第九話

五時間目、黒板に古文がつらつらと書かれる中、廊下から走る上履きの音が聞こえる。

「失礼します!花音さん居ますか!?」

唐突に名前を呼ばれ、すぐさま扉の方を振り向くと、そこには優奈が居た。

「…どした?授業中だよ?」

優奈は息を整える。

「っ…はぁ…体操着を…忘れちゃって…貸してくれたり…しないかなって…」

「…ふふっ、いいよ。ロッカーに入ってるから」

「ありがとう!」

感謝を述べると、優奈は急ぎながらロッカーを漁る。

「…あれ?どこ…あれ…?」

私はそんな優奈を見て、席を立つ。

「…焦りすぎ、深呼吸しな?」

優奈は面食らったような顔をし、素直に深呼吸をする。

「…ほら、これだよ。急ぎな?授業中でしょ?」

「…うん!ありがとう!」

私は走り去る優奈を見守り、席に戻る。

教室は、あの優等生が慌てている姿を見たせいで少しザワザワとする。

「…はい、授業続けるぞ〜。」

先生がどうにかレールを戻し、授業を続ける。

__

___

放課後、体操着を着たままの優奈がこちらに向かってくる。

「花音〜!ありがと!」

「はいはい、着替えてこなかったの?」

「あっ…ごめ、家で着替えようとして…明日返す!」

「ふふ、わかった。ちゃんと洗ってね?」

「うん!ありがと!」

私は、ふと思ったことを口に出す。

「…一緒に帰る?」

「…うん!」

嬉しそうな顔をした優奈は、私の腕を取り、何度も楽しそうに話しかけてきた。


----第九話 終----

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mimosa 金木犀 @kinmokusei_GL

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