第5話家族たちと他人たち

「あぁ、そういえば。明日お姉さまがこちらに来られるそうですよ。確か、学校の長期休みとかだったはずです。先ほど騎士隊の方に連絡が入りました」

1.ウィリアム自治区・アイザック邸

家の扉を開けたアランの顔面がんめんを何か大きくて柔らかいものが覆った。

「ア~ラン~~~!お姉ちゃんが帰ってきたよ~!」

んんんなに?!んっんんんーなにも見えないよくるしい!!!んんんーたすけて!」

「???どうしたの?アラン。おねえちゃんにおかえりは?」

んんん自覚ねぇのかこいつ!!!助けてだれか!」

「こそばゆい」

そう言って今現在アランの首元に腕を回し、その脂肪で弟を窒息死させんとする美女はへらへらと笑った。

その腕の力はアランに痛みを与えることなく、しかし確実にアランの意識を奪っていた。

そんな状況を変える声がどこかからした。

「パーパっパッパッ!おかえりぃ!我が愛しの娘よ!我が愛しの息子よ!楽しそうなことやってるじゃないぃ!」

んん!んんんとうさん!このゴリラなんとかして!!!」

「アラン。くすぐったいよ」

「フラム。そろそろアランを話してあげたほうが良いよ。そろそろアランの息が絶えそうだ」

先ほどまで天井に張り付いていた二人の父であるウィリアム・アイザックは玄関ホールに飛び降りた後そう言うとフラムと呼ばれた少女は目に見える形で動揺し、青白くなったアランに呼吸を許可した。

「え!?アラン!!死なないで!私より長生きしてくれるって言ったじゃん!私の手を握って最期を看取ってくれるって言ったじゃん!」

「ずいぶん詳しく将来設計してない?パパちょっとドン引き。というかまだアランなら生きてるよ」

「え?!」

たった今呼吸を許可され、陸に打ち上げられた魚みたいになっているアランはフラムにしか聞こえないようなか細い声で言った。

「勝手に殺すなクソ姉貴。というか帰ってくるの明日のはずだろ」

何が可笑しいのかフラム・アイザックは楽しそうに鼻を鳴らした。

「ふふん。一日かかる道のりに一日かける私だと思った?アランに会いたくて早く帰ってきちゃいました!」

「あ、そう(なんなのこの人)」

そう言ってアランの意識は遠のいた。


幕間.キャラ紹介

フラム・アイザック:

性別・女

年齢・16歳

血液型・AB型

身長・172㎝

体重・な、やめ・・・イチゴ4個分だよ

好きなもの・アラン

将来の夢・弟に看取ってもらうこと


2.アイザック邸一階・食堂

「アランはどうだった?」

ウィリアム・アイザックは部屋の中でも一際頑丈に作られた椅子に座りながら娘に聞いた。

食堂の中に入りながらフラムは答える。

「良い匂いだったぁ」

ウィリアムはひきつったような笑みを浮かべた。

「お前のアラン好きは相変わらずだな。それとそう言うことを言ってるんじゃないよ」

夢見心地という風な顔をしたフラムは言う。

「アランの魔力の流れが変わってること?」

ウィリアムは少し驚いた。

「気づいてたのか」

「私がアランの変化に気づかないわけないじゃん。ちなみにアランは身長がこの3ヶ月で12ミリ伸びたでしょ?」

そう言いながらフラムは自分の席につく。

「うん(なんでわかるんだよキッショ)」

「別に良いんじゃない?そういう時期が来たってだけでしょ」

「うん、そうなのかねぇ。子育てって難しい」

「娘の前でする話?」

すると扉が音を立てて開いた。

「おかえりなさい。二人とも。あら?アランはどうしたのかしら?」

「母さん!」

そう言ってフラムはその女性にかけよる。

彼女の名はヤーガ・アイザック。

ウィリアム自治区の事務仕事の実質的な統括者であり、二人の子どもを持つ人妻である。

「ただいま!母さん!」

フラムは母親に抱きついた。

ふがふがはい、おかえりなさいむぐむぐ元気にしてた?んんんケールに迷惑はかけなかった?」

フラムはむふーといった感じに鼻息を鳴らすと脂肪の付きまくった胸を張って言った。

「大丈夫だよ母さん。全部うまくやれてるよ」

「ぷふー。そう、なら良かった。そろそろご飯にするからアランを呼んできてくれる?」

「わかった!起こしてくるね!」

そう言ってフラムは駆け出した。

フラムが部屋から出たことを確認したヤーガ・アイザックは、両手を使いテーブルを使って体を浮かせると、ちょうど目線の位置にいる夫に話しかけた。

「こんな時間から寝るなんて、アランに何かあった?」

ウィリアムは遠い目をしながら心ここにあらずという感じに言った。

「フラムに抱き締められて呼吸困難になった」

それを聞いたヤーガは、足をプルプルさせながらその顔は遠い目をした。

「あぁ、うんなるほどね」

「何というかさ、フラムがアランに向けてる感情って姉が弟に向けるようなものじゃなくなってるように感じるんだよね。最近」

ヤーガは何を言ってるんだという表情で返した。

「昔からじゃない?」

「え?」

「え?」


幕間.キャラ紹介

ヤーガ・アイザック:

性別・女

年齢・よ、よせ!いつだって彼女は僕の頼れるパートナーさ!

血液型・O型

身長・127㎝

体重・昆布五袋分さ!

好きなもの・家族

将来の夢・この前新聞に載っていた『綺麗な海の町15選』を家族で旅行に行きたい。


3.ウィリアム邸二階・アランの部屋

その部屋にはダブルベッドの上でうなされているアラン・アイザックとその寝顔を見つめながらアランの横に寝転んでいるフラム・アイザックがいた。

フラムの目は見る人が見れば獲物を狙う捕食者のような印象を与えたかもしれなかった。

あるいは別の人間が見れば子を慈しむ母親のような印象を与えたかもしれなかった。

そんな不自然とすら言える気配を彼女は有していた。

そんな彼女は何を思ったのか自分の上にかけた布団を勢いよく跳ね飛ばすと、ぴょんと飛び上がり布団の外側に着地した。

そのまま布団の下に顔を突っ込んだ。

ひかりあれ

彼女はどこかの国の言葉でそう呟くと彼女の眉間のあたりから少し前に小さな光の球体が出現した。

「けほけほ(なぁにか隠しものエッチな本とかなぁいかな?)」

しばらくして布団の下から這い出てくるとそのままクローゼットを開いた。

今度は布団の下より時間はかからずにさっさとクローゼットを閉めると指を鳴らして光の球を消すと服を何回かはたいて埃を落とし、またアランの寝ている布団にもぐりこんだ。

・・・・・|長針が数字から別の数字に移動することが二回過ぎたころ。

「ん、んん!・・・あれ?いつ寝たっけ?たしか「アラン。おはよう」

アランは目を覚ました。

そして姉はそれを確認した。

「あぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」

弟は声にすらならない悲鳴を上げ、それに姉は悲しそうな顔をした。

「ひどくない?実の姉におばけでも見たような悲鳴をあげるの」

「(実際におばけ見てもここまではおどろかねぇよという言葉を飲み込みながら)・・・ごめん」

「許す。・・・そうだ、ご飯ができたって母さんが言ってたよ。一緒に食べに行こう」

そういうとフラムはアランの指を絡めるように握るとそのまま食堂へ連れて行った。

その日の晩御飯は姉さんの好きなチーズインハンバーグだった。


4.ウィリアム邸二階・アランの部屋

翌朝アランは自室で考え事をしていた。

「(どうしたものかなぁ)」

連日の勝手な行動のせいでアランにはアイザック家騎士隊の団員を監視役として付けることが決まったと、昨日の夕食時に決められた。

現在はクルネさんが部屋の外で待機している(本人が志願したらしい。気配をここからでも感じる)。

昨日師匠は大丈夫だと言っていたが、クルネさんの監視を潜り抜けられるとは思えなかった。

そんなことを考えていたら何かが窓を叩くような音が聞こえた。

気になって音のした方を見ると一匹のカラスが窓を一定の間隔で叩いていた。

その口には「アケテ」と書かれた紙をくわえていた。

「?」

アランは疑問に思いながらも窓を開けると、そのカラスは素早く部屋の中に入ってきて、瞬き二つほど後に中肉中背の白髪で中性的な体付きを黒の長袖の衣服で全身を包んでいた東洋人の姿に変わった。

