第十三話:教皇国へ
「くっそ、幹部怪人みたいな奴を逃がしたのは痛いぜ」
「一人で突っ込んだからだよ? 次に会った時は皆で倒そう♪」
「ええ、私達は戦隊なのですから♪」
「前世から変わらん火の玉ぶりだな」
「でも、僕達の勝ちですよ♪」
関所を抜け、幌なしの馬車に揺られて街道を進む俺達。
事件の始末は騎士団と町長に任せ、俺達は旅の空だ。
空は晴れだが俺の気分は曇りから荒れそうだ。
「悪い、生まれ変わってもこの性分は変えられねえわ」
仲間達に謝る、前世から仲間達に助けられてるよな俺。
「うん、マッカが突っ込まないって事はよほどの事だもん♪」
レオンが微笑む、何かムカつく。
「マッカ様が切り込んで下さるから、私達は後に続けますわ♪」
フローラ嬢、俺は鉱山のカナリアか?
「今世でも、お前が口火を切り止めを刺すみたいな役回りなんだろうな」
クレインが感想を呟く、そう言われるとなんだか俺もそんな感じがする。
「マッカさんは良くも悪くも突撃隊長ですから♪」
バッシュ、悪くもはいらないと思うんだよ俺は?
「お前ら、やっぱり変わらないもんがあるのは良いなあ♪」
世界も姿も変わっても、大事な物は変わらない。
仲間達の言葉に俺も笑みがこぼれた。
「……マッカ、そんな素敵な笑顔を見せて僕をどうしたいの♪」
「マッカ様、私の理性を壊す気ですか? このまま大聖堂で挙式ですか?」
「フローラ嬢ずるい! 僕が女になるまで待ってよ!」
「レオン様、マッカ様の第一夫人の座は今世でも譲れませんわ!」
レオンとフローラ嬢が俺を取り合う、前世の業も変わらねえよ。
「クレインさん、僕達は前世の頃から何を見せれてるんですかね?」
「バッシュ、ブルーがいないだけまだ大人しいだろ?」
「いや、クレイン達は視聴者か!」
前世からグリーンとピンクの二人は俺のトラブルを助けてくれなかった。
「嫌ですよ、自分から交通事故にあいたくないです!」
「バッシュに同感、犬も食わない」
二人からは無情な返事が返って来る、なんてこった。
『フェニックスの勇者は、雌雄どちらにも好かれるのだな』
馬車を牽引してくれている鹿の王。
俺達の会話に呆れているようだ。
「ああ、こいつは前世の頃から男女どちらからも攻めれる受けだから」
「マッカさん、総受けですよね♪」
いや、聖獣に変な事吹き込むな!
「待っててねマッカ、僕は男心もわかる女になるから♪」
「レオン様が女性化したら、それは悪役令嬢ですわ!」
「フローラ嬢の方が、けなげなヒロインの僕の恋路に立ちはだかる悪役令嬢の役回りだと思うよ♪」
俺を挟んでレオンとフローラ嬢が火花を散らす。
「いや、お前らいい加減にしろ!」
このぐだぐだなチームワークは、生まれ変わっても変わらねえのか?
青空に叫ぶが、答えは来ない。
カタカタと車輪が道を撥ねる音と、俺以外の仲間達の笑い声だけが響いていた。
シルバー教皇国側の関所は簡単に抜けられた。
レオンが持つ通行証や王家の紋章、俺達の学生服と威を遠慮なく借りたお陰だ。
まあ、荷馬車が後続の通行の邪魔になると言うのもあった気がする。
苦虫をかみつぶし顔で俺達を見送る兵士さん、ごめんなさい。
「関所の門番の方、こちらを見る目が険しかったですわね」
フローラ嬢は悪意を敏感に感じとっていた。
「貴族のボンボン学生が旅行かよって、リア充を憎んでる目だった」
兵士さん、気持ちはわかるよ俺も昔はそうだった。
「仕方ないよ、間違ってないからね表面上は♪」
レオン、さらっと言うがそう言う所だぞ?
「波風を立てずに行こうな、外国なんだし」
クレインは冷静に呟く。
「そうですよ、火の玉さん?」
バッシュがこちらを睨む。
「そこで皆で俺を見るなよ」
俺だって、そう毎回暴走はしないはずだぞ? メイビー?
