奪還作戦
投稿ミスを連続で二日しました。本当にすみませんでした。
――――
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ…」
「――今、絶望に暮れられる程時間があるとは思っていないよね?じゃあさ、誰宛てかも分からない謝罪を無暗に言うのを止めようか。それを言うだけの体力があれば、少しでも状況をよくできるはずだよ」
泣きじゃくりながら虚空を見つめる姉さんと、その隣に悠然として佇んでいる隊長。そして、地面に刃を突き刺し、弾き飛ばされてから微動だにしていない紅里。そして、この場で一番気まずそうに、一番自分の行動を悔いている様子の颯斗。
箱舟の騎士は体から、僕らは心から大量に血を流していた。
生命の雫が、どんどん流れ出てゆく。どちらも平等に死へと近ずいていた。
「まず、僕は何が起きたのかさっぱり理解できていない。田仲の部隊を適当に撒いた後に、確実に車の全速力よりも速いスピードでこっちまで向かった。そうしたら、僕の目の前は阿鼻叫喚のこの有様という訳だ。全く、刺激が強いったらありゃしない。暗示を掛けといて良かったよ」
口調は柔らかく、だが目は剣呑に光り、もはやまともに戦える状況ではない僕らに追撃を仕掛けてくる者達がいないかと、物理的な重みを感じる程の威圧感と共に警戒していた。
その視線が、するっと僕の方を向いた。
「優斗。何が起きたのか説明してくれ。紅里と杏子は心の整理がついてないだろうし、ドリアの人達の意識はまだ戻ってない。まぁ、犯行前に意識なんて刈り取ってるんだろうけどさ」
「颯斗…は?」
「ありゃ駄目だ。途中で自分の弱さとか不甲斐なさに気づいてうじうじして、時間が無駄になる。どうせ、一刻も早く動かなきゃいけないような事なんだろ?」
さもありなん。だが、自分自身で向き合うべき問題に気づき、それに向き合うべき時間を無駄と言って切り捨てるのは、いかがなものだろうか。
だが、それはあくまで今に限った事だろう。そう割り切り、僕は姉さんの暴走、原因となった颯斗やドリアの人達の死傷、灰色のガスマスクと紗季の誘拐、ガスマスクが残したあの手紙。全て話した。
「…そうか。楽になったか?優斗」
「ぇ?楽になったって、何で?」
「お前が今、泣きそうな顔をしているからだ。はぁ、どうせ、誰に話させたってこうなる事は分かっちゃいたけどさ。自分で言っちゃあなんだが、頼れる大人がいるってのは、子供にとって重要な事なんだ。抱えているものを共有して、自分よりも大きな存在との仲間意識が芽生える。そうすりゃ、安心できるってものだ」
別に、子供と大人に限った事ではないけど。と言う隊長の言葉は、僕の耳には入らなかった。眼を擦ると、隊長の言う通り大量の液体があった。指を濡らし、嗚咽を漏らす。
あぁ、ありふれているかもしれないが、これは血だ。心から流れ出る数多の血だ。心の臓を伝い体中に伝達されるもう一つの体液。ありふれているが故に気づかない、そういうモノだ。
悔しい。紗季を容易く誘拐させてしまった事は悔しい。だがそれ以上に自分が無力すぎて悔しい。
僕は幾年かぶりに、人の胸に頭を押し付けるようにして、泣いた。
隊長はそれを、上から静かに見ていた。
~~~~
「気は済んだかい?」
「…はい。ありがとうございます」
最後にこうしたのは小学校だったろうな、と思いながら僕はどこからか気恥ずかしさを感じて顔を上げられずにいた。
…これまたどこからか「ぷぷっ、こんなところでも初心なんですね、マスター。草が生えました。生え生えです」というやけに紅里に似た声が聞こえているが、手塩にかけて育成した僕のガン無視スキルを舐めてもらっては困るというものだ。
「ところでさ、その話でいくと、はやちゃんが倒れてなきゃおかしいんだけど、どうしてはやちゃんは平気なんだい?」
「それは僕にも…」
「ぼ、くから。せつめ、いする」
蚊の鳴くような、小さくか細い声がした。まるで華奢な女の子の細く陶磁器のような滑らかさの喉から発せられたかと思われるその声は、だがしかし、可愛い(?)しかあっていない毒舌吾輩(紆余曲折あって今は私)系少年の月花颯斗だ。
僕の頭がさっきの様に少しおかしくなってしまう程に、颯斗の一人称「僕」は衝撃だった。一体、颯斗の心に何が起きたと言うのだろうか?
