第6話新たな知識と代償と
「今日からこの部屋で修行しようか!そのためのメニューは考えてきたヨ!」
そう言って師匠は笑った。
1.アイザック邸2階・アランの部屋
「修行するって言っても具体的にどんなものをするんですか?あまり音を立てると誰かに感づかれる恐れがありますけど」
師匠は懐から看板のようなものを出した。
この1日で作ってきたのだろうか、看板はいろいろな色が塗られていてとても手が込んでいるようだ。
「(何て書いてあるんだ?)」
その看板に問題があるとすれば文字がこの国のものとは異なっていることであろう。
「二つ目の修行は。題シて!
思わずアランの口からは感嘆の声が漏れた。
師匠はアランの反応に気分がよさそうに続きを話し始めた。
「魔術を使うにはまずその燃料となる魔力の操作を学ぶ必要があるんだよ。これができていない状態デ魔術を使おうとしたラ、全身の血管が内側から引きちぎられたうえで全身ノ毛穴から血が噴き出すから気をつけようね!」
何か恐ろしいことが聞こえた気がしたが、とりあえずアランは頷いた。
師匠は続けた。
「サて、魔力操作の修行だけど、内容自体ハ簡単ダよ。今少年が感じている魔力があるだろ?それの流れを少シ意識的に動かしてミて。イメージとしてハ川に手を突っ込んデその水を少しだけこちらに手繰り寄せる感覚だネ。それと、はじめのうちは目を閉じタ方がやりやすいよ」
そう言うと師匠はアランの頭から左手を離した。
「私の手を置いていると私の魔力を感じテ変ナ癖がついちゃウからネ。私に話しかける時は左手ヲ挙げて教えてね」
師匠はそのまま座る(昔何かで読んだアグラという座り方)と両手をヘソの前に置き半円形状に結び目を閉じた。
しばらくすると師匠の姿はぼやけて見えなくなった(おそらく昨日と同じ魔術なのだろう)。
アランも目を閉じ、自らの魔力を感じた。
「(手で手繰り寄せるようなイメージ。てで手繰り寄せるようなイメージ、てでた繰り寄セルイメーじ・てで手繰り寄せるようなイメージ手デたグり寄セ琉いめー字)」
幕間.小話
ある廊下にて:
ある汗まみれの
少女の傍らの近侍は二拍遅れて
「「(アラン)(坊ちゃんの)((魔力の流れが変わった?))」」
それは明らかな
魔力を知らない(はずの)
これは独学でどうこうできる話ではない。
それを彼女たちは理解していた。
騎士、クルネ・オールキラーは全身を捻りドアノブに手をかけた、この異常事態の真相を知るために、三拍ほど遅れてノックをすることや背後の少女のことを思い出した。
少女、フラム・アイザックは全身を前に出した
そして三人は部屋の扉を開いた。
2.アイザック邸2階・アランの部屋
何かを掴みかけたその瞬間扉が開く音がしてアランの意識は引き戻された。
扉を開いたのはアランのお目付け役である。クルネ・オールキラー
アランの姉である。フラム・アイザック
そのお腹にくっついているのは・・・誰だろう?何度も見かけているはずなのに名前が良く思い出せない。
ただこれだけは
「何?」
この三人はノックもせずにアランの自室の部屋を開け、中を見たこと。
そしてその三人にアランはすごく嫌そうな顔をして対応する権利があるということだ。
「いや?別に?何か変わったことがないかなぁ。なんて思っただけだよ?」
最初に応えたのはフラムであった。
少女の返答にアランは心の底からの嫌悪を見せた。
「申し訳ありません。坊ちゃんの部屋から何やら普通ではない物音が聞こえたため坊ちゃんの身に何かが起こった可能性を考慮し、ノックをせずにドアを開けてしまいました。この責任はいかようにも」
次にクルネが謝罪した。
「え、いや。そこまでのことではないよ。うん」
その気迫(のようなもの)に気圧され、アランの心は僅かに揺らいだ。
次の瞬間アランの部屋の窓が歪な音を立てて部屋の外側に崩れ(そう表現するしかなかった)るとそれらの破片と入れ替わるように庭から父が飛来した。
「アラン~~~~~~~!大丈夫かぁ!」
おかしなことはいくつもあったがそれを考えるほどのリソースはアラン達の脳細胞にはなかった。
父、ウィリアム・アイザックはアランの全身をまさぐると何度か頷いた。
「うん!何か変な気配がしたけど気のせいみたいだな。パッパッパ!良かった良かった!」
「何なの!みんなして!もう部屋から出てよ!」
アランがそう言うと四人は部屋の外に追い出された。
幕間.師匠の!魔術講座!
Q.魔力操作とは?:
A.はい!というわけでこのコーナーも早くも三回目だネェ。
そういうわけで今回は魔力操作について具体的に説明していくネ。
魔力って言う
初めは身体能力の強化や簡単なケガの治療、前に見せた念力など効果は様々だね。
中にはこれだけを何世代にも渡って研鑽している一族もあるっていう話を聞いたこともあるよ。それだけ奥の深い技術ということだね。
それじゃあ今日はここまで!また次回!
3.アイザック邸1階・アランの部屋
四人を部屋から追い出したアランの眼前には風通しの良くなった部屋と複雑そうな顔をした師匠がいた。
「何て言ったらいいカな?・・・修行続けようカ」
アランも複雑そうな顔を浮かべた。
「・・・はい」
アランは今度は師匠と同じような姿勢で座るとまた目を閉じた。「(さっきの感覚でやってみよう)」
結局最初の時のような感覚は得られないままクルネが昼食に呼びに来た。
昼食の時に部屋が風通しが良くなったことを理由として、壁の修理が終わるまでアランの部屋が屋敷の客間に変わった。
すぐに使うものを運び終わった時には空がほのかに赤に染まっていた。
その間師匠は姿を見せなかった。
「?」
気がつくと部屋のテーブルの上に「また明日」とアランの筆跡で書かれた紙が置かれていた。
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