第12話入学式と決闘と②
周囲が騒ぎ出してアランは決闘を(半ば強制的に)受ける流れが出来上がった。
アランの明日はどっちだ!
幕間.(作者からの)重要だけど、明かすタイミングがなさそうな設定
決闘が発生した経緯について:
この作品における(古い時代の)魔術師にとって、体がぶつかる(特に格下が避けなかったことが原因で)ことはかなりの侮辱行為となります。
理由は魔術師達は周囲の魔力の塊を探知する技術である『魔力探知』が無意識にできるからです(精度や範囲は個人差がありますが、人間サイズならほぼ全員が探知可能です)。
なので、魔術師同士の体がぶつかるということは『君の魔力ちっちゃすぎてわかんなかったヨー(笑)』って言ってるのも同義です。
このことをアランはかなり後で知ることになります。
1.ミネギシ魔導学校・本館
アランが指定された場所にやってくると、ハミルトン(?)君が既にいた。
「遅いぞ!!」
「いや、指定された時間に遅刻はしてないと思う」
「学生なら5分前行動が基本だろうが!」
「(そっちが一方的に
「何だ!?もっと腹から声出して喋れ」
なぜか苛立っている相手は一度深く深呼吸するとある
『タチアイニン数は二つ。ジュンスイセンだ』
次の瞬間アラン達の周囲を強く、しかし目に入っても痛くない程度の光に包まれた。
アランはとっさに目を閉じた。
1.5 ミネギシ魔導学校・決闘場
光が弱くなったのでアランが目を開けるとアランの周りには古い時代の闘技場のような光景が広がっていた。
次の瞬間、周囲
その声の主は大勢の男女だった。
背格好はアランとあまり変わらないので、おそらく学生だろう。
「な、なんだ?!」
混乱するアランに目の前の相手はニヤリと笑いながら言った。
「娯楽の少ないこの学園じゃ、
次の瞬間二人のちょうど中間地点にナニカが出現した。
それは初め、人の身の丈程もある黒の塊だったが、瞬き三つ程の時間で人間のような姿になった。
その人間モドキは右手(?)を腹(?)の部分に、左手(?)を背中(?)の部分において、恭しく礼をした。
その後、両手を大きく開くと人間モドキは芝居がかったような調子で共通語で話し始めた。
「うららかな春日の頃、このような快晴の日に立ち会いが行えること、
その立会人はハミルトン(?)とアランを順に見ると「本日の
ハミルトンはこちらを一瞥すると「初心者にはそういう
アランも流されるまま頷いた。
立会人は芝居がかったような動作で「よござんす。ではルールの説明を、今からお二人にはこの直径200メートルの円形闘技場の内側で戦っていただきます。公平を期すために使える武器は杖のみですが、魔術で
アランは手を挙げた。
立会人はアランの方を向くと少し不思議そうな顔で発言を促した。
「この戦いって魔術は使えますか?」
「勿論」立会人は少し嫌そうな声で答えた。
「次の質問」アランはもう一度手を挙げた。
立会人はもう一度発言を促した。
周りから苛立ちを感じた。
アランの意図が掴めず、延々と始まりが遅れていると感じているのだろう。
少し嫌な気持ちになりながら、アランは次の質問をした。
「じゃあ、殴ったり、蹴ったりはアリですか?」
立会人は「勿論」とさっきよりも投げやりに答えた。
「何のつもりだ?」
目の前のハミルトンが苛立っていた。
「嫌なに。確認を、ね。もう大丈夫だよ」
アランはそう言うと軽く手をひらひらとさせた。
ある魔術師ならそうすると思ったから。
「では、双方距離を取ってください。・・・では、始め!!!」
幕間.小話
決闘場・観戦席について:
ミネギシ魔導学校では生徒間の決闘は誰でも観覧することができる。
それは
ちなみに決闘とは言っているが本来はこのシステムは生徒間の私的な競い合いを目的として創られており、今回のような殴り合いは主たるやり方にはない、ということが前提にある。
つまり、今この場に集まっている生徒達は、必然的に
「何だよ、早く始めろよ」「いつまで待たせんだよ」「金返せェ!」
闘技場内には意図的に聞こえていないそれらの声は純粋な悪意に満ちていた。
だが、「おい、あれ」。
そんな声を黙らせる存在達が現れた。
「フラム、、アイザック」誰かが彼女の名を呼んだ。
(嘘だろ?!ファズの
(ハミルトンの観戦か?)
(周りにいるのはファズの
(いや、この数日で何度かファズの生徒が決闘してたがどれにもあの御方の存在は無かった!)
(ハミルトンはこの数日で何度か決闘してただろ?)