「偵察、い、ったとき。ドリアの人た、ちが人質になっ、てた。だから、こうしょ、うして、ダメだった、らたおそ、うと思っ、た」
「杏子が倒したって言うあの四肢が切り落とされてる奴らか?そんな雑魚共だったのか?」
「う、ん」
自分よりも十は年下の相手に雑魚と言われてしまうのはどうかと思うが、雑魚と明言できるだけの実力を持っていた颯斗が、何故負けたんだ…?
「はなし、きかないか、ら、全員たおし、た。まわり、もかくに、んした。さい、ごの雑魚が、煙幕、をは、ってにげよ、うとした。だか、らお、いかけた。そした、ら――――」
「そしたら、どうしたんだ?」
「ぼ、くを、灰色、の、ガスマスクが、捕まえ、て、た。気づ、いたら、さるぐ、つわかまさ、れ、て、し、ばられ、た。そ、れで、くび、しめら、れた」
そう言われて改めて見てみると、颯斗だけではなく、人質とされていた人たち全員の首に赤い線が一筋走っている。何かで強い力を入れられた証拠とも言えようそれを付けられていた人の中には、口の端から泡を吹いている人もいた。
「そ、れで、みん、なか、らだに、血みた、いなのを塗られて。気づい、たら」
「そう、だったのか…」
隊長が無言で腕を広げ、颯斗も無言で、しかし静かに声を上げながら泣く。先ほどの僕と同じような光景がそこには広がっていた。
だが、僕は感傷に浸るまでもなく戦慄する。
あの灰色のガスマスクは最初からここにいただと?しかも、颯斗を圧倒する程の実力者である事から、あの紅里の一撃をものの見事に防いだ奴と同じである事はまず確定だろう。あいつは、あの雑魚たちを囮にして颯斗の油断を誘い、最後に自分で手を下し、僕たちの平静を失わせた。
そして、絶対的に有利な立場から、他でもない一般人に毛が生えた程度の僕を呼び出す事に成功したのだ。
奴の目的が見えない。理解が出来ない。
「颯斗、お前は何故さっき気まずそうにしていた?」
「ぼ、くをたす、けるため、に姉さ、んが、あんな、に、き、ずつけた、のに、そ、れが無、駄に終わっ、てしま、った、か、ら」
「じゃあ、今からその行為に意味を後付けするぞ。傷つけたからこそ、お前が目覚め、僕と優斗は安心して敵を追う事が出来る。拠点には、二番手が残るモノだ。優斗はキーアイテム、僕はその使用者。颯斗は二番手として、僕らとドリアの大切な財産を、至宝を守り抜くんだ。分かったね?」
「…ぁ、う、ん」
颯斗は頭に乗せられた隊長の手を思春期の子供の様に退けようとする事なく、静かな涙と共に受け取り、決意を新たにうなずいた。
そう言えば、僕の前でも涙、見せてくれるんだな。颯斗。
そう思いながら、僕らはその場を後にした。
「さぁ、丹沢の野郎をたたき起こしに行くか。アレの製造方法盗まれてないか心配だし」
「…アレって、何ですか?紗季を助けに行くんじゃないんですか?」
泣き止んで少し経ち、更に戦慄までしているもののまだ鼻水のせいで鼻声になっている僕の声を聞き逃す事なく、隊長は答えた。
「何の準備も無しに突っ込むなんて事はしないよ。それに、丹沢に対箱舟の騎士用に人間を簡単に強大なバーサーカー化できる薬の制作を頼んどいたんだ。奴らがここを襲いに来るんだったらまずそれが目的だと思ったんだ」
「そんな危険物があったって?!何で教えてくれなかったんですか!というか何のためにそんな物を!」
