第八話:一休みはカレーで
イエローことフローラ嬢の聖獣の試練は片付いた。
後はピンクことバッシュが試練をクリアすればひとまず五人揃う。
ブルーの捜索もしたいが、戦力の確保や日常のタスクが溜まっていた。
契約者同士で協力し聖獣を合体させて乗り込み、空を飛んで王都に帰還した俺達。
「もしかして、聖獣がこの世界での俺達のロボ代わりか?」
放課後、皆で部室に集まり円卓を囲んで話しをする。
「う~ん、地球で言うロボならマジックメイルかな?」
レオンが紅茶を飲む手を止めて呟く。
「南のアイゼン帝国が作った奴か?」
クレインが胸の前で読みかけの聖獣図鑑を閉じて呟く。
「アイゼンってまだ友好国だし、こっちに輸入して取り入れようよ♪」
バッシュが気軽にレオンに要求する。
「バッシュ様、それは色々と難しいですわよ?」
フローラ嬢がバッシュに釘を刺す。
「一応俺の実家が縁があるから言うが、面倒臭いんだよアイゼン帝国の奴ら」
俺の実家、サンハート辺境伯領がアイゼン帝国との国境で貿易などをしていた。
ドワーフと親しい魔導工業国家で、職人や技術者は仕事は丁寧だが気難しい。
商人は金勘定はきっちりで固くがめつい人柄は、ちょっときつく感じられた。
巨大ロボット作ってくれとか言ったら、どんだけ金がかかるか?
「そうだね、マッカのご実家に任せてるんだけどだからこそ下手を打てない」
「レオン様の言う通り、マッカ様がアイゼン帝国の人質にされかねません!」
レオンが緊張した顔つきになり、フローラ嬢が鼻息を荒くする。
「だよなあ、それもあって親父殿は俺をこっちに来させたんだし」
二人の言葉で納得。
下手すりゃ学園を卒業したら今度はアイゼン大学へ留学とかもあり得る。
辺境伯の五男だから、外交カードの人材に出せる位置になれるんだ俺。
「後は、学園に魔導工学の教師を招いてと段階を踏んでだな?」
「うう~っ、クレインさんわかったよ~」
クレインの小言にバッシュがへこむ。
「まあバッシュはクッキーでも食え、まだ聖獣ロボは後回しで良い」
「マッカさん優しい、流石はレッド♪」
俺がクッキーの皿を差し出せば、バッシュは笑顔で受け取り食い出した。
「調子の良い奴だなバッシュは、次の冒険は東かクレイン?」
「そうだ、東の地域に聖獣の伝承がある」
俺の問いかけにクレインが答えてくれた。
クレインが俺達の手がかり、聖獣図鑑を円卓の上に広げる。
バッシュと契約して貰いたいのは羊の聖獣。
パッションシープと言う、王国東方の地域に伝承が記録された存在だ。
雷と雨を司り、穏やかさと凶暴さの二面性があると言い伝えられている。
「なるほど、モフモフしてそうで可愛くて好みですね♪」
聖獣図鑑を皆で眺めなる中、バッシュが興味深そうに見つめる。
「でも、まずは聖獣も僕らも魔力チャージが必要だよね」
「ですわね、契約者は聖獣に魔力を与えないと」
「そうだな、俺も腹が減って来た」
「大変そうですね、マッカさんもですか?」
「俺は、そうでもねえかな?」
腹を空かすレオン達を見てバッシュが驚く。
俺もヒヨちゃんに与えてはいる。
そのはずだが、何故か俺はレオン達のように空腹になるとかはなかった。
「俺のサイクロンディア―やマッカのフェニックスは、自家発電できるからな」
クレインが解説してくれた。
「このままではやけ食いに走って、また太ってしまいそうです」
「僕もちょっと疲れて来たかな?」
「ええっ! 皆さん大丈夫なんですか?」
「わかった、レオンとフローラ嬢はお手を拝借させてもらう」
俺はレオンとフローラ嬢、それぞれの手を握ると自分の魔力を二人に流し込む。
「ああ! これがマッカの愛なんだね♪」
「マッカ様の温かな魔力が伝わります♪」
「うおおおおっ! ありったけ持っていけ!」
俺はレオン達だけでなく、二人の聖獣にも魔力を分け与えた。
「……俺はここまで使ってようやく、腹が減った」
