第二章:国外見聞編

第十一話:宿場での騒ぎ

 「大変だ! また殺されたぞ! 今度は皮物屋のトムだ!」

 「騒ぐな! 見分中だ!」


 ワイワイガヤガヤ、俺達の前で物騒な声を人だかり。


 町人に武装した兵士に騎士。


 西のシルバー教皇国へ向けての見聞の旅に出た俺達。


 まだ国も出てないのに、宿場町の入り口前でトラブルに出くわしてしまった。


 「行くぜヒヨちゃん、ダッシュだ!」


 俺はフェニックスのヒヨちゃんを召喚して変身せずにダッシュ。


 「おらっ、健康になって甦れ! リザレクトファイア!」


 町人や周囲の人達をぶっ飛ばして死体に命の火の玉を叩きつけて注ぎ込む。


 「な、なにするだ~~っ! は、俺は生きてる?」


 俺の魔法で死体が一気に健康な肉体になり甦る。


 「し、死人が生き返っただ~~ッ!」

 「何? どういう事、火の鳥?」

 「わ、わけがわからん? そこの学生らしき男、何者だ!」

 

 周囲の人間が騒ぎ出す、面倒くさい力業で行こう。


 「うるせえ! 俺はフェニックスの勇者マッカ・サンハート! どいつもこいつも助けまくってやる!」


 ぶっ飛ばした周囲の人達にも癒しの火の玉を振りまいて行く。


 「ふぉおおっ! 力が漲る~~っ!」

 「お肌がつるつる~っ!」

 「さ、三十歳くらい若返っちまったよ~っ♪」

 「足腰の痛みがなくなった!」


 周囲の人達が一気に元気になった。


 命を救う力って最高だな♪


 「マッカ~~~っ! 先に行きすぎだよ~っ!」

 「お、王子殿下だと~~~っ! 騎士団長に報告だ!」

 「勇者様が王子様を連れて街に来た~~っ!」


 レオンの登場で騒ぎが大きくなる。


 「……くそ、あの熱血バカがやりやがった」

 「マッカさん、自分で秘密にしようって言っていたのに~っ!」

 「マッカ様、素敵ですわ~♪」


 残る仲間達も追いついて来て、クレイン達には呆れられた。


 「王子殿下と勇者殿、騎士団詰め所に保存している殺人事件の被害者達の蘇生をお願いいたします!」


 街の奥から馬に乗って騎士の男性がやってきて俺達に要請した。


 「わかった。 皆悪い、我慢できなかったから先に街の人達の命を助けまくってくる! レオン行くぞ、スーパー人助けタイムだ♪」

 「うん、僕はマッカについて行くよ♪」

 「おう、俺の周りじゃ老衰で天寿真っ当以外で死なせねえ!」


 心に火が付いたら止まれねえ、今の俺は命を救う火の玉特急だ。


 さっき生き返らせた人も、健康に気を付ければ百年位は生きられるはず。


 「マッカ様、お待ちになって~~♪」

 「馬鹿マッカ、追いかけるぞバッシュ!」

 「クレインさん、お茶でも飲んで休もうよ~?」


 後ろから仲間達の声が聞こえる、暴走してごめん。


 だが、今は目の前の命を救う事に後悔も反省もしない!


 フェニックスの力は、邪悪を焼くだけでなく命を救う力だから!


 前世じゃ悪党倒すだけで命は救えなかったが、今世は命も救う。


 理不尽で悲しい不幸な死も、それを押し付ける輩もぶっ飛ばす!


 押しかけられても面倒なので、ヒヨちゃんの癒しのエネルギーを宿場街全体に放出しながら走って奥の騎士団の詰め所に向かう。


 「遺体の安置所はどこだ~っ?」

 「こちらです、どうぞ!」


 騎士の人が俺が扉を破壊する前に開けてくれた。


 「ひでえなこりゃ? みんな元気に甦れ、リザレクトファイア!」


 俺は命を取り戻す救命の鬼となり、安置所内に蘇生の魔法を乱射。


 寝かされていたご遺体の皆さんに外れる事なく俺の魔法が当たる。


 命の炎が皆さんを包み込み全て傷も欠損もなく、人として完全復活された。


 「おう、俺は酒場から出た時にな化け物に殺されたはず?」

 「嘘、私生き返れた? 家に帰れる♪」

 「おおお、ありがたやありがたや♪」


 目覚めた人達が起き上がり自分状態を確認し出す間に俺は安置所を出た。


 「蘇生は終わりました、聞き取りなどをしてからこちらに纏めた情報を戴けますか?」

 「は、お任せ下さい勇者様♪ 街の住民を救っていただき感謝します!」

 「……いや、その不死を与えたとかじゃないですから」


 騎士の人に感謝されて落ち着きを取り戻す。


 うん、健康で生きてるって大事だよな元気が一番だ。


 『マスター、誇って下さい♪』


 ぬいぐるみサイズに戻ったヒヨちゃんが思念で俺を讃えてくれる。


 「マッカ、お疲れ様♪」


 レオンが俺を労う。


 「お疲れ様でした、母のリウマチを直していただき感謝しております!」

 「妹の足が勇者様の魔法で治ったと報せが来ました♪」

 「俺の祖母ちゃん、目がまた見えるようになりました♪」

 「妻が元気な赤ん坊産んでくれました、母子ともに健康です♪」

 「俺なんか、すっかり元気になりました♪」


 詰所内の騎士や兵士の皆さんから笑顔で感謝されてしまう、嬉しくも恥ずかしい。


 「いや、女神様とフェニックスの加護あっての事です俺は使徒に過ぎません」


 正気に戻って来た俺は調子に乗らず告げる。


 こんなべらぼうな事が出来たのは、女神様とヒヨちゃんお陰様だ。


 「宿はどうしよう?」

 「うん、その前に今は詰所から出ない方が良いよ」


 レオンに宿について聞くも要領を得ない。


 なら仲間に効くかと詰め所を出てみる。


 「王子殿下万歳、不死鳥の勇者様万歳♪」


 詰所前に街の人達が集い、元気な笑顔で万歳三唱していた。


 群衆の中から、黒いテールコートに身を包んだ中年の紳士が現れる。


 「不死鳥の勇者様、この度は誠にありがとうございました!」

 「はい、どういたしまして? 貴殿はどなたでしょうか?」


 二ールと名乗った紳士は町長で、殺人事件の被害者が蘇るは街の住民達が一気に健康になるなど俺に感謝の意を伝えて来た。


 「マッカ、お前と言う奴は熱血馬鹿だな♪」

 「クレインか、すまない。」

 「マッカさん、相変わらず良くも悪くも爆発するとべらぼうですね♪」


 クレインとバッシュには呆れられた。


 「マッカ様、素敵です♪」


 フローラ嬢からは好感度が上がった。


 「これで、マッカも勇者として名と顔が売れちゃったね♪ 王子として、英雄を讃えないわけにはいかなくなっちゃったなあ♪」


 詰所から出てきたレオンが、わざとらしく笑顔で俺の肩を叩く。


 すまない、やはり俺には隠密とか秘密裏に動くとか無理だった。


 いや、フラメスに変身してないからそっちはまだバレてないはず。


 「今日を不死鳥の日として、祭日にします♪ 皆、今後は毎年この街で不死鳥祭りを開催するぞ♪」


 ニール町長が叫べば群衆達が歓声を上げる。


 お祭り騒ぎから本当に祭りが誕生してしまった。


 どこかのご老公みたいに、世を忍んで世直し漫遊旅的なノリで行く予定を自分から壊してしまった俺。


 集った仲間達諸共、宿場町の役場へ騎士団長と一緒にお招きされる。


 立派な応接室に集まり、町長や騎士団長から改めて感謝を受ける。


 「さて、殿下と勇者のご一行様に折り入ってお願いしたい事がございます」

 「殿下達には旅の歩みを止めてしまい申し訳ございませんが、この街で起きた殺人事件の解決にご協力をお願いいたします」


 町長が促し、騎士団長が俺達に要請して来た。


 「勿論構わないよ、王子としても勇者としても見過ごせない」

 「王子殿下に同意です、犠牲者は救ったとはいえ犯人と黒幕を捕えねば」

 「喜んで協力させていただきますわ♪」

 「まあ、見過ごすわけにはいかないな」

 「きちんと事件を解決してから国を出よう♪」


 仲間達も事件解決に挑む事を表明する。


 「ありがとうございます。報酬もご用意させていただきます」


 ニール町長が報酬を出すと告げた。


 「わかりました、それではこの役場に我々は滞在し取り組ませていただきます」


 表向きのリーダーであるレオンが町長に告げれば、町長は首肯する。


 かくして、聖獣勇者団の最初の戦いは殺人事件の解決となった。

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