恐るべしうさ耳

 僕らがまず生き残るためには、僕の目の前で仁王立ちしている、赤髪で、碧の眼をした彼女が、どれだけ強いのかを知る必要がある。

 だが、そんな性能実験は必要なさそうだ。目の前に迫りくるをぶった切るだけなのだから、失敗したら死ぬのでこの話は無かった事になるだろう。

 まあ、いくら鉄柱が切れたとしても、次の目標は火の玉という、ものだ。

 迫り来るファイヤーボールをボーッと見ながら、死の間際に不思議なモノを見たな、と思いながら目を閉じた。


 ・・・閉じたのはいいが、いくら経っても体の感覚が残っているんだが。こんなにファイヤーボールって速度遅かったっけ?


「おーい、こんな燃え盛る体育館の中で寝れるその豪胆さは認めるけどさ、そろそろ目ェ開けてくれよマスター。そんなに無防備でいられたら流石に守り切れないゾ?」

「・・・?」


 うるさい、僕は今マッチの日のように儚い余生を堪能しようとしているのに、と思いながらも目を開けた。

 僕の常識はビッグバンを起こした。


 火って、切れたんだ。へーそうなんだ。火は固定の質量がある物質ではないって聞いたんだけどなー。どうしたんですか先生、専門分野なのに間違えたらダメじゃないですか。


 ・・・もうダメだ。頭が今起きている現象に追いつかない、と言うか、現実逃避をメインにしてるし。


 僕の目の前で、


「どないしました?ワテはこのくらいは余裕で出来ますよ?なので」


 火が切れるようなモノって何やねんと思った。以上。

 僕の頭は、今や混乱し過ぎてどうでもいい事しか思い浮かばない。彼女は何故口調をコロコロ変えるのかとか、友田の顔に落書きでもしよっかな、とか。

 ・・・自分で思っておきながらマジでしょうもねぇ。

 結構気が抜けているような状況だけど、間宮の攻撃喰らったら余裕で僕即死だからね?彼女が防いでくれなけりゃ、じゅわっていって僕の焼肉の出来上がりだ。誰得だよ。


「何だよ、何なんだよお前は!この空間で一番強いのは!この空間を支配しているのは!俺だ!俺なんだよ!俺をあしらえるような存在が、許されるハズがない!」

「でも、私ここに実在してますし?大体、あなたが言ってるのってただの自己中の心の内みたいなもんですし。心の内吐露するのは別にいいんですけど、児童相談所でやってきてくれません?迷惑なんですよ」


 力が効かず、言葉の刃で心の内を滅多刺しにされてしまった間宮は、面白いぐらい顔を真っ赤にして震えている。というか、彼女が言った事、なんだが。

 まあ、僕がそれだけ万人が思い浮かべそうな陳腐な発想力をしていたということだろう。おかしい。僕は読解力と語彙力にだけは自身があるはずなのに…


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇええええええええええ!」

「鬱陶しいっての!『喰らえ』!」


 間宮の激情を表すかのように肥大していく火の鳥と、それに応じて大きくなるファイヤーボールを相手に、彼女は再び大立ち回りを演じ始めた。


 しかし、何故切られた直後のファイヤーボールの大きさがんだ?

 まあ、火なんだから、燃えるモノが無ければ消えるか。


 そんなファンタジーも糞もない予想は直ぐに裏切られた。


「トドメ喰らって生きたやつはいないよ!死んだのもいないけどね!『吐きだせ』!」

「火の鳥!呑み込んじまえ!焼き殺すんだ!」


『吐き出せ』というキーワードと共に、刀身の延長線上に、が作り出された。

 対する火の鳥は体を肥大化させ、空中で大道芸の如く火の玉を食らい、そして吐き出し刀身を伸ばす彼女を刀ごと吞み込もうとした。

 まあ、無駄だったが。


 ――――ズパッ


 一刀両断された。火の鳥が。過剰に伸びた刀身は、その長さで体育館の天井を一ミリのズレもなく溶断し、切られた火の鳥は左右に割れて後方に勢いのまま突っ込んだ。

 どっかぁあああああああん、と大きな爆発音が背後から聞こえ、反射的に振り返るとドでかい穴が開いた壁が見えた。僅かに見える地面は、あの火の鳥の温度が狂っていたのか、極致的に結晶化している。

 火力調整できてないにも程があるだろう。


 火の鳥を両断した彼女は、空中で刀を放り投げ、大爆炎を上げる刀を背後にスタッと降り立ち、ピースした。

 僕の心が大爆発した。ついでにもう片方の壁も大爆発した。

 萌えた。僕は萌えてしまった、全く知らん人に。もう終わりだ。でも、最後に可愛いものが見れたからいいや。むしろ心穏やかに眠れる。

 では、さようなら…


「って、いやいやいやいや!なんでそんな安らかそうに寝ようとしてんのさマスター!流石にそこは「頑張った」やら「ありがとう」とか言ってくれる場面でしょ!そりゃあないって!」

「命を救ってくださりありがとうございましたぁああああああああああ!」

「…あ、うん、はい。極端な反応しかできないのかな(ボソッ)」


 何だか、変わった人だと認識されたっぽいが、そんな認識に困ると感じられるのは平和の証だ。そんな些細な事で困れるというのは幸せだと、一瞬後、僕は痛感することとなった。


 


 そりゃあ、よく考えれば分かる事だ。火で構成された鳥が生物な筈がない。彼女と僕らが戦い続け、ようやく倒したものは、火の鳥の形をとったただの火の塊だったのだ。


「よぉくも、無視してくれたなぁ!」

「逃げてッ!?」


 彼女は僕に覆い被さるように前に抱き着くと、そのまま後ろに突き飛ばした。後頭部がボールの様に跳ねて、頭がぐわんぐわんいうのが聞こえるが、そんな事を考えている場合では最早なかった。


 最初に、一瞬前、僕らがいた地面が吹き飛んだ。


 地面は溶け落ち、周りはドロドロとしたマグマのようになった。おかしい、さっきまでは辺りを燃やす程度の威力だったのに、格段に上がっている。

 彼女に抱き着かれながら、地面をサンドバッグの様に数回跳ねながら転がり、ようやく止まった時、隣に良く分からなさそうな顔をしている友田がいた。


「お前さ、彼女いたっけ?走馬灯にまで出て来て彼女出来た宣言したらさ、いくらお前の親友を自称してても殴らざるを得ないんだが」

「いや違うから。なんかどっから現れたのかは全く知らんけど、僕らの命の恩人だぞ。感謝はしとけ」

「いやいやそこまで~。ところでマスター、ちょっと私あいつ倒すのは流石に厳しそうなんだけど、どうする?友田君?を連れながらでも逃げられない事は無いだろうけど」

「逃げる方でお願いします」

「夢咲、全く事情は分からんがお前ギルティな。後で覚悟しとけ」


 僕に対する誤解が弁解不可能までに達したところで、僕らは逃げる事に決まった、脱出ルートは、さっき火の鳥だったものの残骸が開けた大穴だ。

 もちろん、そんなに簡単に逃がしてくれる訳もなく、後ろからは人間なんて容易く焼き尽くすことが出来るであろう火の追手が迫ってくる。


 僕らは夢中で走った。それこそ、止まらなければいけないところでも思わず小走りになってしまうぐらいには。直線距離からすれば大した事は無いのだが、地面が溶けてしまっていたりして、体育館がまるで火の迷路と化しているから、本来の道からぐねぐね曲がって外れてしまっているのだ。


「――ッ?!嘘、火の鳥はさっきま後ろにいたはず・・・!?」

「ばぁあああああかがよぉおおおおおお!お前ら自身が、こいつはただの火の塊って分かってんだろぉ?分解して別の場所の再構成なんて容易いんだよ!それに!」


 間宮が腕を一振りすると、いつの間にか僕らの前に鎮座していた大きな火の鳥の羽から、何羽もの小さな火の鳥が生まれ落ち、こちらに向かって顔を向けた。

 フォルムは可愛かったが、その目の色は、間宮と全く同じ、狂気に染まっているようにも見えた。


「生きてないんだから、分離も分身もお手の物なんだよぉ!数の暴力ってもんを思い知りやがれ!集中砲火しろ!」

「こちとらマスターの前で無様晒して死ぬわけにはいかないんですよぉ!」


 火の鳥の口という砲口から放たれた視界一面を覆いつくすような数の火の玉を、彼女は凄まじい速さで切り飛ばし続けた。しかし、体力がそう無尽蔵に持つはずもなく、最後と言わんばかりに飛ばされた巨大な火の玉を両断すると、その陰に紛れて高速で飛来した弾丸のような火の玉によって凄まじい速度でぶっ飛ばされた。


「カハッ、はぁはぁ、お前なんかに、負けて、たま、るか。そんな、数で押しつぶそうとしている脳筋ごときに!」

「でも、事実として君は負けてんじゃん。結局はさ、勝った奴が正義な訳なんだよ。勝った方が一方的に正しくて、負けたやつが一方的に悪いんだよ。つまり、悪役である君は、絶対的な力を持つ主人公である僕に殺されるのが正しいストーリーなんだよ」


 真心からそう言っているのならば、こいつはもう手遅れだ。完全な社会不適合者となっている。暴力の弱肉強食の精神で生きていける程、この国は甘くないのだ。

 だがどうする。事実として、彼女はもう動けないだろう。仮に、後ろで呆けている友田に背負わせて逃亡するとしても、確実に量で押されて死ぬ。ヤバい、八方塞がりだ。

 一度は助かったと思ったこの命だが、また投げ出すほかないようだ。


「友田、出来る限り逃げるぞ。逃げきれなくなったら、もう終わりだ」

「お前、まさかここで死ぬ気じゃないだろうな?」

「馬鹿言うなよ。こんな人生序章なんかでさらさら死ぬ気はねぇよ」

「多分彼女気絶してるから背負ってくれ。そんで運動部の底力見せてやれや」

「火の鳥だけじゃなくて本体も出てこいや文芸部!怖いのか!ァア゛?!」


 普段はそこまで詩的ではない僕でも、信頼という太い鎖で繋がれている僕らは、その鎖が切れるその時まではなんでもできる。そうやって表現するのが適切なような、何かがある気がした。

 勿論、僕は友田達を庇って死ぬ予定だが、出来ればそんな未来を回避して、楽しくまた日常を過ごしたいと思ってしまうまで。


 頭を振って、雑念を振り落としていく。今の僕が考えなければいけない事は、如何にして間宮の注目をこちらに集めるかだが、事は悪い方に向かっている。

 どっちかっていうと、友田の言葉の方にキレていらっしゃる。そっちを優先して襲ってもらうのは困るんだが、どうしたものか。

 というか、あの30分以内に来ると言っていた特務課夢喰いとやらはどうしたんだよ!なんか名前からして強そうだし、結構期待はしてたんだけどね!

 そう思いながら腕時計を見てみると、丁度18分が経過した頃だった。それしか経っていないのかという驚きを味わうと同時に、特務課夢喰いとやらは案外来るかもしれないという希望が見えてきた。


「お、おい。俺の眼がおかしいのか?何故かこんな場所にケモミミ付けてる人がいるんだが」

「こんな絶望的な状況は分かるけどさ、そんな夢みたいなこ…と?」


 何と、そりゃあ綺麗な兎のケモミミが付いている人がこちらに向かって歩いてきていた。流石に、ここをコスプレ会場と間違えているとは思わないが、誰だろう。

 僕の頭の中に、電話で出てきた低い声の予想イケおじの頭の上にうさ耳が付けられた像が作られた。

 …流石にそれは酷すぎる。

 でも、そうじゃないのならば、一体誰なんだ?