俺は二人に魔力を分け与え切ると手を離した。
「お前、何だかんだでレオンも見捨てないんだな」
「マッカさん、前世から優しい人ですからね」
クレインとバッシュの言葉に言い返す気力はなかった。
魔力は戻って来てるが腹は減ったので。
「うん、マッカの愛で満たされたよ♪」
「やはり今世でもあなたこそ我が夫♪」
レオンとフローラ嬢は落ち着こうな。
部室でのぐだぐだな会議は終わり、俺達は学園の食堂で夕食となった。
魔法学園は朝昼夕の三食が、学食で給食として支給される。
金曜日はカレーの日だ。
「うん、マッカの傍で食べる食事は美味しさが違うよ♪」
レオンは優雅に巣スプーンを操りカレーを食う。
「ええ、マッカ様と食べるカレーは究極のご馳走です♪」
フローラ嬢は、皿にライスもルーも特盛のカレーだ。
「フローラ嬢は、食べ過ぎは駄目だからな?」
彼女の健康面を心配する。
前世ではフローラ嬢こと日南子さんの作ったカレーに胃袋を掴まれ、結婚した。
生まれ変わっても変わらないものはあるんだな。
前は離れて食っていたが、戦隊仲間だとわかってからは一緒に食うようになった。
「お前ら三人は、本当に前世と変わらないな♪」
「カレーは僕も大好きです♪」
クレインは穏やかな笑顔。
バッシュは元気にモリモリ食っている。
前世と同じように仲間達とカレーを食える、幸せな時間だ。
乙女ゲーム世界と言う感じなのにカレーがある。
俺が転生して来た事で世界が変わったのかな?
転生の時に女神様が生きやすい世界にしてくれると言っていた気がするが。
何と言うか、良い神様にスカウトされたなと言う気持ちだ。
男としても戦士としても、受けた恩には報いねば廃れてしまう。
「マッカ様、如何なされましたか?」
「ああ、こうしてみんなで食事ができる事を女神様に感謝していたんだ♪」
「はうっ♪ その笑顔が眩しいです! あと十杯食べられます!」
フローラ嬢に対して自然と笑みがこぼれた。
「マッカ、僕も胸がときめいたよ♪」
レオンは変態、止まれ。
お前とは親友のラインを越える気はないぞ?
「レオン様、マッカ様は渡しませんから♪」
「僕は二番手でもいいさ、愛は順番じゃない♪」
レオンとフローラ嬢は火花を散らすな。
「まったく、これでブルーが加わったらどうなるやら」
「ですねえ、前世ではブルーさんもいましたね」
クレインとバッシュが今はいないブルーの事を呟く。
「ブルー、彼女も心配だね」
「ええ、お友達ですし」
レオンとフローラ嬢も声を揃えてブルーの身を案じる。
いや、本当にどこにいるんだろう?
「どうやって探せば良いのかだな、世界は広いぞ?」
俺はステータスを見たりできないので、誰がブルーなのか探知ができない。
「私達なら見ればわかるのですが、位置情報は掴めません」
フローラ嬢が説明する、ステータスチェックも万能ではないのか。
「僕もパッションシープと契約して、探しに行けるように頑張りますよ」
バッシュが拳を握る。
「パッションシープも伝承では高速で空が飛べる、探しに行くには必要だ」
クレインが告げる、空を飛んで動けるって大事だよな。
「ああ、そうすれば司令塔を残して世界の四方を回るとかできるからな」
生きていてくれよブルー、お前ともまた飯が食いたいし共に戦いたい。
「その為にも僕達はしっかり食べて休んで英気を養いましょう♪」
「バッシュの言う通りだ、救助する側が弱っていてはいけない」
バッシュとクレインが俺達を勇気づけてくれた。
「そうだな、また皆で笑い合う為にも頑張らないとな」
英気を養い、熱血全開で行くぜと俺は心に誓った。
世界も仲間も守って救って見せる、待っていてくれよブルー。
俺は乙女ゲームな世界に似合わない熱血バカだが、やり遂げて見せるぜ。
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