第十四話:勇者認定
聖都デメテルについた俺達。
「勇者団の皆様、お待ちしておりました」
町の入り口にズラリと並ぶのは銀の甲冑姿の騎士の集団.
教皇国の主力部隊、神聖騎士団だ。
「ご丁寧なお出迎え、感謝いたします♪」
外交担当のレオンが丁寧に挨拶する。
「それでは、我々が皆様を大聖堂までご案内させていただきます」
兜に赤い羽飾りの付いた隊長格の騎士が答えて、騎士団が先導を始める。
俺達は彼らに護衛されて歩き、街の中心部へ向かった。
辿り着いたのは城と教会が混ざった建物、初めて見るがこれが大聖堂か。
中に入れば、結婚式にも使われるであろう広間が目立つ。
フローラ嬢とレオンがうっとりしていた。
「よくぞ辿り着いた女神の勇者達よ、汝らの来訪を歓迎する」
広間の最奥で此方に語りかけるのは、法衣よりも甲冑が似合う精悍な男性。
茶色いオールバックの髪は獅子の如し、どことなく前世の長官を彷彿とさせた。
「お初にお目にかかります教皇猊下、レオン・ゴールドバーグでございます」
レオンに続いて前に進み、俺達は教皇へと跪いた。
「うむ、余はゴンザレス一世。 其方達をを導く託宣を女神より承った者である」
名前まで似てる、長官の並行同位体かな?
「女神教会は汝らを勇者と認定し、助力を約束する。 時に赤髪の少年、そなたが噂のマッカ・サンハートであるな?」
「はっ! 今後も世界と人々の為に力を振るう事を誓います!」
こっちに話を振られたので跪いたまま答える。
絶対に良い噂じゃねえな。
「女神より直接使命を持ってこの世に生まれし汝こそが、団の仲間のみならず各国の英傑達を率いる勇者の要として勤めを果たすのだ」
「かしこまりました。 このマッカ・サンハート、身命を賭して挑みます!」
スカウトされて生まれて来たからな、責任は果たすぜ。
しかし、各国の英傑達とかどんな面々か楽しみだぜ。
俺達は、教会から勇者として認められた。
教会から公認の勇者の証として贈呈されたのは衣類と紋章付きのメダル。
衣類は二つで、一つは背中に金の太陽が描かれた赤いフード付きケープ。
もう一つは、胸に金の太陽が描かれた白いサーコート。
教皇のお付きの司祭様から手渡された。
ケープやサーコート単独は平時に。
サーコートとケープのフルセットは式典に出る時に着るように指示を受ける。
周りにいた神聖騎士団の皆さんが拍手で祝ってくれる。
これで当初の目的である国際社会での身元の保証と立場が得られた。
紐付きになった事で面倒事も増えるだろうが、覚悟の上だ。
「では勇者達よ、正装を身に纏い表に出よ。 そなた達を民に喧伝する」
教皇猊下が俺達に命じる。
ようするに、ヒーローショーでやる素顔で集合からの変身だな。
司祭様に先導されて男女別に着替えの間に行き、着替える。
大聖堂の前に集合した俺達はバックに立つ教皇猊下の合図で変身した。
「不死鳥の勇者フラメス、マッカ・サンハート!」
名乗りの初めは俺から、レッドだしな。
「熊の勇者ポラリス、フローラ・シトリン!」
二番手はまだいないブルーの次で黄色のフローラ嬢だ。
「鹿の勇者エラポス、クレイン・グリーンウィンド!」
三番手はクレイン、ブルーが増えたら四番手にズれる。
「羊の勇者アリエス、バッシュ・ピンクスプリング!」
四番手はバッシュ。
「獅子の勇者レグルス、レオン・ゴールドバーグ!」
「「我ら、聖獣勇者団っ!」」
五番手はレオンで次に全員での名乗り。
前世と違い爆発は起こらない。
魔法の水晶玉で撮影され、自国だけでなく西方各国に身バレする事となった俺達。
元から後には退けないが、公に身バレして退路を断ち本格的な勇者道を歩むぞ。
お披露目の儀式が終わり、俺達は大聖堂の地下深くにある広間に通された。
石畳の床の広間の中心には女神像。
四方には扉があり、ダンジョンみたいな部屋だ。
太陽を胸に抱いた美女の足元を聖獣達が取り囲む、知らない聖獣もいるな。