「そんな事言われたって。優斗に教えたからと言って別に何かが変わる訳でもなかったろう?あと、そいつを作った目的はさっき言ったじゃん。箱舟の騎士をぶっ潰すためだよ」
だが、その箱舟の騎士を倒すためにあるのが特務課の夢喰いなのではないのか。
「人材不足だよ、人材不足。圧倒的に人が足りないのさ。戦闘メインの『夢』を持っていようとも、現代なんだから、ハイリスクハイリターンな場所に行きたいって思う奴は中々いないだろ?だから、量より質を採ることにしたんだ。アレを使えば、消耗を度外視さえすれば確実に、安全に奴らをその圧倒的な力を以て殲滅できる」
「でも、人材不足は第四大隊だけの話だし、暴れ狂う可能性がある爆弾みたいなバーサーカーになる薬はむしろ被害を拡大させるだけなんじゃ」
分かって無いなぁとばかりに首を横に振る隊長。呆れたような表情が妙にムカつくが、そんなことはこの場に限ってどうでも良かった。
「違うんだよ、優斗。普通の企業とかから見ればね、十分すぎるくらいに人は足りてるんだ。ハイリターンを求めるギャンブラーのような奴らはこの国にうようよしてるからね。だけどそうじゃない。箱舟の騎士がね、
記憶がよみがえる。燃え盛るあの体育館の中で、僕を悍ましいと化け物を見るような視線で見ながら、見るのも嫌だと言った表情で見ていたようなあの女。
仮にあいつがここに現れ、偶然僕と紅里のコンディションが最高だったとしても、絶対に勝てる気がしない。あの余裕綽々とした態度を、少しだって崩せるような気はしないのだ。
「まあ、僕らは言っちゃなんだけど強いからね。何とか今まで続けてこられた。だけど、最近段々と僕らに振り当てられる依頼の難易度が上がってきているんだ。中には、本来なら百人ぐらいの人数で対処に当たらなければいけなかったものもある。だから、戦力の強化が直近の課題だったんだ」
「でも、それは第四大隊だけの話じゃないんですか?」
「僕ら第四大隊が数を増やしているのと同じように、箱舟の騎士だってどこから人を調達しているのかは知らないが、数を増やしているのさ。だから、他の大隊にもアレをばらまかないと、この国自体が不味い」
そこまで事態が深刻化しているとは思いもしなかった。国家存亡がかかっている程の薬、か。いやまてよ?その薬の実物、製造法方を盗むために来た?
「まあ、僕らとここのドリアは貧乏だから。一応、金策ってのも目的の内ではあるけど――――」
「ちょっと待ってください。そんなに重要な物、盗まれちゃったんですか?」
「あくまで想像の域を出ないけど、っておい!」
僕は経営棟の研究室に向かって勢いよく駆けだした。不法侵入だかそんな細かい事は気にしている暇はない。どうせ碌な防犯システムもないのだから自業自得だ。だから僕は躊躇なく走り抜けた。
あの時の僕は防犯システムが監視カメラだけだと思っていたらしい。
「へ?」
「あぁもう!だからあの時やめとけっつっといただろうが丹沢の野郎ッ!」
僕の足元がスッと消え去り、全身がフワッと浮く感覚に見舞われた。最後にこの感覚を味わったのは、あの井戸から落ちた時だっただろうか。
要するに、経営棟の廊下で僕は落とし穴にはまったという事だ。
現代社会の法律は監視カメラの設置は許していると思うが、落とし穴はどうなんだろうか?
