ようこそ!第四大隊!
それから僕らは乗せてもらっている荷物を軽トラから引きずり下ろし(何故か生きている年数は僕の方が圧倒的に多いハズなのに紅里の方が荷物が多い)、『特務課夢喰い 第四大隊
「ま、本部って言ってもここしか無いけどね。他の大隊が支部沢山あるから、こっちも本部とか支部とか付けなきゃいけないんだよ。こんなの血税の無駄なのに、なぁ?」
「それは、ちょっぴりはここの人数が少ないのが悪いのでは…?」
「…ま、そうだよね」
大連さんは一瞬暗い顔をすると、直ぐに元の表情に顔を戻し、楽しそうに言った。
「君たちは、これから僕は勿論だけど、
「姉弟って事は、あの時病院にいた
「口調をどうにか出来ないかとは思うけど、まあそうだよ。杏子が姉だ」
もう少しお淑やかさを持ってくれれば僕も少しは落ち着くんだけどね、とポロリと零している大連さんだった。勿論、それは紅里にも向けて言ってますよね?
「さ、ここが君らの部屋だ。相部屋となってしまうのは申し訳ない。だけど、この建物自体は普通の一軒家ぐらいの広さで、危険物をポンポン置いてある部屋もあるから、ベッドとかが置ける部屋がここしか残っていなかったんだ」
「つ、つまり、僕は
「ごめん、こればかりはどうしようもならなかったんだ。あと、同棲って言い方は間違ってるかも「間違ってるわぁけないじゃないっすか、隊長?」…そ、そうかもね。夢咲君、言葉は、よく意味を調べてから使おう」
何を言っているんだ?同棲って言葉に、人を責める意味合いってあったっけかな?だとしたら誤っておこう。それにしても、紅里の奴、何でさっきからニタニタしてるんだ?
この後、僕は同棲という言葉の意味を調べてみた。
「へ~っと?ふーん、へー。はー。よし。こ〇す」
『同棲』とは…結婚していないカップルが2人で暮らすことである。
僕は、出来るだけ性の多様性に寛容なつもりだが、我が身に降りかかる事となれば話は違ってくる。人間、誰しもそんなもんだろう。近親相姦(?)は御免です。
第一、紅里が言うんだから茶化してるんだろあいつ絶対!
翌日、起こしに来た大連さんによって、僕の部屋の天井に亀甲縛りで猿轡を咬まされている変な女が発見された。いやぁ~、誰がそんな酷い事をしたんだろうなぁ?
その日の朝食時、白い目線がずっと降り注いできたのは言うまでも無かった。
時間軸を何処かの回想から引き戻し、僕はニタニタしている紅里を傍目に、嫌々相部屋の中に荷物を運びこんでいた。
「ベッドとかが置ける部屋がここしか残っていなかった」という言葉の割にはこの部屋は大きく、中学生二人(?)の荷物も難なく入った。まあ、僕自分の部屋持ってなかったし、モノの収集癖があったわけでもないから、荷物が少ないのは必然なんだけれども。
「やふぅ!はぁ、働いた後の体にこのベッドの柔らかさと来たら、あ、マスター。ちょっとばかし私寝てても良いですかね?ここで寝ないのはこのベッドに対して失礼な気がするんですよ」
「お前ベッドが素晴らしい云々よりも、自分が寝たいってだけなのは分かり切ってるんだよ!」
「マスター、私もそう言うだろうとは分かり切っていましたよ!私は
「そんなモノ後継すんな!てか弟子入りさせた覚えはない!」
折角僕が脱却した引きニートに、僕のリアル半身である紅里がなってしまったら意味がない。引きニートは何時まで経っても引きニートという理論が提唱されてしまう。
「で、紅里。お前頼むから最初から失礼な事は言わないでくれよ?僕は四人しかいないグループの中で、しかも一年間近く疎外感丸出しで生きていくのは無理なんだ」
「…それ、フリですよね?」
「それを振りだと思うのなら芸能界にお前は行け」
僕は、そんな事をわざわざ振るような人間じゃない。というか、それが本当に振りなんだとしたら僕はどんなドⅯなんだよ。人間との交流が極度に少なかった僕でも、流石に寂しいわ。
荷物を部屋に搬入し終えると、僕らは大連さんから「終わったら来るように」と言われていた部屋に行くことにした。
歩いている途中ふと気づいたが、ここは建物の大きさの割には人口密度が低いせいか、来た時から生活音が全くと言っていい程届かない。それとも、単純に今出かけていたり、寝ているだけか?
「なあ、ここ凄い静かじゃないか?紅里。月花姉弟は大連さんの口ぶり的に、居ると思うんだけどな」
「いや、マスター。いませんね。私にはこの建物の中にある気配が読めます。もしかしたら、あの『箱舟の騎士』とやらに攫われているのかもしれません」
何だって?!あの糞共が、ゴキブリみたいに僕らの周りに集まりやがって。僕らはゴキブリホイホイじゃないんだぞ?!
僕は大連さんにこの事態を知らせるべく階段を走り、三階の部屋まで上がろうとするが、三階にまで駆け上がりドアに触れた瞬間気づいた。
「…あれ、僕、騙されてないか?あいつって、超人的な身体能力と防御力と攻撃力以外何の取り柄も無かったハズ。気配察知なんて出来たっけ…?」
「あ、マスター。ぷっははハハハハハハハハハ!い、今気づいたんですか!あともう少しで、あの時の振りが叶えられたのにぃいいいい!面白く、無いマスターで、ですねっはハハハハハハハ!」
考え込む僕の後ろで、ゆっくりと余裕を持った感じで紅里が登ってきた挙句、自分の主人に指を指して爆笑し始めた。面白くないっつってる割には笑ってんなお前。
とりあえずこいつは許さんが、そんな下らないことで大連さんを待たせていては申し訳が無い。僕が指定された部屋のドアノブを握った瞬間、僕に首根っこを掴まれている紅里が暴れ始めた。自ら罪を増やしに行くとは愚かだな。
「ちょ、ちょっと待って。なんかこの扉の向こう側から、マスターに聞こえないぐらいちっちゃいけど、刃物っぽい金属が掠れてる音がする。この扉開けない方が良いよ。さ、さっきは悪かったからさ?偶にはさ、私の言葉も信じてみたり…してくれません?」
「そんな上目遣いで堕とせると思ってるんだったら、僕も落ちたもんだな。お前、オオカミ少年って知ってるのか?」
オオカミ少年と言えば、日本でも有名なあの
まあ、僕はそんなに嘘つきを信用出来る程お人よしではないから、紅里の言葉はスルっと無視して扉を開けた。
「召喚間に合えぇえええええ!」
「おい何を?!」
開けた瞬間紅里の目が紅に輝き、胸から血色の煙を噴出させ、その中からあの刃を取り出した。今見ても、ゾッとするぐらいの美しさだが、今はそんな場合ではない。
ドア枠ごと地面を叩きっ切ろうとしているのだから。
「勘違いはやめてそれをしま――」
――――ガッキィイイイイイイイイン!
うん?何が起きた?僕は果たして夢でも見ているのか?あ、そうか。こいつも夢だったっけか。あはははは…ついに僕も狂ったか。
でもおかしい。何で、引き入れてくれた当人である大連さんもそこにいるというのに、
そんな「あぁ、これくらい普通だから」みたいな目で見んな!
僕がボケっとしている内にも、殺意は膨らみ歯軋りは聞こえ、更には鉄がバキバキと鳴る異音まで聞こえてきた。最初の二つはともかく、最後のは人間やめてないか?というか、紅里と力勝負で何で渡り合えているんだ?
「うぉおらぁあああああああああ!」
「ぐるるるぅうううああああああああああ!」
性別の壁を超えるかの様に強烈な声の咆哮を放つ紅里と、獣のような咆哮を上げた影は、そのまま後ろに飛びのいた。
共々、特に外傷などは無さそうだ。
「紅里!大丈夫か?!」
「ほら!私の、言葉!信じたほうが良かったでしょう?!」
「それとこれとは話が別だ!それより、ありゃ何なんだよ!」
「マスターの首元狙ってたっぽいので防ぐのに夢中だったんですけど、なんか武器使ってる割には、手で振っている感じじゃないような気がしたんですよね」
手で振っている感じじゃない?じゃあなんだ、あの三刀流の剣士が如く、口で凶器を操っているとでも言うのか?
まさかとは思いながら、先ほどの影が消えて行った方向を見て、絶句した。
「お、狼…?」
「ま、まるで某モンスターをハントするゲームの相棒みたいですね…」
「それはちょっと違う気がするが、言われてみればそうかもな…」
僕らの目に映ったのは、人ほどの大きさの
「マスターの首を狙ってたのって猟〇具だったんですかー。なるほど、道理で人の腕では出せない力が出せていたと思いましたよ」
「お前空気読んでる?もうちょいシリアスに行こうぜ?」
僕が一番シリアスじゃないのかもしれない。何故かって、僕らが話している内にどんどん狼が殺気立っていくからだ。
「ぐぅううらああああああああああああ!」
「黙ってろぉおいやぁああああああああああああああ!」
――――キィイイイイイイイイイイイイン!バキィイン!
あ、紅里の力に狼の方は目血走らせながら耐えてたけれど、猟〇具の方は耐えきれなかったみたいだ。火花と共に刃から凄まじい破砕音がし、その反動で下に下がった頭を紅里は刀を放り投げてにぎっと掴むと、大連さんの方までぶん投げた。
「おい大連さんに何を?!」
「いや、多分あれ『箱舟の騎士』じゃない。『箱舟の騎士』だったらもっと良い装備とか持ってるはずだし、そもそも大連さんが直ぐに鎮圧してると思う。何より、殺気は猟〇具に乗ってたけど殺そうとまではしてなさそうだったよ…私の見立てではね?」
「保険掛けるなよ…」
そうか、でも大連さんに投げていい道理はないだろう!と、というか、あれってもしかしてワンチャン、月花姉弟の弟さんの方なのではないだろうか。いや、でもそれならいきなり人に襲い掛かったり――――
「いや、驚いちゃったかな?この子は
もう僕疲れた。突るって、上から目線で口論したり、胸倉掴んで唾吐くぐらいの事じゃないの?年下にそれをやられるのも相当ショックだけど、殺されかけるのはもっとショックなんだが。
それ以前に、紅里いなければ僕普通に死んでたし。
「ぐるるるぅあああああっぐぐぐん」
「ほらほら落ち着いて、颯斗、杏子姉ちゃんに嫌われるぞ?」
――――しゅるるるううう
大連さんが頭を一撫ですると、狼の黒体から燃えるように煙のような何かが噴出し、煙の中心から紅里よりも小さい少年が現れた。…のは別に良いのだが、そんな家畜を見るような目を向けんでも良いのでは?
「今は隊長が停止命令を下したから止まったまでだが、我がこのまま戦っていれば貴様らなんぞ一瞬にして蹴散らしてやるからな。精々隊長に感謝しておけ」
「颯斗は結構人見知りだからツンツンしちゃってるけど、まあ慣れればデレてくれるハズだから、長い目で見てくれよ」
訂正しよう、僕はかつて、友田の事を最近のラノベの主人公と言った。だが、真の主人公はここにいた。
こんな問題児をツンデレとかって言える時点で主人公やろがーい!
「あ、颯斗。ちょっと杏子姉ちゃん呼んできてくれないか?ベッドの中に引きこもってたら『可愛い女の子が入隊したよー』とでも言ってくれ」
「了解です、隊長」
そういうはやちゃん…颯斗君は、口調こそは堅いモノの、先ほどのような血も涙もないような鉄仮面を被ったような顔つきではなく、年相応の少年らしい表情だった。僕らにもそんな表情を見せてくれないかなぁ?
「ありがと颯斗~。あ、一応杏子とは面識があったんだよね?今の二の舞になるかもだから、ドアの動向に注意してね。…無駄か」
「紅里、その刀をすぐさま構えなおせ。今この空間では僕らは一心同体だ、お前の刀以外頼りになるものが無い!」
「お前以外頼りにならない…嬉しいこと言ってくれるじゃないですか」
「都合が良いように抜き出して改変するんじゃない!」
閑話休題、僕らの命は危機に晒されている。一分一秒が何時間何十分にも感じられ、目の神経は扉の微細な動きも確認しようと、全力で稼働した。
結局永遠にまで感じられてしまった時間が過ぎ、つまらないせいか船を漕ぎ始めた紅里を起こそうとした、その時だった。
「どっせいぃいいやぁあああああああああ!入隊した可愛い女の子とやらは何処だぁあああああああ!」
「私ですヨ!」
「萌えたぁあああああああああ!」
扉の影から突然、絶叫(?)と共に人影が飛び出し、類似の解答が存在しない質問を抜かしてきた。そして、目が飛び出そうなくらい驚いてる(これが普通の反応なハズ)僕を置いて、紅里がピース付きの満面の笑みで応じた。
そしたら
「そこで今悶えてるのが杏子、
「今の話と現実で安心できる要素、一つもありましたかね?」
そうだよなぁ?という意味を視線に
つまり、こいつも駄目だった。ここに僕の味方は居ないのか!いなかった!以上!
「隊長!杏子姉ちゃんが突然
「そこに寝っ転がってるよ。あ、彼らのせいじゃ…」
「ぶっ殺してやんよクソガキ共がぁあああああああ!」
キャラ崩壊にも程があるんじゃないのか?さっきまで偉そうだったけど、姉の事になった瞬間キレたなコイツ。シスコンは良いが僕らに殺意の矛先を向けるんじゃない!小学校でそう習わなかったのか!?
あとクソガキは僕らじゃなくてお前だよ!
「ボケっとしてないで猟〇具を撃退しろー!」
「…可愛い(ぼそっ)」
「エ?!」
どうやら紅里はブラコン、いや、ショタコンという新たな門を開門しちゃったっぽい。笑う門には福来るというけれど、ショタコンの門には何が来るのだろうか。やはりショタコンだろうか?
「はいはい、颯斗落ち着いて。あと杏子起きてるだろ?今から自己紹介をするのにそんな醜態を晒してていいのか?」
「ハッ、私は作戦室、ここは杏子?いや、そんな事よりあの女の子にお姉ちゃんと呼んで欲しい…!誰か威厳をくれ…!」
流石の信頼性というか何というか、大連さんは片手で狼に変身しきった颯斗君を止め、脳内フラワーガーデン状態に陥っていた杏子さんを呼び戻した。
杏子さん、もう倒れてるんだしさ、威厳の獲得は諦めようよ。幸福の液体が鼻から若干出てるし。
「じゃあメンバーも揃った事だし、改めて自己紹介と行こうじゃないか。じゃあ、まず僕から行こう。僕は第四大隊隊長、
大連さん――いや、隊長は、まあ凄いらしい。この国に十個しかない大隊の内の一つを、たった一人で作り上げたというのなら、確かにそれは偉業だろう。
しかし何故だろう、隊長の顔には、僅かな自嘲の色が見られた。
「では次は我がしよう。我が名は
…何というか、自覚もある重度のシスコンという事は分かった。ただでさえ我口調が謎なのに、そこに急に姉ちゃん入るし。
「じゃあ次は私か。第四大隊隊員、
「姉ちゃん目当てならこの場を借りて貴様を塵も残さずぶっ殺してやる」
ありもしない冤罪を掛けられて、ほぼ初対面の推定小学校高学年からぶっ殺す宣言された僕の気持ちを理解してくれる人は幾人ほどいるのだろうか。いたら直ぐに来て欲しい。この悲しみを共有しようじゃないか。
「いや、この子達に厄介な困りごとがあってね。そこで僕が彼らを拾い上げたって訳さ」
「いや、そんな猫でも拾う感覚で隊員持ってこられても…というか、第一彼ら、
「勿論。僕が自らの手で拾い上げたから、何者の干渉も受けていないよ。それに、あの時の『ゲヴェーア』も、彼らは共々自爆したとでも思っているんだろう。紅里は発生したてにしては相当強い『夢』だったからね」
僕から生まれた夢は、夢という分類の中でもかなり上位の強さを持っているらしい。それこそ、使い方をミスったら主人ごと吹っ飛んでもおかしくないと思われてしまう程に。
…思われてしまう、じゃなくて、もう僕手遅れだったんだった。
「そうですか…。って、何気に聞き逃しましたけど!そこの『可愛い女の子』は!まさか夢なんですか?!」
「うん。そだよ」
「私の時代キタァアアアアアアアアアア!」
膝でスライディングして扉にぶち当たって、そのまま後ろに満面の笑みでバサッと倒れてしまった。この時点で僕はこの大隊についていける気ゼロである。
「杏子、颯斗は同年代の子と喋れる機会が殆どなくてね。つっけんどんな態度を取られても、出来れば見捨てないでくれ。お願いだよ」
倒れる事本日二回目の杏子さんを見ながら、隊長は柔和な笑みを何処かに浮かべ、静かな愛情が強かに伝わるように語った。いくらカオスで杏子さんの体勢が面白すぎて笑いそうになっても、その思いが自然と思考回路を冷静にしていく。
シスコンの極寒の殺気が肌を撫でてるしね!
「…まぁ、そうは言っても、杏子はただ妹みたいな存在が欲しかっただけ「妹を欲しがって、何が悪いのよぉ!」…ひ、否定はしてないから。ね?」
「…一応、紅里って僕の半身なんですけどね」
本体の僕じゃなくて、あくまで半身の紅里の方が注目を浴びているのは何故だ?
「ほら、杏子は起き上がって!じゃあ、次は優斗君、君に決めた!」
「僕は某ポケットなモンスターじゃないんですけどね…。僕は
コミュ障カンストが頑張った結果、これでした。まあまあの出来だとは思わないか?初対面の人にはなるべく敬語とかを使った方がええと聞いたことがある。
「はい、優斗君?だっけ。その他人行儀な話し方やめてくんないかな?この大隊はさ、家族なわけよ?君も早くこの家族に馴染んでくれないと、困るのは私達の方なんだよ?」
「杏子、そこまで言う必要は――」
「たいちょーは黙ってて。良い?この中では、ちょっと生意気ぐらいがちょうどいいんだよ。ここは会社じゃないんだから、そこらへんちゃんとしよっか」
反論なんて一ミリも出なかった。バカか、僕は。散々第四大隊は家族みたいなもんだって言われてたのに、何で会社の入社みたいにしたんだよ。自分の頭がここまでポンコツだったとは。
「分かりました、じゃなくて、分かった。これぐらいが丁度良い?」
「そうそう、私もそんなに要求するつもりはないから、自分の距離感を見つけて頂戴」
「僕は、僕なりのやり方でここを生きていく」
「その意気や良し。じゃあ、最後に君の夢行こうか」
僕が勇気を振り絞り、小説だったらいい感じの雰囲気だったのに、杏子さん――いや、姉さんで良いか――が、最初から僕など視界になかったとばかりに紅里の方を向いた。
少し悲しくなってきた。
「はい!私は
「妹になってください何でもするのでどうか私の願いを聞き入れてくださいせめて一考ぐらいでもしてくださいというか一回だけでも良いからお姉ちゃんって言ってくれたら嬉しさで三年は働けるので――」
「お姉ちゃん♡」
「ぐぼぉぁ」
僕の足元に転がっているこの人は、本当に先ほどの僕の気持ちを叩きなおしてくれた本人なのだろうか?信じたくないし、信じられない。
人間は良い面だけを人前で出そうとするんじゃないのか。せめてちょっとだけでもそういう努力をしてぇ!
「さ、さて、これで全員の自己紹介も終わったね。じゃあこの後は各自解散――――」
――――ぴろろろろーぴろろろろー
突然部屋に響いた着信音に驚き、全員が反射的に音源を探した。そして、視線が集まったのは隊長のポッケだ。
「あーもしもし。あ、その節はお世話になりました。…アレ完成したんですか!ありがとうございます、翌日で良ければ受け取りに向かいますが…。はい、わかりました。ありがとうございました」
隊長は通話を切ると、ニィっとかっこよさと悪戯小僧のような気配が混じった笑みを浮かべた。
「みんな、
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