彼女の正体

「改めて言っちゃうと、その子、君のだよ」


 全く意味が分からん。僕、こんなの世界に産み落す願望持っていたか?と思いながら横を見ると、未だに大連さんの視線の恐怖で固まっている彼女が見えた。

 …自分の深層心理がこれってなったら、嫌になってきた。


「何処に、彼女が僕の夢中症候群だという証拠があるんですか?」

「いやだなマスター、最初から私たちは繋がって…」

「余計な口出すなてか囀るな下僕」

「…?!」


 彼女の口を閉じる必要性が出てきた。それも、物理的に。口封じだなんて物騒な事をする奴の気持ちが痛いほど分かった。煩いんだな。


「君と仲が良い「違いますヨ?」、訂正しよう、とても将来有望な仲でありそうな彼女が、君の夢中症候群と言ったのは決して当てずっぽうなどではなく、ちゃんと根拠がある」

「それは、どんな?」

「まず、彼女の過去が何処を探しても見つからない。出身、名前、年齢、住所と人を知る上で基礎的な事はあらかた調べたが、彼女にはその一切の記録が存在しない。これも十分不自然だが、彼女の並外れた戦闘能力もそうだ。彼女が仮にどこかの組織や国のスパイだったのなら納得だが、逆に何故こんな重要人物がいるのでもなく、重要な物があるわけでもない所で目立った動きをするのかという部分で不自然さが生まれる。よって、状況証拠も踏まえると君なんじゃないか、という結論に至った」

「僕じゃなくて友田って可能性は無かったんですか?」

「それはね…」


 大連さんは痛ましそうに、いつの間にか隣に現れていた杏子さんと視線を交わし、辛そうに言った。


「生きている夢中症候群、夢中症候群の能力、特に生物に近いモノは『夢』と呼ばれるのだが、その夢が怪我をしたりするとどうなるか分かるかい?」

「え?生きているんだから自然治癒して治るんじゃ」

「違うんだよ。生きているといっても、夢なんだから、のさ。それこそ、夢中症候群そのものが変わらない限りは」


 …なんとも曖昧な説明だな。でも、専門家(?)っぽいし、これが真実に最も近い答えなのだろう。


「だから、。その、生物としてあるまじき現象を回避するために、夢は自らと一番近い存在である主の血と肉を喰らい、体を生物のモノで修復するのさ」


 血と肉を喰らう?つまり捕食されるという事か?どれくらいどこの何を喰われてしまうのかは気になるけど、このくだりが何故僕が夢中症候群だという話になるんだ?


「君の首の傷、咬まれた跡があるんだよね。それも、人の歯に近いモノに咬まれた跡が」

「え、いやそんな馬鹿な。偶然気絶した後に瓦礫とかで傷ついただけですよ。――あれ?僕はなんで気絶したんだっけ?」

「夢咲君、それは、喰われたショックと失血で気絶したんだよ。それに対して、その場にいたもう一人の容疑者である友田君は、ショックで記憶の欠落があるものの、瓦礫で出来た掠り傷しか見られない。つまり、そういう事なんだよ」

「君は、夢中症候群なんだ」


 …ここまで証拠を並べられたら、認めるほかないか。

 多分の諦めを込めて横を見ると、ドヤ顔でこっちを見ている彼女がいた。

 凄い認めたくねぇ。僕から、こんなのが生まれるとは。コミュ障をどう再構成したらこれが出てくるんだよ。


「急に言われても訳が分からないので聞いときますが、夢中症候群って結局何なんですか?憧れとか思いが形になったて感じだけって僕は思っていますが」

「間違ってはいないけど、それがどう形として現れるのかに違いがあるね。まあ、それ以外はその認識であってるけど。もっと詳しく知りたいんだったら、、精神科の先生に聞いた方が良いね」


 ちょっと待て大連さんも夢中症候群だったの?僕とか間宮のあん畜生みたいに形に現れていないけど、何処に現れているんだ?

 僕が画面の向こう側に何かないかと目を光らせていると、大連さんが苦笑しながら言った。


「私の場合は肉体強化だからな。目に見える形では現れないよ。あ、ちなみに、『特務課夢喰い』第四大隊は全員夢中症候群だからね。困ったことがあったら気兼ねなく聞いてくれ」


 じゃあ、杏子さんも夢中症候群だったって事か。あの時、出会ったのが病院でなかったのなら僕は普通に犯罪者扱いされて捕まっていただろう。

 …そういう意味だったら、気絶して病院に連れてかれたのも運が良かった、のか?

 ただし、馬耳東風とばかりに船をこぎながら大連さんの話を聞いている彼女を、いちいち起こして礼をする必要性を感じたわけではないが。


「では、私はこれぐらいで失礼するよ。何か困った事があったりしたら、聞いてきたりして良いからね」

「あの!…僕が、『特務課夢喰い』に入るのって、出来るんですか?」


 は?僕は今、何を言った?何でそんな馬鹿な事を言った?心は茫然、顔は真剣そのものというばかりに表情筋が張っている気がする。

 ネタに走る余裕も無いのは何時ぶりだろうか。頭のすみっこでこんな事を考えていた僕は、バカだろうか。バカだな。


「まあ、この組織自体があんまり表に出ることは無いし、年齢を変えてもあんまりバレないから大丈夫には大丈夫だろうけど」


 なんだ、「労働基準法に反しているので駄目です」とか言われるかと思ったけど、意外と大丈夫じゃないか。


 ――――入っちゃえよ、マスター。どうせ、このまま生きていたってゆっくりと死に絶えるだけだろ?違うか?


 心に響くこの声が僕の意志なのだとしたら、まさにその通りだ。僕だって、少しは他人の役に――――


以上だよ」

「…?!…はい」


 身が竦むような重い言葉で、目が醒めた。何が大丈夫だ、そんな軽い気持ちで入れるハズが無いだろ。本当に、バカか。僕は僕に対して失望した。初めてだった。ここまで、自分が救えないような考えを抱いていたのは。


 でも、あの声はなんだった?頭に響いたあの声は、僕のモノではない。高い、女性の声だった気がする。

 まさかと思って隣を見るが、彼女は小舟から豪華客船に乗り換え、最初言ったにも関わらず僕の腹を枕代わりに居心地がよさげに寝ている。

 こんなのに唆されたんだとしたら、割と僕の生涯の汚点だな。


 ところで、僕はどうすればよいのだろうか。腹の上には爆睡中の彼女がいるわ、四肢は拘束されているわで、身動きが取れないのだが。

 特にやる事も無いので、思い返せばよく見なかった彼女の顔でも見てみる事にした。僕はロリコンではない。同年代未満は僕の守備範囲外だ。


 純日本人にして日本人好きな僕の願望にしては、彼女は吸い込まれるかのような紅の眼を持っていて、髪は日本人が少し混じっているのか、赤黒く、しかし血とは違う艶やかさを持っている色となっていた。

 身長は、流石に越されていないが、ほぼ誤差みたいなものとなっている。…僕の血肉喰って、伸びたりしないよな?身長。

 肌は白くもなく黒くもなく、まあ日本人らしい黄色人種のようだ。黄色人種と言っても、どうやら日本人の肌は意識の上では白人よりも白いらしいが、それに当たっている。

 顔の造形は…普通の美少女といった感じ?特別凄いというわけではないが、普通ではないですって感じがする。髪と瞳だけで察せられるけどね。


 これ以上じろじろ見ていると見惚れそう(ぼーっとしてるだけ)だから、僕は何故こんなにもあっさり彼女を受け入れたのか考えてみた。

 僕から生まれたっていう事実だけで、彼女の存在に相当な違和感があるだろうし、あんな力も持っていたら、怖くなってしまうのも仕方ないハズなんだけれどもね。

 そもそも、僕は彼女に喰われてこの病院にいるわけだし。


「命の恩人、か」


 なんか僕の布団に涎まで垂らし始めた彼女の横顔を見ていると忘れそうになるが、僕は命を一回だけ奪われそうになっただけで、その前に何度も命を救われているのだ。

 彼女がいなかったら、余裕で数千回は死ねた自信がある。火の玉とか喰らった時点でもう即死だろ。

 戦闘という極限状況だから、自然と心を許せたのか。それとも、例えではなく僕の半身だからだろうか。考える内に、理由なんて要らない気がしてきた。まあ、友田のほかに気を許せそうな奴が一人増えた、とでも考えて置こう。


 あまりに衝撃的な事実が立て続けに襲い掛かってきた疲労もあるのか、僕の瞼は本日二度目の筋肉の休息をしようとしていた。つまり、眠くなった。


 小説とかだったらこんな序盤に何回寝てんだよ、せめて一回ぐらいにしとけや、寝ぼけてんのか、とでもなりそうだがここは現実だ。ちょっと間が長い二度寝なんて、珍しいものでもないだろう。


 …何に対して弁解してるのだろうか、僕は。そして序盤って事はこの後さらに大惨事になんのかよ自分で不吉な事思うなよ、と最後に一人虚しいツッコミをすると、僕はするっと眠りについた。


 …あれ?彼女って、どんな扱いになってんだ?


 ~~~~


 僕は一人っ子で、両親と三人で暮らしている。親は引きこもりの僕を無理に引っ張り出すような事はせず、優しく見守ってくれている。

 現在進行形で親に迷惑をかけている僕が言うのもなんだが、違うな、それだから言えるのか。僕の両親は本当に良い人たちだ。

 だからこそ、これからは出来るだけ迷惑を掛けず、平和に暮らしてほしいと思っていた。


「お前何で僕と双子って設定になってるんだよ!おかしいだろ!僕、両親しか肉親いないはずだぞ!てかどうやって戸籍いじったんだよ!」

「そんなに暴れないでくださいよマスター。私が日本国民として生きていく為には、これ戸籍が必要だったんですよ」


 にやりと笑ってみせた彼女だが、こちらは全く嬉しくない。せめて、孤児院からの養子とかにならなかったのか…?


「もちろん、この戸籍はマスターの携帯を弄って大連さんから手に入れましたよ?いやぁ、マスターが都合よくまた三日も寝てくれて助かりましたよ。これで連絡取り放題ですよ」

「おまえッ…!?」


 マスターとは言っているが、僕に対しての忠誠心は路傍の石以下だよなコイツ。しかも、何で僕の携帯のロック解除出来てんだよ。


「双子って設定も凄い役に立ちますね。マスターの携帯使っても病院に毎日通っても全然不審がられないし、むしろ私が哀れっぽいおかげでなんかくれますし」

「お前貰った人たちに今すぐ土下座しに行け。じゃないと僕の善の心が持たない」

「フッ、マスター。哀れみって感情は、優越感から感じるんでっせ?」


 哀れんでないし優越感に浸ってるのはどう考えてもお前だろ、って喉元まで上がってきた言葉をどうにかして呑み込み、僕は何とかして聞いた。


「僕が寝てた二日間、何があった?」

「フフフ、そんなに知りたいですかマスター?なら、まず…」


 これの要求に従ったが最後調子に乗って何が起こるか分かったものじゃない。なので、先手必勝とばかりに手首を握る、握りつぶす。ごきごきと音が聞こえてくるが、そんなものは僕の耳に入らない。


「す、すみませんでしたマスターだからそれだけはァアアアアアアアアアア?!」

「大人しく、吐け。事の詳細を、細かく、丁寧に、つまびらかにしろ。次は無い」


 朝から、口封じだとか物騒な事しか思っていない気がするな…


 彼女による(情報怪しめ)と、彼女は僕の双子の片割れという戸籍を大連さん主導の元捏造したらしい。そして、僕が寝ている間に両親の所に顔見せに行き、『特務課夢喰い』の人達と事情を説明してくれたとの事だ。

 本人不在の中、よくそんな事が出来るなと思ったが、両親はすでに僕が病院にいるのは気絶した当日から知っていて、双方の都合上会えるのが僕の寝ている日と被ったという事だ。


「…誰かの陰謀を感じる。それに、『特務課夢喰い』便利アイテムみたいに思ってないか?ところで、聞いたところで変える気はしないけど、お前の名前って何なの?」

「お、ようやく聞きましたかマスター。実は私、マスターの名前が夢咲優斗だという事は記憶的に知ってましたけど、私自身の名前はわかんない、というか無いんですよねー。あ、苗字は夢咲で確定ですよ?これでもマスターの家族という設定なので」


 戸籍上で家族ってなっちゃってるんだから、設定も何もないだろ。それはそうと、名前が無いのにどうやって戸籍を作ったんだ?


「今は、夢咲紅里ゆめさきあかりって名前になってるヨ。一応、マスターの両親に命名権があるからね。名前に、なんか特別なこだわりでもなければ別にこれで良いとは思うんですけど、どうですかねマスター?」

「人との関りがほぼ皆無だった僕にネーミングセンス求めるのは酷だと思う。それに、一回決められた名前にケチ付けんのはただのキモイ奴なので」


 生みの親(?)は一応僕だが、特に産みの苦しみを味わったわけでもない(首喰われて死にかけたが)ので、正直言って名付け親は僕じゃなくていい。というか、名づけなんて重責が掛かるもの引きこもりニートの僕に任せないでくれないか?センスないんだよ。


「じゃあ、僕はお前を紅里って呼べばいいのか?双子って事だし」

「良いでっせマスター、ぐへへへへ、お前って呼ばれるより気分が良いぜ」


 お前――紅里は、調子に乗らせたらダメな奴だ。あんまりハイテンションな人がいない僕の家族に適応できるのか心配だが、陰キャと違って陽キャは大抵の場面に適応できるのだろう。

 隣で幸せそうにニタついてるこいつ紅里を見てると、そんな心配も別にどうでも良くなってくる。諦めともいうが。


「そういえば、紅里って精神年齢はともかく、肉体年齢ってどのくらいなんだ?」

「ぴっちぴちの新鮮な13歳ですよ?まあぴっちぴちは盛ったにしても、この体はマスターの体を参考にして作られてるんで、精神はともかく体は13歳なハズですよ?何なら触って確かめてみますか?」

「じゃあ喜んで、なんて言うと一瞬でも思ったか。僕はラキスケでもない限り不名誉な称号を賜る可能性がある行為はしないんだよ!」