「あなたは間宮伸之介さん、でしょうか?少々お時間よろしいでしょうか?」

「はあ?僕がなんで君の言葉に従わなきゃ――――」


 ――――バシュッ


 うさ耳を付けていた人の全身がが火に照らされて映り、それが白いうさ耳のとても美しい女の人だと分かると同時に、この体育館でまだ逃げ惑っている人たちも含めて全員が、その筋肉を硬直させた。

 間宮の髪の毛が、と共に空を舞った。


「私が、あなたよりも遥かに強いからです。理由は、それで結構ですよね?」

「は…?ふざけんな!銃持っているからってイキんなよ!」


 いけ、火の鳥!単純な号令とともに、何羽もの分裂した鳥がうさ耳の女の人に襲い掛かるが、どれもうさ耳の人にはかすりもせず、逆に火を吐く直前に口内に銃弾を撃ち込まれて爆散していた。

 特大の火の玉が襲い掛かっても、銃弾の連射でその脅威を散らしてしまう。戦闘も喧嘩の経験も僕と同じぐらいカスの間宮にとっては、戦闘のプロというのはあまりにも分が悪いだろう。


 だが、それを理解できる程、間宮は冷静ではなかった。


「悲鳴でも上げながら無様に死ね!」

「次で最終忠告です」


 間宮は、うさ耳の女の人を射殺さんとするような、濃厚な殺意を目に集め、己が撃てる最強の一撃を繰り出そうとした。対するうさ耳の女の人は、片腕を無造作にぶら下げ、同じように下げた腕で銃を緩く握っているだけだ。

 この二人の戦いは、思っていたものとは違い、呆気なく幕を閉じた。


「焼き殺せ!ファイヤボール!」

「――――シッ!」


 放たれた、今までとは違い青白い光を放つ特大ファイヤーボール、それを向かい放たれたのは一瞬にして構えられた腕から放たれる小さな銃弾が三発。しかし、その三発が力量の差を分からせる王手となった。

 一発目の弾丸は、ファイヤーボールの中心を貫き、見事に火の鳥も貫通して見せた。二・三発目の弾丸は、それぞれ頭皮を削り、股下を通り抜けて行った。ファイヤーボールは一発の弾丸ごときで散らないという根気を見せたが、うさ耳の人には掠りもしなかった。

 文句の言いようが無いほどの圧勝であった。


「で?これでもまだ力の差が分からないというのなら、そろそろ体に叩き込みますが?どちらにしますか?従うか、まだ野生の獣のように暴れるか」

「…分かったよ。従えばいいんだろ」

「偉いですね。まだ貴方は賢い判断が出来るようで助かりましたよ。あなたは、これから我々の仲間となって頂くのですからね」


 目の前で繰り広げられている割には、全くもって話しの内容が分からない。だから僕は、間宮がうさ耳の女の人に気を取られている内に、ちゃっかり逃亡を企てちゃってもバレないんじゃね?という意思の内に行動しようとしたが、少しばかりそっちに意識が傾き過ぎたのかもしれない。

 彼女を背負って走る友田と僕との間に、緋色の線が走って行った。

 銃弾だった。


「申し訳ありませんが、貴方方に逃げるという選択肢はありません。こちらの御方と共に、仲間となってもらいます」

「…拒否権はあるんですか?」

「あるのだとしたら、あなたの体はもう蜂の巣になっていますよ」


 この銃によって、とうさ耳女は初めて口に寒気が走るような微笑みを浮かべながら、僕らを見た。

 悍ましいぐらいには、美しかった。

 どうしたものか、今はこの薄気味の悪いうさ耳女に従って、その後どうにかして逃げ出すか。でも、こんな強さの奴がゴロゴロしているような組織に引き込まれたんだとしたら、まず逃げ出すのは不可能だ。


 というか、実は意外と良い組織って可能性もあるかもしれない。

 銃を使って、物凄い怖いうさ耳の女の人が出てきたからって、それは他人のイメージを顔だけで決めつけるようなもので、非常によくない。だから、話し合えば何とかなる可能性もあるかもしれない。

 …逆らったら死ぬらしいけど、ね?


