第6話 stop me if you think you've heard this one before/the smith

さすがにちょっと地味な選曲が続いたのでここらで有名どころ、the smithを登場させます。

とはいえ、個人的な評価によるあくまで素晴らしいロックであるという線は外さず、やっぱり僕的にはこれまでに挙げたどの曲とも比肩する極北の表現だと思う一曲です。

それが尽きたら本稿は終わります。尽きる事はないと思うけれど。

言わずと知れたスミス。モリッシー&マーの幸せな4年か5年のパートナーシップは数多の名曲を産み出しました。

僕は断然マー派で、彼の子守唄に喩えられるアルペジオが大好きでした。

特に顔も合わせない分裂状態で作られたラストアルバム「strangeways here we come 」はその宝庫で、この曲をはじめ「the death of a disco dancer」「girlfriend in a coma」「last night i dreamed that somebody loved me」と、美しくゆったりした楽曲が並びます。

また、全キャリアを通じて「this charming man 」「still ill」「i know it's over」「some girls bigger than athers」「ask」等など。

中でもこの「stop me…」では割りとハイテンポな曲調のいちばん遠くで、明るく物悲しくゆったりと響く一音一音が、言葉を詰め込んで性急に走るモリッシーの歌を引きずるみたいに、全体のテンポを変わらないままに空間を残すかの様な作用を垣間見せながら、綺麗に終わって行くその曲と共に姿を消す。

なんにも尖ってないのに、無二の感触を残す、もともとノイズやテクノロジー、方法論に頼らずその存在自体をとても美しいアナーキズムに仕立てあげて来た彼らの真骨頂がここにあります。

このラストアルバム、評価付いて来てない感じがしますが、3曲目「the death of a disco dance」から「girlfriend in a coma」そしてこの「stop me if you think you've heard this one before」と怒涛の盛り上がりを平静を装いながら差し出したあと「last night i dreamed that somebody loved me」(余談だけどここでのsomebody程「誰か」ではなく、字面通りsome

、bodyなんだなと響くものは他に無いと思います)でクールダウンして行く圧巻の中核を素晴らしい序と結が挟む構成はすべての表現のお手本みたいなもので、例えば僕は太宰が好きだけれど、モリッシーとマーは十分過ぎる評価を得てはいるけど、わかりやすく言えば「太宰に憧れて書いてたら、芥川に、鴎外になっちゃったよ」くらいな事を成し遂げて、それ以上一緒に居られなくなってしまった、と僕は思ってます。

もっと評価されて欲しいし、一段高い評価で向きあった時、彼らの作品群はやっと真価を発揮するんじゃないかな?

僕らは彼らに追いつく前に、次の喧騒に巻き込まれてしまった。

長くなりましたが、今回の執筆にあたり初めて訳詞をまともに読んでびっくりしたので、次はこの曲を詞から評価して行きたいと思います。

モリッシー派のあなた、お待たせ致しました。

次回、モリッシーの逆襲です。

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