第十九話:大会後編

 「凄いよ、マッカ君♪」

 「いや、部長! 近い、落ち着け!」

 「マッカ君、ドーナツ食べる~♪」

 「ポンデ君はチョコドーナツ突き出さないの!」


 ジェスターとの戦いの後、選手達の宿の部屋で男子達に懐かれた。


 「三人とも、僕も仲間に入れてくれよ♪」

 

 レオンがドアを開けて、瓶のジュースを差し入れで部屋に持って来た。


 「レオン殿下? レオン殿下も変身できるんですよね♪」

 「君はエミール君だね、そうだよ♪」

 「二人共凄いな~♪」


 うん、どうじてないポンデ君のマイペースの方が凄いと思うぞ。


 「ファンができるって良いね、マッカ♪」

 「まあ、怖がられたりするよりは良いさ」


 普通の友達づきあいは大事にしたい。


 男女別の宿のお陰で、ある意味気楽に飯や風呂を楽しんで寝れた。


 翌日、見事に修復された闘技場のリングに驚いた。


 将棋盤みたいに升目が敷かれた石のリングが戻ってたよ。


 改めての三回戦、俺の相手はアイゼン大学のドワーフの剣士。


 防具は革鎧で武器は両手剣、黒髪オールバックのドワーフ。


 十代でも立派な髭を生してるのはアイゼンのドワーフらしさか。


 頭の脇で剣を横に寝かせる構えを取る。


 地球の西洋で言う雄牛の構え、日本刀だと霞の構え。


 正統派って感じのアイゼン流の猛牛の構えだ。


 こっちはセンターガードこと、中段に構える。


 「マッカ・サンハート対・ヨハン・フォン・シュトルム、始め!」


 ヨハン卿の剣に風が集まり、空気のドリルで包まれた。


 ならばこっちも、火災旋風を刃に纏わせる。


 空気のドリルの突きを、炎の竜巻を纏った剣で受ける!


 次は互いに刃を打ち合い、一進一退の攻防。


 ドワーフの腕力と剣が纏う気圧に対抗するには、爆発力。


 足裏も背中も剣の周囲もボンボン爆発させないと押し返せない。


 「ふん! やるのう、流石は勇者か!」

 「俺の師匠はドワーフでね、懐かしいよ!」

 「どうりで構えから同門の臭いがすると思ったわい」

 「そいつはどうもっと!」


 相手側が師匠と同じドワーフなら攻略法も同じ。


 こと、場外負け有りのルールならこれしかない。


 俺は相手を受け流して背後を取り、剣をリングに突き立てる。


 「熱血一刀流、爆心波っ!」


 ドワーフが突進力自慢なら、勢いに追い風と背後から爆発で吹き飛ばす!


 「ヨハン、場外! 勝者、マッカ・サンハート!」


 綺麗な勝ち方じゃなくてごめんなさいと内心で謝る。


 「ふん、流石は小賢しい人間じゃの」

 「そちらこそ、ナイス剛力♪」

 「褒めても何もでんわい」


 リングを降り、ヨハン卿と拳を打ち合わせる。


 個人戦は参加者が少ない事もあり、無事に準決勝まで行けたぜ。


 「ごめ~ん、皇女様が強すぎて負けちゃった!」


 ポンデ君はお疲れ様、団体戦で頑張ろう。


 「こっちもオーガのお嬢さんに手ひどくやられたよ」


 びしょ濡れのエミール部長もお疲れ様。


 これは知り合いと対決の流れだな。


 「アオイ・トクダイラ対マッカ・サンハート、始め!」

 「いざ、尋常に勝負です!」

 「受けて立つ!」


 準決勝の相手は探していたブルーことアオイ嬢。


 相手は刀に激流を纏わせて斬馬刀にして襲って来る。


 さらに、足にも水流を纏わせて波に乗っての移動。


 こっちは爆発ステップで回避する。


 攻撃の範囲が広い、避けても次の一撃が来るのが早い。


 「朧一刀流、渦潮の太刀です!」


 まるで人間洗濯機な回転斬りをこっちは必死で避ける。


 対抗するなら飛ぶしかない、ロケットの如く一気に飛翔する。


 水の斬撃が飛んで来るが、今の俺は全身炎属性の塊。


 相手の技が当たっても蒸発してノーダメージだ。


 「熱血一刀、落日唐竹割りっ!」

 「ま、眩しいっ!」


 太陽を背に、残る魔力を使い火の玉となって落下し剣を振り下ろす。


 火と水がぶつかり合い爆発、吹き飛ばされるが背中を爆発させて落下を阻止。


 「よっと、次はどう出るか?」


 着地して剣を中段に構える、煙が腫れた先ではアオイ嬢が目を回して伸びていた。


 「勝者、マッカ・サンハート!」


 審判のジャッジに湧き上がる歓声、決勝進出だ。


 伸びているアオイ嬢に近づき、回復魔法の光を当てる。


 「……は! 試合は、私の負けですか」

 「まあ、そう言う事だな」

 「ああ、刀が折れてる! 弁償して下さい、お婿になって!」

 「こら、そんな当たり屋みたいな事を言うんじゃない!」


 俺はリングから降りて一休み、どうにか決勝戦か。


 マズイMPポーションを飲み干して試合に備える。


 俺の次の試合では、アデーレ様と金髪エルフの美少女を下した。


 魔力ゴリラのエルフとはいえ、アデーレ様は魔力もフィジカルもゴリラ。


 ドワーフ対エルフなら、ゴリラ力が強い方が勝つよな。


 決勝戦は俺とアデーレ様の対戦、両者リングに上がる。


 「マッカ・サンハート対アデーレ・アイゼン、始め!」


 試合開始の合図が上がり、試合開始だ。


 「マッカよ、全力で来るのじゃ♪」


 グレートソードで予告ホームランのポーズするアデーレ様。


 いや、片手で大剣を持てる相手に手加減できるかい!


 「ストーンコーティングじゃ!」


 リングの石が抉り取られて、アデーレ様の剣に纏わりつく。


 大剣が岩の柱になって、振り下ろされる。


 「あぶねえっ!」


 斬撃は避けたが、衝撃で石の破片が飛んで来たのを蹴りで弾く。


 逃げてばかりもいられない、足裏爆発でジャンプ更にジャンプ。


 「甘いぞ、突き上げじゃ!」

 「いや、狙い通りだ! 連続発破剣!」


 相手の突きに合わせて突き返し、相手の剣先から爆破しつつ落下して行く。


 「な! 武器破壊狙いか!」

 「最後の一突き!」


 着地と同時にアデーレ様の大剣を柄だけ残して破壊し尽くす。


 「ふむ、剣術の試合で剣が無くなれば負けじゃ。 降参する」

 「勝者、マッカ・サンハート!」


 審判の判定が下り万雷の拍手。


 「では、試合が終わりましたのでお顔を失礼」

 「うむ、さしゆるす♪」


 俺はコントの様な煤まみれになったアデーレ様のお顔に回復魔法をかける。


 回復魔法、汚れも消えるんだよな何故か。


 「「おめでと~~~♪」」


 表彰の前に剣術部の皆が圧案て俺を胴上げしてくれた。


 「ありがとよ、けど団体戦もあるだろ!」 

 「前祝だよ♪」

 「喜びなさいよ♪」

 「我が部の救世主です♪」

 「来年も宜しく~♪」


 仲間の祝福を受けてから、表彰式。


 優勝は俺、二位はアデーレ様で三位はアオイ嬢。


 スピーチを聞いて礼儀正しく返事をしてと以下省略。


 教皇猊下からは優勝のメダル。


 ダンケ三世陛下からは、副賞のサーベルを貰った長剣じゃないんだ。


 「マッカ・サンハート、汝を帝国騎士として任ずる」


 ついで略式で副賞のサーベルで肩を叩かれ騎士の称号を授与された。


 翌日は団体戦。


 国同士の対抗戦なので此方が本番とも言える。


 魔王軍や手下の排斥主義者達によるテロを警戒しつつの開催だ。


 俺が敵なら、一度の襲撃で終わらせない。


 俺達王国とミズホ国以外は、二軍までエントリーして八チームでの勝ち抜き戦。


 俺隊の相手はブロンズ王国の二軍、全員ダークエルフの女子だ。


 リングに上がって試合前の霊と言う時、相手チームが動いた。


 「我らダークエルフは、ブロンズ王国を打倒する! 女王、覚悟!」


 相手の大将が叫び、全員が白い仮面を被り怪物に変身した。


 「ここで来たか、皆下がれ! 聖獣武装!」


 三メートルほどの五色の巨猿型の怪物達を前に俺は変身した。


 「レグルス見参! 女王陛下、お守りいたします」

 「ポラリス推参、客席はお任せを!」


 レグルスとポラリスも動いた。


 「タウラスは、フラメスに加勢します!」


 クラウが変身した白銀の牛の勇者タウラスは俺とコンビだ。


 「「僕達も戦う!」」


 剣術部の皆が加勢してくれた。


 「国の不始末は我らが着ける! かかれ!」

 「あ、馬鹿野郎!」


 ブロンズ王国の代表団が怪物に挑むも、剛腕の一撃で弾き飛ばされた。


 神聖騎士学校の代表はブロンズ王国の代表団を救いに行った。


 「皆の者、開催国の意地を見せえるのじゃ! 勇者殿に続け!」

 「「応っ!」」

 「ミズホ武士達よ、我らも行くぞ!」

 「「御意っ!」」


 アデーレ様やアオイ嬢達も動き出す。


 団体戦が大乱闘に変わる。


 敵は不和を広げる気だろが、共通の敵に結束する可能性が抜けてるぜ!


 「良し、皆の魔力を俺にくれ! 熱血一刀流、フェニックス・アーク!」


 俺は剣術部の皆の魔力を吸い取り、まずは仮称赤ゴリラへ超高熱火炎を放つ!


 邪悪な力が消え、少女に戻った赤ゴリラ。


 「喰らいなさい、クロスエグゼキキュート!」


 続いて、タウラスが白銀に輝く双剣を振るい黄ゴリラを倒す。


 「流石だ、次行くぞ!」

 「貴方の相棒ですから♪」


 続いて俺はアデーレ様の加勢に青ゴリラ退治へ。


 タウラスは、アオイ嬢の加勢で緑ゴリラへ向かう。


 「僕達も行くよポラリス」

 「ええ、フラメス様と組みたかったですが!」

 「その気持ちは同じだよ」


 レグルスとポラリスは、自分達の方へ来た黒ゴリラを迎え撃つ。


 勇者団と代表選手達の共闘により、怪物化したダークエルフ達は倒されて事件は素早く終息したのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る