「まあ、マッカが暴走するのは確定だからお尻は任せて♪」
「……マッカ様のお尻♪」
「うふふ、僕はフローラ嬢より先にマッカとお風呂に入ったからね♪」
「いや、レオンとフローラ嬢は紳士淑女らしくしろ!」
レーティングは守れよ、まったくもう!
「クレインさん、だんまりですね」
「夫婦喧嘩は犬も食わないからな」
バッシュとクレインは、非情だった。
空を飛んでた鳶の目を借りて進行方向の様子を探る。
目指す大聖堂のある聖都デメテルに続く道の途中で宿場町があった。
「この先に小さい宿場がある、左右に建物が合わせて十軒ほどだ」
俺は鳥の目を借りて見た様子を仲間に伝える。
「じゃあ、一旦止めて荷車とか荷物をストレージの魔法でしまおう」
「そうだな、聖獣を見せるのはよくないし」
「民草に余計な威圧を与えぬようにいたしましょう」
「マッカさん、わかってますね?」
「あ、はい。 それは前世からもう」
「バッシュ、それは前振りだよ♪」
俺がやらかし担当なのは否定できない。
一旦、道の上で止まり武器やバックパック以外は魔法で異空間へとしまう。
俺達は徒歩で映画のセットじみた宿場町に入る。
穏やかな商店街じみた所だ、八百屋や肉屋は農家の直売かな?
「穏やかな所ですわね♪」
フローラ嬢が微笑む、良い笑顔だ。
「こう言う所で買い物とかデートとか良いよね、マッカ♪」
レオンの意見には同意だが、フローラ嬢と共に俺に腕を絡めるな?
「クレインさん、お菓子おごってくれませんか♪」
「バッシュ、財布は自分のを使おうな?」
「ケチです~っ!」
後ろのクレイン達がやかましい。
うん、この青春やり直しみたいな時間は癒される。
ここじゃあトラブルは無しにしてくれよ、ただの通過点なんだから。
「あら、あなた達は学生さん♪ ようこそ、カウベルの宿場へ♪」
俺達の前に酒場から出て来て声を掛けたのは、銀髪ツインテールの姫騎士だった。
「どうも、俺はマッカ・サンハート。 俺達はゴールドバーグ王国魔法学柄の学生です♪」
俺は自分達と同年代に見える美少女姫騎士に一礼した。
自分からジェントリーさを相手にアピールする、処世術は大事。
仲間達も一礼する。
「ああ、王国の貴族学校の♪ ご丁寧にどうも、私は聖都の神聖騎士学園の生徒でクラウ・トラムと申します♪」
クラウ嬢が名乗り返す。
レオンとフローラ嬢の視線が刺さるが、俺だって外面はよく出来るんだよ。
「どうするフローラ嬢、ライバルの予感だよ?」
「マッカ様は渡せませんわ!」
何か俺の後ろでヒソヒソ言い合うレオンとフローラ嬢。
別にナンパとかじゃねえって。
「聖都に来られるならまたお会いできるかもですね、マッカ様♪」
「ええ、またご縁があればお会いしましょう♪」
俺は全力で紳士的に振舞いクラウ嬢と別れた、何かまた会えそうな気がするな。
青くないから彼女はブルーじゃなさそうだな、残念だ。
「マッカ様、懸想ですか!」
「マッカは僕達のだよ!」
「いや、何か仲間っぽい感じがしてな。 彼女がブルーかもしれないと思った」
俺はステータスが見えないから、直感捜査で当たるしかないんだ。
「あの子は違ったぞ、葵じゃない」
「マッカさんは、直感捜査は止めた方が良いですよ?」
「何だ、違うのか」
クレインから違うと言われて落ち込む、仲間っぽい感じはしたんだがな?
「フローラ嬢、協定を結ばないか? マッカは人たらしだからライバルを増やさないように!」
「ええ、抜け駆けは禁止ですわよ?」
レオンとフローラ嬢は何を言ってるんだこいつら?
「バッシュよ、もしかしたら今世では追加戦士が来るかもだぞ?」
「もしかして、彼女はシルバー枠とかですかね?」
クレインとバッシュが呟き合う。
何だろう、前世では六人チームだったけど今世では七人チームになるのかな?
クラウ嬢との出会いで、俺はそんな未来を想像してみた。
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