「ししょ」

師匠は左手をアランの頭に右手の人差し指を口元に添えて静かにするようにジェスチャーで伝えた。

「『(気配隠し)』・・これで良し!危うく気づかれるところだったよ。危ナい危なイ」

「師匠。今のも」

師匠は左手をアランの頭に載せたまま笑顔で言った。

「そ、魔術まじゅつだヨ」

アランはその言葉に年相応に目を輝かせると、そのまま悲しい顔をした。

「師匠、実は・・・」

アランは師匠に事情を説明した。

師匠はアランの説明が全てが終わった後もあまり気にした雰囲気をしていなかった。

「・・・うん!事情はわかった!そして言おうか。何も問題はないよ」

驚くアランに師匠は続けた。

「大昔の話になるけどね。まだ魔術師達が奇異の目デ見られていた時代には彼らの研鑽の場はこの部屋よりもずっっっっと小さな四分の三程度の室内だったんだヨね。何が言いたいかというとね。魔術の研鑽は別にあの公園じゃなくてもできるってことだヨ」

アランの表情に動揺が走った。あるいは困惑。あるいは混乱とも言った。

そんなアランの混乱を吹き飛ばすようにはっきりと師匠は言った。

「今日からこの部屋で修行しようか!そのためのメニューは考えてきたヨ!」


幕間.教えて!師匠!

Q.何か読みやすくなってません?

A.この一日で頑張ってこの地方の言葉を覚えました。

なので内心間違った発音をしてないかビクビクしてます。


5.ウィリアム邸二階・アランの部屋前の廊下

その扉の前にクルネ・オールキラーは立っている。

「(なんだ?坊ちゃんの気配が消えたなまさか逃げたか?)」

体を動かすより先にそれが違うとクルネは思った。

アイザック邸には元から警備として騎士隊の精鋭が常駐しているだけでなく、今は当主夫妻がいるためその護衛も警備に参加していた。

そんな中で部屋の窓から脱出をしようとした場合、確実にバレて騒ぎになるはずである。

しかしそれらしき声はクルネの耳には入っていなかった。

「(まさか坊ちゃんの身に何かあったのか?)」

そう思いクルネはアランの部屋のドアノブに手をかけノックをしようとしたその時。

「あら?クルネじゃない。ここで何してるの?」

フラム・アイザックが現れた。

クルネ・オールキラーはフラムの前で姿勢を正すとうやうやしく頭を下げた。

「これはフラムお嬢様。本日はお日柄もよろし「だからここで何してるのかって聞いてるの」

クルネの挨拶を姉は途中で遮った。

クルネの中の何かがキレる音がしたが、表情おもてには出さずに応対する。

「はぁ、と申されましても?」

その言葉には軽く怒気が含められていた。

その怒りはあなたなら知っているはずでは?というものか

姉は気にせずに言葉を返す。

「そ、お疲れ様。

内心はともかくとしてクルネは笑みを張り付けている。

「大変ありがたい申し出なのですが。

「そう?でもこれからアランは私と遊ぶのだもの

「いえいえ。今アラン様はお勉強の時間でございます。

「そう。でも今日ぐらいいいんじゃない?

互いに埒が明かないと感じたのか、その場には一触即発の空気が流れた。

クルネは静かに考える「(相手は一人フラム、いや)」

彼女フラムの後ろにはもう一人いた。

その女性の名前はケール・オールキラー。

クルネの妹にして、フラム・アイザックの近侍バトラーである。

近侍バトラーの説明についてはここでは割愛させていただく。

「(二人を峰打ちかイケるな)」

そしてその場の雰囲気を壁越しに感じるものがもう一人。

『(いや、なんだよこの気配。恐ろしいネ)』


幕間.小話

ある日の部屋にて:

そこは数多の書類が集う場所

アイザック家の歴代当主達が利用してきた執務室である。

その部屋には今は二人の男が、

若輩の男、シドウ・サカキは年上の男、ウィリアム・アイザックにある書類を渡した。

この場合はプリントと言った方が正しいか。

「今月の坊ちゃまの成績表です」

仕事の合間にウィリアムは目を通す。

「語学が全然なのは遺伝かね」

「来月は少しやり方を変えてみようかと」

「うん!他の成績は良いね。この調子で頑張ってね!っと」

和やかな雰囲気の二人の背筋に冷たいものが走った。

「そういえば坊ちゃまのお目付け役って誰でしたっけ?」

「・・・クルネ君だね」

「・・・・・それでですか」

「・・・しょうがないじゃん」


あとがき:どうも皆さんお久しぶりです。

作者の目玉焼きです。

熱くなってきましたね

体調を崩さないようにお互い頑張りましょう。

さてさて、この作品もいよいよ書きたかった部分に入ってきました!

これからも頑張って参りますので、どうかよろしくお願いします!

PSどの時間帯に投稿すれば皆さんは読みやすいですかね?

よろしければコメントなどで教えてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る