「あなたの組織は、どのような組織なのですか?」

「とても建設的な質問ですね。良いでしょう、答えられる限りの事は話してあげましょう」


 もちろん、さっきあんなに話し合えば何とかなるかもとか言ってきたけど、あんな気はさらさらない。人を躊躇いなく殺そうと出来る時点で、まあまともなはずはない。今の僕は、ただひたすら時間稼ぎのために質問をしている。


「我々――『箱舟の騎士』は、古今東西で生きた生物を遥か未来まで存続させようという組織です。組織のトップにいらっしゃる博士が、存続させる方法を確立し、その思想に感化された者達によって構成されています。なぜ夢中症候群の者達を集めようとしているのかと言いますと、夢中症候群の者は社会から非難される傾向がかなり高いです。なので、我々がその非難から彼らを守る代わりに、我々の保護活動に参加してもらうという事になっています。以上でよろしいでしょうか?」

「僕らが非難される根拠とはどこにありますか?」

「おかしなことですね?体育館に火を撒き散らし、あまつさえ天井を破壊し、被害を拡大させて館内の生徒の多くを危険に晒した人が、非難を浴びないとでも?私から言っておきますが、それを簡単に許してくれる程、社会は優しくないですよ」


 クソッ、確かに僕らは体育館を切ったりといろいろやっちまった。証人も実行犯の容疑が賭けられている僕らしかいないし、言い逃れが出来そうにない。

 ここは大人しく仲間になっておくか――――


「決意なされたのであれば、握手をお願い致します」

「分かりました――――というとでも思ったか!友田ァ!」

「応!」

「ここまで愚かだとは思いませんでしたよッ!?」


 バカが、友田をそのまま突っ込ませるハズねぇだろ。その隣に刀を持った女がいるのを忘れたのか。気絶してたとさっきまで思ってたが、お前が余裕綽々に間宮をいじってた時に起きてるってのは確認取れてんだよ。というか、友田は応と答えて半ば存在を忘れていた消火器をぶん投げただけだし。

 眼を紅く煌かせた彼女が居合で銃を切ろうとした瞬間。


「バカが、とでも思ったでしょう。奇遇ですね。全く同じことを思っていましたよ。この耳は何のためについているのかよく考えてみてください。本当にコスプレだと思っていたのなら、むしろ良かったです。『箱舟の騎士』と同じ空気を吸う資格すらない」


 


「私が見てきた中でも、人型の夢中症候群の人は珍しいですが、あの特徴は共通らしいですね」


 うさ耳女の手で無造作に握られている、血の滴っている右腕を見ながら、間宮をバカにできないぐらいのあほ面を僕は晒していた。だから気づかなかった。彼女が這い寄ってくるのに。


 ――――グサッ


「あぁ、いつ見ても悍ましい。間宮さんと言いましたか?この方は恐らく吸われて死ぬので、組織の拠点に向かいます。今日は大変ですよ、覚えてもらうことが沢山あります」

「…わ、分かった」


 あぁあああああああああああああああああああああ!


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!


 首元から、命を形作っている暖かいナニカが、流れ出て喰われてる。

 朦朧としてきた意識の中、僕が最後に見たのは、喉元に恍惚とした表情で食らいつく彼女と、血に塗れた彼女を殴り飛ばす大男だった。


 ~~~~第四大隊大隊長・『箱舟の騎士』幹部『ゲヴェーア』との遭遇記録


 こちら第四大隊大隊長大連雄太郎。

 今回通報があった中学校の体育館はほぼ全焼。局地的に特に強く燃えている、コンクリートなどの耐熱性の高い物も燃えている等の証拠から、炎に関する夢中症候群の犯行だと考えられる。


 ゲヴェーアとの戦闘痕跡が残されていた場所には、普通の少年が一人と、人型の夢中症候群とその主の少年が一人。

 暴走していた為、夢中症候群は杏子隊員のに封じ込めた。

 少年は病院に搬送。主の少年は首元に酷い咬傷が見られた為、病院に搬送した。


 ゲヴェーアと、火災の容疑者だと思われる男は、灯油ストーブを爆発させ逃亡した。

 この後、追いかけるのは危険だと判断し、消防に現場を任せました。


 ~~~~

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