 僕と同年代か。でも、自分から生まれてきたから、僕の守備範囲外かな。あれ?でも、13歳って戸籍にも書かれてるんなら、義務教育の範囲だから学校行かなきゃダメじゃないか?


「お前、戸籍に何歳って書いたんだ?」

「あ、そういえば戸籍なんてものもあったね。確か…大連さんが「夢咲君が元なんだから、同年代でいいよね」って感じでぼそぼそ言ってたから、多分13歳って事になってるハズっすよ?」

「じゃあお前、学校どうすんねん」

「あ…」


 完全に失念していたらしい。「やっちまった…」みたいな顔をしている。僕は合計一週間近く寝ていたというのに、何をしてたんだか。僕が学生だという事に気づかなかったのか?出会ったときバリバリ制服だったぞ。


「が、学校は大連さんにどうにかしてもらいます…(やべっ、完全に忘れてた、がちやっべ)」

「大連さん使いまわし過ぎだろう…。ちなみに、僕の中学校は中高一貫の私立校だから途中入学とかは無理だぞ」

「双子の仲を学校で引き裂こうとするとは法律許すまじ」


 出会って合計時間一日になるかならないかの仲に、引き裂くも何もないと思うが。

 怒りを向ける対象が法律とは。無駄に強すぎる力あるから実行できそうで怖い。…もしこれで世界とか言い出したら何やらかすんだろう。法律だったら確実に無職から裁判所ブレイカーに転職するだろうけど。


「じゃ、私は学校の入学許可をどうにかしてもぎ取ってくるので、マスターは頑張ってリハビリして首を治しておいてくださいね」

「元々これはお前に殺られた傷なんだがな。お前こそ、僕の為にも傷つくなよ」

「…惚れる」

「意味わかっている上で言っているから性悪さが滲み出るんだよ」


 紅里が傷つくと傷を治すために僕に喰らいつくんだから、僕としては堪ったもんじゃない。ニタニタしているコイツの口元を裂いてやろうかと思うぐらいには。


「あ、おい!用途が不明なこの拘束具を解除してくれ!リハビリも何も、こんなのがあったら一般人の僕は普通に動けないぞ!」

「それは、大連さんがカギを持っているので開けられま「破壊しろ。出来ないわけないよな?」…ハイ」


 紅里は、突如胸の中心に手を当てると、目を閉じて瞑想をし始めた。年齢的にはもう中学二年生なんだから、中二病にでも目覚めたのかと思ったが、どうやら違うようだった。


 ――――バキバキバキ…ベキ


 突如、胸から赤い霧、それこそ血煙のようなものが溢れ出し、それと共に、僕らの命を数えきれないほど救ったあの刀が出てきた。


 久しぶりに見たこの刀は、刃毀れや錆は一切見られず、以前と全く同じ輝きを放っていた。

 その輝きに魅せられた僕が、じーっと見つめ続けていると、紅里は無造作にその紅の刃を振り下ろした。

 僕の手首に。


「いやいやいやいやいやいやいやいや?!やめなさいぃいいいいい!」

「え?拘束具を破壊してほしいのではなく?」

「それ今まで何切ってきたと思ってんの?鉄柱とか余裕でぶった切ってんだよ?手首とかのこれ破壊しようとしたら手首ちょんぱされるんだよ?!」


 何せ僕の命を救ってきた安心のバカみたいな切れ味だ。人体なんて豆腐みたいに撫で斬りに出来るだろうな。


「切れ味抜群過ぎるそれで拘束具破壊しようとすな!これ鉄製だろうけど、鉄柱よりも硬くないからな?!」

「だからこそ簡単なんですけどねー。マスター、私をだぁれだと思ってるんですか?私だって、自分の得物ぐらい十全に扱えますよ」


 ひやひやする僕が、自身に満ち溢れた彼女の眼を見て、説得を諦めるのにさほど時間は掛からなかった。

 …もう、やけくそだ。


「じゃ、切りますよー」

「心の準備ッ?!」


 ――――パッキィイイイイイイン


 やっぱりやめとこうかな、とか脳内でちらついてる内に患者の意志を無視してぶった切りやがった。紅里の腕前は目の前で見ているから信用は出来るけど、僕の体が掛かっているのなら話は別だったのに。


 手首足首真っ二つになったかな。そんな生活は嫌だなと思いながら、僕は恐る恐る目を開ける。

 真っ先に目に映ったのは、やっちまったぜという顔をしている紅里だった。自分でもわかるぐらい血の気が引き、顔が真っ青に染まり始めた。

 現実なんて認めたくない、僕はそう思いながら、今はもう亡き手足を動かそうとした。


 …動いた。


 紅里、もしかして僕を騙した?だとしたら普通に許さないが。そうして紅里を見てみるも、先ほどから顔色は変わっていない。


「紅里、何をやらかしたんだ?」

「いやー、当然と言えば当然なんだけど。こんな手段とらなくてよかったっていうか?」

「正直に吐けや異論は認めねぇぞ」


 少し目を伏せながら、彼女は言った。


「切れんだけど、切れただけで壊れなかったんです…」


 この後、普通に鉄の拘束具を紅里の剛力で壊してもらった。

 最初からこうすればよかった気がする。

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