第十八話:大会とカウンターテロ
各国の来賓も集い、剣術大会が開催された。
学生とはいえ国家代表、オリンピックみたいなもんだ。
いずれ砂漠の国ガラムや
選手としてだけでなく勇者としても頑張らねば。
怖いのはテロだ、悪いが教皇猊下の開会の挨拶とか聞いてる場合じゃねえ。
俺は選手として中から周囲の魔力を探り敵を探す。
我が王国側の客席はレオンとフローラ嬢に任せられる。
だが、帝国や教皇国にブロンズ王国はどうか?
それぞれ護衛とかいるだろうが、心配になるぜ。
客席からは万雷の拍手、ひとまず開会式は無事に終わりだ。
魔法で巨大なスクリーンが生み出され、個人戦の対戦表が現れる。
ズラリと並んだ選手達の名前、その中から名前が光った者同士が対戦だ。
って、初っ端から俺かよ? しかたねえ、頑張るぜ。
「マッカ・サンハート対シンベエ・アキヤマ、始め!」
審判役のドワーフの男性が叫ぶ、相手は黒髪ちょんまげの赤鬼だ。
仲間達のように、ゲーム画面風なステータスは見えない。
だが、自然と相手が十代の少年であると言うのは感じ取れた。
和風の相手は郷愁を呼び覚ますな。
まずは双方歩み寄り、相手に合わせて一礼。
いや、驚くなよ?
こっちは魂は和風なんだ。
お互い下がってから、試合開始の合図が上がる。
「朧一刀流・飛ばし三日月、受けて見よ!」
相手が大上段から振り下ろしで、石のリングを削る斬撃を飛ばして来た。
錬り上がられた魔力の刃、喰らえば真っ二つになるヤバい技じゃねえか!
「熱血一刀、飛び込み胴っ!」
こちらは足裏を爆発させて飛翔。斬撃を飛び越える。
続いて背中も爆発させて間合いを詰め飛び込み、胴に一撃入れる。
「がふっ!」
俺の一撃が入りシンベエ君が前のめりに倒れた。
剣の腹で殴ったから切れてはいないが、すまん!
「何とか一本貰ったぜ」
「勝負あり、勝者マッカ・サンハート!」
審判が俺の勝ちを認める、客席からは一瞬遅れて拍手。
「今治すぜ、ヒールフレア!」
俺はリングの上で倒れたシンベエ君に、回復魔法で手当てをして起こす。
「かたじけない、不覚でござった」
「気にするな。 良い斬撃だった、君は良い剣士だ♪」
シンベエ君に肩を貸してリングから降りる。
試合が終わればノーサイド、 ミズホの代表団の所へ連れて行く。
「手当はした、彼は良い剣士だ。 責めたり処罰したりしないでくれよ?」
俺はシンベエ君を離す、アオイ嬢達は俺に向けて頭を下げた。
肯定と捕えて俺も自分達の待機場所へと戻る。
個人戦だけど、待機場所は各国ごとに割り振られたリング外のスペースにある。
「お疲れ様です、マッカさん♪」
「あなた、種族とか所属とか気にしないのね?」
フェレット嬢とサルミアッキ嬢が声をかけてくれた。
「ああ、どうもな。 俺の師匠はドワーフだ、気にして育ってない」
俺はそれぞれに答える。
「最初は怖そうだったけど、印象変わったよ♪」
「まあ、目付きもガラも良い方じゃないからな」
ポンデ君とそんな会話をする、次はエミール部長だ。
相手はブロンズ国のダークエルフの少女。
フェンシングで見る白スーツにレイピア。
対するエミール部長は、片手剣と盾に革防具一式。
「頑張れよ、部長!」
「個人戦でも応援するよ~!」
「頑張って、エミール君!」
「頑張りなさいよ、部長なんだから!」
次の対戦相手かも知れないが、仲間なのは変わらないので応援する。
逆に相手側は、自陣営の選手を見たり見なかったりとバラバラだ。
あっちは同じ学校の仲間とか、そう言う気風がないのかな?
勝負は盾と剣を使い分けた戦術でエミール部長が勝った。
こちらで二回戦に進んだのは、俺とエミール部長とポンデ君だった。
「ダンス会場じゃないのが残念です、私が勝ったら転校して来て下さい♪」
「俺が勝ったら、お前は会場の警備に回れよな!」
二回戦、俺の相手はクラウ。
獲物は西洋の剣での二刀流、双剣術か。
牛の角のように頭の横で剣二本を構えて突撃して来た。。
「オ~レ!」
俺は闘牛士の如く足裏からの爆発魔法の噴射で回避して行く。
だが相手も牛じゃないので回転斬りとかして来る。
「熱血一刀、発破剣っ!」
相手の斬撃を剣で受けると同時に、爆発魔法を発動。
「な、しまった!」
クラウが爆発で弾かれると同時に、俺がリングにあけた穴に彼女の足が嵌り転倒。
「はい、これで止め」
「く、降参しますのでお姫様抱っこを所望します!」
「断る」
「勝者、マッカ・サンハート!」
仰向けに倒れたクラウの胸に剣を突き立て、ギブアップを勝ち取る。
試合が終わればクラウを起こして、彼女の足を魔法で治す。
「それじゃ、警備の仕事宜しくな神聖騎士さん」
「お任せ下さい我が勇者」
カウンターテロの仕事頼んだ手前、無傷で倒さないといけなかったのは疲れた。
「お疲れ様、魔力回復薬の方がいるでしょ?」
「ああ、いただくぜ」
待機位置に戻ればサルミアッキ嬢が俺に緑色の液体入りのガラス瓶をくれた。
瓶の中身を一気飲みする。
甘苦くて喉がスース―する、マズイ!