俺は女神像に跪いて祈り奉げると仲間達も俺に合わせて祈った。
前世の頃からから神仏は敬えって言われて育って来たし、女神様は来世をくれた恩人。
祈りを奉げるのは大事な挨拶だ。
祈りを終えて頭を上げると、女神様の映像が浮かび上がる。
『よくぞここまで来てくれました、我が勇者達よ♪』
映像が微笑むと、俺達の聖獣が小さい姿で出現して女神様の映像に駆け寄る。
「微笑ましいですね、聖獣ちゃん達♪」
「絵本みたいで心が癒されるな」
バッシュとクレインが微笑む。
『聖獣達、これからも勇者達とともにありなさいね♪』
女神様が聖獣達に語りかければ、肯定の鳴き声が上がる。
「女神様、俺達の仲間ブルーは何処にいるのでしょうか?」
『赤の勇者、安心して下さい♪ 青の勇者は近き日に東の国より訪れます♪」
「良かった♪ ブルーは無事みたいだな」
女神様の言葉に俺は安堵した、再会が楽しみだぜ。
「ブルーの安否はともかく、マッカが出会った敵についてお教え下さい」
「そうですわ、何処に殴り込めば良んですの?」
レオンとフローラ嬢が敵について尋ねる。
『敵は月を根城にした邪神の眷属である魔王軍です、今はまだあなた達が攻める時ではありません。 我が巫女である銀の勇者、鉄の国の茶の勇者とも合流し世を守りながら聖獣巨人を生み出すのです。』
女神様の映像はそう告げると消えた。
ブルーを入れて前世からのコアメンバーは六人。
銀と茶だからシルバーとブラウンで追加戦士は二人。
八人編成チームでロボがいるんだな。
「女神様の映像、言うだけ言って消えちゃいましたね?」
「そう言う事を言うなバッシュ、干渉にも制限があるんだろう」
バッシュに対してクレインが窘める。
「まあ、必要な情報は得らえたかな♪」
「そうだなレオン、八人チームで巨大ロボに乗り月にいるボスにカチコミだ♪」
「流石マッカ様、竹を割った素直さですわ♪」
「いや、ザックりすぎな理解度じゃないですか!」
「まあ、前世からわかってた事だな」
クレインに呆れられたよ、細かい事は仲間達に任せてるだけなのに。
「良いじゃないか、マッカはその素直さが魅力なんだよ♪」
「レオン様には激しく同意ですわ♪ 鉄の国、アイゼン帝国ですわね♪」
レオンとフローラ嬢が何か言い出した。
「まあ、勇者パーティーも戦隊もやる事は同じなんですよね」
バッシュがからからと笑う。
仲間達と世界を守るって意味じゃあ、戦隊時代と確かに変わらねえよな。
「どうやら、女神からの託宣が下りたようだな」
ドアの一つが開き、教皇猊下が入って来た。
「おやっさん、いや教皇猊下? そうか、ここが大聖堂だからいて当然か」
クレインが間違える。
教皇猊下は本当に長官と似てるからな。
「はい、我々の道を示していただきました♪」
「うむ、レオン王子よこの場所をそなたら勇者達の中継基地に使うと良い」
「は、ありがたき幸せ感謝いたします」
レオンと猊下の会話から、この部屋の扉からあちこちへと行けるのかと気付いた。
「では国へと帰るが良い勇者達よ、汝らに女神の加護があらん事を!」
大聖堂の地下を出た俺達は、教皇猊下に見送られて聖都から旅立った。
「あの地下室のドアから帰らせてくれても良かったのに!」
バッシュが馬車のキャビンの中で文句を言う。
「いや、関所通って帰らないと駄目だろ?」
「王国との約束も守らないといけませんわ」
クレインとフローラ嬢がバッシュを窘める。
「まあ、筋は通せって教皇様も言ってたから仕方ねえよ♪」
俺は車内でサンドイッチを食いつつ呟く、
「マッカの食べてる顔、可愛いね♪」
「レオンは頬を染めるな!」
「マッカ様、素敵です♪」
「フローラ嬢もだよ!」
馬車の席で俺の両隣は、レオンとフローラ嬢で固定されていた。
行きは殺人事件や戦闘と慌しかったが、帰りはぐだぐだで今回の旅は終わった。
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