゃ♪」


 アオイ嬢やフローラ嬢の脳筋発言にアデーレ様が乗っかった、脳筋は連鎖する。


 「前世の大先輩、バイクキッカーさんみたいに悪の力を正義に転用しよう♪」

 「そうだぞマッカ、敵の金を民の雇用に使い還元すれば良い」

 「クレインさん、マネーロンダリングですね」


 仲間達の発言が不穏だったが、目をつむる。


 会議を終えた俺達は立ち上がり、活動を始めた。


 まずはお世話になったこのフイゴ藩でと聞き込み。


 「ふむ、御客人方の事情は相分かった。 ならばちと賊の退治を頼みたい」


 キヨムネさん経由でフイゴ藩のお殿様と対面し、仮面衆かめんしゅうと言う集団が出没し悪事を働いている所へと向かう事にした。


 変身してド派手に聖獣達を召喚して見せたら驚かれたが、これもアピールの内。


 嫌な話だが実力の担保は見せておかないと信じて貰えない。


 「それでは行って参ります」


 俺が代表で挨拶をして皆で聖獣に乗り空へと飛び立つ。


 「キヨムネよ、御客人方は誠に神々の使いであらせられたか」

 「はい、粗雑に扱わぬが吉でございます」

 「であるなあ、これも奇縁か」


 城の天守でお殿様とキヨムネさんが話す様子が見えたし聞こえた。


 「フラメス殿、仮面の下の顔色が優れませんな?」

 「アルタイス、力を見せつけるってのは恥ずかしいもんだよ?」


 龍の勇者アルタイスとなったアオイ嬢に語る。


 表立って動くと決めたとはいえ、気分は良くない。


 戦いで禄を食む身だけど、武威をひけらかすのは悪党側と変わらないのが嫌だ。


 権田原長官が教えてくれた、戒功胆義と武術家の四つの武徳。


 その内の一つ戒でも、己の力をひけらかす事は良い事ではないと教えている。


 見せる方も見せられる方も良いもんじゃねえよな。


 空から索敵をすると、暴れる顔を仮面で覆った黒い大猿の怪物が村を襲ていた。


 「全員、急降下で対地攻撃!」


 唸りを上が剛腕を振るい、家を壊し人を襲う怪物。


 火の玉となって降下し、怪物と村人の間に割り込んで守る。


 「て、天狗様じゃ! 天狗様が救いに来て下さった!」

 「ありがとう、天狗様」

 「赤天狗様、ありがとうございます!」

 「良いから下がれ、こいつは今退治してやる!」


 老人と少女とその母親らしき着物姿の村人達が叫ぶ。


 やっぱり天狗って言われた! 和風の国だから天狗か!


 体当たりで大猿を、村の外まで吹っ飛ばす。


 「フラメス、悪党と戦ってる時が一番輝いてるよ♪」

 「さあ、村の皆様!お逃げ下さいませ!」

 「我等、聖獣勇者団! 義によって助太刀いたす!」


 降りてきたレグルス達も村の防衛を始める。


 「地面から仮面被った奴らが出て来ましたよ!」


 アリエスが鞭で戦闘員らしき敵をしばき倒しながら叫ぶ。


 「人や家屋を壊すなよ、特にフラメス!」


 余計なお世話を言いつつエラポスが、地面から豆の蔦を生やして敵兵を足止め。


 「畑を荒らすとは不届きな!」

 「牛は眷属、守ります!」


 ヘリオスは畑の守り、タウラスは家畜をと敵の外から村の暮らしを守る。


 「おっと、もう一体お猿さんがいたねポラリス♪」

 「では、手早く倒しましょうレグルス」


 ポラリスとレグルスの黄金コンビが、俺達の降下地点の反対側から出た敵の新手の怪物に立ち向かう。


 俺は目の前の敵を相手にしつつも、上から俯瞰して敵と味方の動きが見れた。


 「よし、こいつで決める! 熱血一刀流、フェニックスホイール!」


 俺は腰に差したフェニックスブレードの打太刀を抜刀!


 ジャンプして刀身を燃やし、空中で回転しながら落下し大猿の怪物を両断した。


 「……悪党、成敗っ!」


 俺が納刀すると、どういう理屈か倒した怪物は禿頭に髭面の人間族の山賊と言った姿に戻て倒れていた。


 落ちていた縄で山賊をふん縛り村の広場へ連れて行く。


 仲間達も退治を終えて、地面に拘束した賊を転がして集まっていた。


 「天狗様、化身の皆様! ありがとうございました~~~っ!」

 「「ありがとうございました~~~!」」


 出てきたオーガ族の村人達が平伏して礼を言い出す。


 「良かった、頭を上げてこいつら仮面衆について聞かせて下さい」


 俺達は変身を解き、村の長っぽいお爺さんオーガに尋ねた。


 仲間達は化身なのに俺が天狗呼びなのは、変身後の鳥要素だろうなと思いながら。

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