「お疲れ様、三回戦も僕と部長とマッカ君で頑張ろうね♪」
ポンデ君はあっけらかんとしていた、メンタル強いな。
「マッカさん、見て下さい! 他の人達も助けてます!」
フェレット嬢が驚いてリングを指さす。
「大丈夫ですか?」
「すまねえ」
神聖騎士学校の選手が倒したアイゼン大学の選手を起こし、回復魔法をかけた。
アデーレ様やアオイ嬢も同じように、敗者を労わる姿勢を示しだした。
「ええ、去年までこんな事なかったわ」
「皆ギスギスしてたよね」
サルミアッキ嬢とポンデ君も驚き顔で呟く。
「マッカ君の影響かな♪」
エミール部長は微笑んだ。
「だと良いな、勝っても驕らず負けても腐らずだよ」
若い世代の平和と友好の祭典と言う建前に則り出した、良い事だ。
「ヒャ~ッハッハ♪ 気持ち悪いなれ合いだね!」
三回戦と言う時に、闘技場を暗雲が覆いリングに稲妻が落ちる。
落雷と共に現れたのは、一人の怪人。
蝙蝠をピエロを混ぜたような黒い水晶の甲冑を纏ったヴィランだ。
「ここで来たか、聖獣武装!」
怪人にはヒーローの出番、俺は変身してリングイン。
「出たな勇者、邪魔しないでもらおうか!」
「邪魔なのはお前の方だ! 皆は一時避難を!」
俺は選手や来賓を巻き込まぬように叫ぶ。
「アイゼン大学の皆の者、結界の発動じゃ!」
「神聖騎士団は、不死鳥の勇者様に従って下さい!」
「ミズホ武士達よ、民を守るのです!」
味方がいるって、心強い。
仲間達が避難誘導やバックアップをしてくれ出す。
俺と怪人がいるリングはドーム状の結界に包まれた。
これなら被害を気にしないで戦える!
「くっくっく、嫌だねえ仲良しこよしは」
「ああ、俺もお前とは仲良くなれねえな!」
「僕の名はジェスター、魔王軍の宮廷道化師さ♪」
「不死鳥の勇者フラメス、お前を斬る!」
俺は愛刀のシミターに炎を灯し、ジェスターを斬りつける!
手下にテロでも起こさせるかと思ったら、当人がテロを起こしに来やがった。
「剣は僕も使えるよ~♪ 暗黒剣舞~♪」
ジェスタ―も黒い長剣を出して俺のシミターと切り結ぶ。
お互い斬撃のラッシュが始まった!
「そ~れそれ、串刺しにしちゃうぞ~♪」
「喧しい、熱血一刀流・羽ばたき返し!」
鳥の羽ばたきの如く刀を動かし、相手の攻撃を防ぎつつ弾き返す。
「やるねえ、ならこれはどうかな暗黒お手玉、ダークジャグリング♪」
距離を取ったジェスターが、無数の黒い球を生み出す。
「熱血一刀流奥義・フェニックスダ~~~イブッ!」
俺は一気にケリをつけるべく、大上段の構えを取る。
次に、全身を燃やし火の鳥となって突っ込んだ!
俺の突撃はジェスターに直撃し、奴もリングも大爆発で消え去った。
「畜生、またも分身か!」
敵と結界が消え、抉れた地面の上で呟く。
ジェスターが消える際、アバターだと言って嘲笑って消えた事に腹が立つ。
まあいい、決戦の時は覚えてろよ?
変身を解き、ボウル皿のように抉れた周りを見回す。
「大会、どうしよう?」
「心配はいらん、こんな物すぐに戻してくれるわい♪」
「あ、アデーレ様!」
アデーレ様がドワーフの男達を率いてやって来た。
「マッカよ、さっさと出るのじゃ。 これより修復作業に入るゆえにな♪」
俺はアデーレ様に従い、自分が空けた穴から出る。
「皆の者、アイゼン帝国は土木技術も西洋一なのじゃ~!」
「「オ~~~ッ!」」
アデーレ様の指揮により、闘技場の修復工事が始まる。
ジェスターと俺の戦闘の所為で、この日の試合は中断。
三回戦からは明日に持ち越されたのであった。
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