「あ、ありがとうございます…」
「ここ、あの野郎共が趣味で作った仕掛けで溢れてるから。監視カメラがないイコール大丈夫とか思って入ったら死ぬよ?前に別の大隊が買い物しに来たらしいけど、そいつらでさえ『現代のダンジョン』『魔窟』『むしろ従業員がテロリストじゃね?』とここを評していたからな」
「お客さんに売る気あるんでしょうか?」
「殺す気ならあると思う」
違いないと笑いつつ、僕は隊長へ謝罪をする。
「さっき、急に駆けだしたりしてすみませんでした。襲われたってのもあって、情緒不安定だったりと言うか、気が立ってたっていうか。なんかその…すみません」
「いや、今のお前に話すような内容じゃなかったなとは僕も思ったよ。心配してくれたってのも分かったし。済まない」
隊長に謝らせてしまった。僕が悪いというのに隊長に謝らせたとなっては、颯斗に何といわれるか分かったもんじゃない。
「いえ、それより、僕が心配して損をしていたか、確認しに行きませんか?」
「そうだな。紗季を助けるためのキーアイテム二つ目、多分あると思うんだけどなぁ」
「…まさか、あの薬を僕に使うんじゃないでしょうね?」
「別に使っても構わないよ?多少言語中枢がぶっ壊れるだけで済むから」
「多少で済まないでしょうそれは!」
雑談と非常に手の込んでいるトラップをかわしながら、僕と隊長は遂に研究室に辿り着いた。まるで魔王が座る王座に辿りついたと言わんばかりの雰囲気ではあるが、魔王ではなくぼさぼさ髪の所長、王座ではなくゲーミングチェア(座り心地が相当良いとの事だからこれに違いない)だ。
現代版にしてもこれは酷すぎる。
「おーい、どうせ生きてるんだろ?丹沢―」
「あい?勿論生きてますけど、何か従業員が縛られて血でも塗られて人質にされるなんて事があったんですか?大変ですねぇ」
「あなたの方が被害、甚大ですけどね?」
え、そりゃ不味い、さぼれなくなっちまうじゃねえか。と呟く所長。本格的にこの世界から排除した方が良い気がしてきた。世の為人の為だ。
「というか、一部始終を見ていたなら何で助けなかったんですか!?僕らに伝えてもらえば、それで何か変わったかも――――」
「――――悪い方にね。アイツらが強硬手段に出ていたら、君たちの体は今頃銃弾で蜂の巣みたいになっていたかもしれない。それに、俺は優斗達に伝える事が出来なかった」
颯斗が捕まっていなければ、伝える事も考えたけど。と所長は付け加える。
「隊長、アレの事はもう話して?」
「全貌を話した」
「ッ?!…まあ良いでしょう。優斗も聞いているだろうけど、俺達は人間を超強化して代償に理性を失わせる、要するに全身のリミッターやら理性のタガやらを解除する、通称『BB』を開発しているんだ。だが、今回攻めて来た奴らは全く興味がないと言わんばかりに研究室には近寄らなかった。トラップ三昧な廊下には、偵察すらしてこなかった」
「良かった。じゃあ、『BB』は無事なのか」
無事です、と断言する所長。だがその言葉とは裏腹に、その表情は険しさを強調している。
「大連さん、優斗、見てください。これは俺が趣味で作った極小の監視ロボットから送られてきた映像です。あの灰色ガスマスク、どうもおかしくはありませんか?」
「最初から、紗季だけを狙っていた?」
「そう。あの場なら、まんまと罠に嵌った杏子ちゃんを殺す事だって難しくはないハズだった。紅里ちゃんですら茫然としていたんだから、妨害できる実力者はいなかったはずなんだ。それに、手紙の内容もカメラ越しに見させてもらったけど、第四大隊を殲滅したいんだったら、わざわざそんな所に呼び出さなくてもその場で全滅させる事は出来たはずだ」
これでまず、第四大隊を潰すという可能性は消えた。と語る所長。同時に、あいつの目的が第四大隊の殲滅だとしたら、出来ないという事は無かったという事実に恐怖する。
「だから、手紙通り本当に優斗だけと話がしたいって事なんだろうね」
「は…?そんな一個人に拘るような馬鹿な事を、組織の中でやる間抜けがいるわけ」
「それがなぁ、いるんだよ。でしょ?大連さん?」
苦々しそうな顔で、隊長は頷いた。
「敵は恐らく首魁もある程度自由にさせなければいけない程の権力者、又は実力者だ。だから、お前はそいつに偶然気に入られたか、それとも紅里の力目当てか、だろうな。どうせそんなもんだろ」
「箱舟の騎士がそんな事を…?でも、奴らの目的は生物の繁栄だかそんなんだった気が」
「その途中で邪魔になる奴らを皆殺しにするために、ついでに体の良い実験体を手に入れるために夢中症候群に対して門戸を広く受け入れているのさ。戦力として君は申し分ないどころか、完璧すぎるぐらいだからね。人型は総じて強いのさ」
滅茶苦茶にも程がある理由だ。だが、そのせいで紗季は連れ去られ、姉さんは心に大きなダメージを加えられた。
全部、僕のせいなんだろうか?
「あ、自分のせいとか思って図に乗るのだけはやめてくれよ?俺は最強系主人公の次にそういう奴が嫌いなんだ」
「…はい?」
「災害に孤立無援な状況で一人で立ち向かうなんてバカな真似をして、それで一人も救えなかったなんてのは当然の結果だ。だが、それで一人でも救えたかもしれないと思って自分のせいにしてうだうだしてる奴が俺は大嫌いなんだ。それは自分のせいでもなんでもなく、そうさせた環境のせいだと言うのにな。この場合はあのガスマスクか。今回は運がよかったな。災害ならば鬱憤をぶつける場所は無いが、相手は人間だ。存分にいたぶって殺してしまえ」
どちらかと言えば危険思想だし、「もちろんそうだ」と胸を張って言えるぐらい完全に賛同できるかと言われれば無理な話ではあるが、心が軽くなった気はした。
「でも、僕はそんな殺せるだけの力はありませんよ?紅里しかいない僕にどうやってスーパーパワー的なものを授かれって言うんですか?」
「ふっふっふぅー。俺が優斗に一部始終を伝えられなかった原因はガスマスクに対する考察なんかじゃない。ぶっちゃけ言ってそれはおまけ程度しか時間を割いてない」
所長がニタリと笑う。隊長の表情がピキリと凍る。
「おい…まさか、『魔術師』のロックを解除してたのか?!」
「そうですとも。優斗君ぐらいしか使いこなせるぐらいの
「まさかそれは、
「勿論」
隊長の目が一瞬にして血走り、拳が上まで上がりかけた。その威圧感だけで物理的な重さを感じ、ドアさせ軋んだ気がする。
だがその怒りの形相が僕に一瞬向くと、静かにその威圧感は縮んでいった。
「あ、あのー。さっきから良く分からないワードが連発されて、状況に全く追いつけてないんですけど」
「そうそう、そうだよねぇ優斗君。どうですか、大連さん。俺的にはかなり見せたいんですけど」
「…良いよ。ただし、それを渡させるかどうかはまた別の話だぞ、丹沢」
「了解」
そう言いながらも、目が喜色に染まりつつある所長は、突然這い蹲って床を取り外すと、中から巨大な箱を取り出した。
「いぃぃぃぃぃぃっよっこらっせぇええええええええ!っと、と。よし、これだよ、これ」
化け物のような声を上げながらも取り出した、その金属製のいかにもごつい箱に掛けられている錠やパスワードや寄木細工のようなギミック合わせて数十種類。
床下に取り出す前から大量の錠やら計算用紙やらが転がっているから、伝える時間をこれを解除する時間に当てていたと、その呆れる程の情熱と、その恐ろしい執着が垣間見えた。
「よいせぇ、ほら、見てくださいよ」
「…?」
「チッ…」
三者三様の反応を示しながらも、丹沢さんは解説する。
「これこそが、現代の魔術師が作り上げた正真正銘本物の、『魔術』です!」
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