(それで
その決闘の意味合いははその瞬間に確かにそして静かに変わっていった。
2.決闘場・闘技場内
「では、双方距離を取ってください。・・・では、始め!!!」
距離を取りつつ既に杖を召喚し終えていた、ダグラス・ハミルトンは始めの合図と共に
『石火矢の魔術!!!』
ハミルトンの服の内側に記された無数の魔法陣が回路となり、杖の先端から実態のある現象として放たれる。
これぞ魔術。名門ハミルトンの技。
彼がそう自負する
アランはギリギリで回避した。
「な?!」
ハミルトンは自らの魔術を転げまわりながら避けたアランに驚愕の表情を見せた。
「(避けた、のか?私の魔術を、いや避けることはできる。私の魔術の威力・速度は未だに発展途上、避けることができる者がいても驚くに値することではない。だが奴が?魔力の小さいあの男が?・・・どうやら今までの生徒とは何かが違うようだな)」
そして杖を構え直すと
『散弾の魔術!』
それは先ほどとは異なり、威力を捨て、数と速度に
それをアランは右跳んで避け、避けきれない分を『魔力防壁』で防いだ。
「(これも耐えるか!!!)」
今までとは違う相手にダグラス・ハミルトンは奥歯を少し強く噛みしめた。
幕間.小話
決闘場・観戦席について2:
その決闘は教員達も見ていた。
その二人は今年の入学試験を担当していたフィンリー・ヘイゲンとドルド・クローンであった。
二人は生徒達からは見えないような位置(申請をすれば行ける。決闘場の観戦席には似たような場所が何か所かある)にいた。
二人の間には言葉はなかった。
「(気まずいなぁ。ドルドさんってあんまり絡みないんだよなぁ。学部も専攻も違うし。向こうから話かけてくんないかなぁ)」
「ふむ。時に君はなぜここに?いつもフィールドワークをしているイメージがあるが」
フィンリーは少しの驚きを覚えながら答えた「いえね。私の試験を合格したや、生徒がどんな活躍をしたのかを見てみようと思いまして」
ドルドも少し驚いたような顔をした(もっともフィンリーからは見えなかったが)「ふむ。そうか」
「ドルド
「あの若者の活動を見ておこうと思ってな」
フィンリーは心の中で納得した。あの若者、とはおそらくアランのことだろうと思った「なるほど。それにしても」
「うむ。なかなかに見ごたえのある戦いであるな」
フィンリーは心の中で軽く頷いた「確かに。あのハミルトンという生徒。新入生にしてはなかなかの使い手ですね」
「おそらく身に着けている物、この場合は衣服それも肌着の類か、に細工がしてあるのであろうな。複数種の魔術を魔導書も使わずに、それもあの威力でできるなどなかなかいない」
「アラン学生もその魔術を最小限の動きだけでかわしてますし、相当実戦的な修練を積んでますよ。あれは」
「なかなか見ものであるな」
フィンリーは強く頷くと観戦に意識を戻した。
2.5 決闘場・闘技場内
『散弾の魔術』を何とか避けたアランの口から、思わず笑みがこぼれた。
「(何だこれ!すげぇ!これが魔術師!これが魔術!何でかデカいタメを感知して避けるだけで精一杯!確かに師匠の言った通り、ここでならもっと魔術について知れる!成長できる!)」
そしてアランは全身の力を抜いた。
力を抜きながらアランはかつての師匠の言葉を思い出す。
2.7 アイザック邸・庭園
アランが師匠から魔力操作で行える基礎的な技を教わっていたある日のこと。
その日、アランに対して師匠は訊ねた。
「最近調子はドう?魔力操作ノ修行を日常化してから随分たつけど、まだ違和感はアル?」
「はい。まだちょっと違和感はありますけど、大丈夫です。頑張れます」
「『(ちょっと、か)』うん。良い傾向だネ。そのまま体に魔力を慣らしていけば、君の強さはぐんぐん伸びていくよ。でもね。気を付けて、時にハ
「?それって、」
アランの疑問に師匠は答えた。
「魔術師同士の戦いの時サ」
2.8 決闘場・闘技場内
アランは深く息を吸い、同じ深さで息を吐いた。
それをするうちにアランの魔力の流れは徐々に緩やかにそして巨大になっていった。
アラン自身は全身の筋肉が力を失うような感覚がやってきた。
そして完全に魔力操作を解いた時、アランの魔力量は今までのそれを遥かに上回っていた。
「は?いやいや。何これ?」
対峙していたダグラス・ハミルトンの口からはそれしかでなかった。
これがおかしな夢ではないことはハミルトンの全身の疲労感が証明してしまっていた。
「お、いおい。何これ?」
決闘場の観戦席には二度目の静寂が訪れた。
ただひたすらの混乱は彼らの行動を一つにした。
「何をしたんだ?」
あまりと言えばあまりの事態にハミルトンはそんなことを呟いた。
それに対してアランは正直に答えてしまった。
「何、って魔力操作を解いただけだよ?」
「解いた?何で?始めた、じゃなくて?」
互いに相手の言葉の意味が理解できないというような顔をした。
「うん。日常的にやってる魔力操作の鍛錬を解いただけだよ」
「え?魔力操作の鍛錬って」
「あのミスると辛いやつだよな?」「辛いというか最悪死ぬというか」
「え?あいつ日常的にやってるって言った?」「言ってた、なぁ?」
「少しのミスが苦しみに直結する修行を?」「だからそうだって」
観客席の空気が不可逆的に変わった。
そして誰かが言った。
「あいつ、イカレてるんじゃねぇの?」
その思いは対峙していたハミルトンにも波及した。
「頭がおかしいんじゃねのか?」
アランは言った。
「え、ひどい」
あとがき:
さーて魔力操作の鍛錬に失敗した場合の痛み一覧は!
神経を直接金づちで殴るような痛み
血管の内側から無数の裁縫針で刺されたような痛み
血管の集まっている場所に熱した鉄の棒きれを当てたような痛みの
三本です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます