第5話 正規ルート脱線開始しました。 1
ミスった。油断した。
そう思った時には時すでに遅し。
背中に衝撃を感じ、一瞬で視界に右端に映っていたHPバーが減りきり、HPゼロ。
そんな感じで、プレイヤー、ロキは初プレイ初日に初death。
視界はブラックアウト、死亡した。
「ミストルティン・オンライン」では、死亡しても普通にプレイヤーのキャラクターは最後に訪れた街の教会で復活する。
デスペナルティーはあるが、獲得した所持金が銀行に預けてあった分以外全部なくなるというペナルティーで、所持金がまだ始めたばかりで少なく、さらに序盤だから大丈夫とたかを括っていたら、これである。
「下見してサイトに書いていた通り、夜、やばいな…」
ロキは初心者の草原で順調にレベリングして、Lv.1からLv.8へ上昇していた。
各種ステータスがアップし、さまざまなスキルを獲得している。
そう成長して強くなっていた。だから、油断してしまったのだ。
「ミストルティン・オンライン」では、昼と夜でフィールドの様子と危険度が激変することを知っていたのに。
夜は魔が強まる時。つまり、魔物が活性化し、さらに出会うモンスターが凶悪に変化する−そういう仕様に、この「ミストルティン・オンライン」というゲームはなっている。
そんな感じで夜になればフィールドは危険度が増す。しかし、リスクと利益は比例関係にある。
敵が強いということは、それだけ倒して得られる経験値が増えるし、手に入るドロップアイテムもかなり期待できるということでもある。
早い話、初日から順調にレベリングが進んで、油断したのだ。
昼間これくらいなら、夜でも大丈夫じゃないか? レベルが上がりづらくなってきているし、丁度いい。
調子に乗ってそう判断したロキは、夜の危険になった草原でそのままレベリング継続。
そして、油断した結果、普通のゴブリンより上位のハイゴブリンの集団にボコられて、死んでしまったのだ。
「はー、まあ、いい教訓か…? 次からは気をつけるか…。というか、あれ?」
視界はブラックアウトしたままで、そこから景色が変わらない。
死んだのに、街の教会へ場面が転換しないのだ。もしかて、バグだろうか…。
「えー、バグとかもしかして今日のレベリング無駄になったりしないよね…」
そう心配した瞬間、視界に電子音と共に、それは、そのメッセージは視界に飛び込んできた。
『EXシナリオ 死者の国の女王 を受注。 シナリオを開始しますか?』
「へ、なんで…? とりあえず、YESだけど…」
ピコン、という音と共に足元にぼんやりと照らし出された階段が出現した。
階段は下り階段で、階段の先は暗く、今の位置から降りた先を窺い知ることはできない。
「色々とわからないけど、まずは降りてみるか…」
ロキはゆっくりと階段を降りていく。
まるで、地獄に降りていくみたいだ。だから、死者の国なのか?
階段が鳴らす靴音だけが、闇に溶けていき、ここがどこかのフィールドなのだと感じさせてくれる。
バグではやはりないみたいだ。どうしたもんか?
そんな感じで、ロキ–元凶のプレイヤーにも全く意図しない形で偶然、このゲーム「ミストルティン・オンライン」のメインシナリオの歯車は、ゆっくりとだけど確かに噛み合い、静かに廻り出した。
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