第7話 正規ルート脱線開始しました。 3

 ガシャン。金属の音がする。まるで、そう、鎧を着た騎士が歩いた時に、鎧が立てるような音。


 鉄格子の向こう。ゆっくりと、闇から溶け出すように、鎧が歩いてきていた。その歩みはたどたどしく、軋んだ人形ががたつきながら歩んでいるようだ。


 鎧の甲冑型の敵か? そう身構えたが、手に武器を持っていないのに気づく。


 歩く甲冑の手に剣やハルバートなど武器はなく、淡く、だが仄かに、だが煌々と道と周囲を照らすカンテラが握られていて、歩みと同時にゆらゆらと揺れ、作り出す影を揺らしていた。


 エンカウントではないのかもしれない。一応、警戒は解き切らないがロキはそう思い息を吐いた。


 死んで訪れたこの世界で、死んだらどうなるか全くわからない。ゲームなので、現実に死ぬようなことはデスゲームなわけないのでないが、わざわざ死なないに越したことはない。


 ゆっくりとだが歩んできた甲冑が、鉄格子越しに眼前に到着した。


 そして、目の前で見ることによりロキは気がついた。


 甲冑の中身は人型だ。だが、人間ではない。いや、ある意味人間だが…。


 「ゾンビ…。死んでいる。だから、死者の国か」


 鎧の繋ぎめから、中身の人型は腐っているのが察せられた。死んだから、訪れる場所の住人だから、生きていないアンデット。そういうことなのだろう。


 『親愛なるお方様。敬愛なる高貴な女王様がお待ちです。』


 その声は、地の底からうめくような、それでいて囁くような、そんな声。


 すぐに目の前の甲冑ゾンビがしゃべったのだと、理解した。


 ゾンビが振り返り、館へ帰り始めた。それと同時に、ガチャリという開錠の音と共に鈍く軋む音と共に鉄格子が開け放たれ、道ができた。


 「行くしかないか。蛇が出ないといいな」


 ロキはゆっくりと進むゾンビを追い抜かないように気をつけながら、館に向けて歩を進めた。

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