第4話 宝くじを買う気分で始めました。 4

 最初に遭遇したのは、ゴブリンだった。


 門の脇をくぐり、草原を歩いていると、視界の先がぼやけ、そのぼやけが声と共に鮮明になり、エンカウント。


 現れたのは、黄緑色の肌をした小さな小鬼、腰にズタボロのショートパンツを履き、刃先がかけたサーベルを持ったゴブリンだった。


 ゴブリンは咆哮と共に、こちらに向かって走ってくる。


 接敵まで、後50メートルといったところだろう。


 だが、まあ、当然、こちらはお行儀良くゴブリンが近づくまで待つ必要はない。


 ゆっくりと右手をゴブリンへかざし、意識する。


 −スキル発動、フレイムガン!


 その瞬間、翳した右手の先に右手のひらから何かオーラのような、魔力が迸り小さなサッカーボールほどの火の玉を形作る。


 いけ! そう念じた瞬間、ごうっ、という鈍い音と共に火の玉が一直線にゴブリンに向かって放たれた。


 無警戒にこちらに走りかかっていたゴブリンは慌てて横に飛び退いた。


 それは想定内。慌てて飛び退いたことにより、着地時に隙が生まれる。


 そこに第二陣の攻撃をお見舞いする。


 二発目のフレイムガン!


 直撃。火球はゴブリンで当たると爆発し、ゴブリンが絶叫をあげて吹っ飛び、煙を上げながら地面に転がる。


 しばらく、鈍く動き呻いていたが、手に持っていたサーベルを地面に落とした瞬間、視界にゴブリン撃破と文字が表示される。


 −ゴブリン撃破、EXP5獲得、フレイムガンの熟練度Lv.0からLv.1に上昇


 「おお、戦闘終わるとこんな感じか!」


 −条件達成、パッシブスキル 先読みLv.1 獲得


 「先読み…?」


 何やら、パッシブだから恒常的に発動するスキルをいきなりゲットできたみたいだけど…。


 「まあ、こんな簡単に手に入るスキルだから大した効果ないんだろうけど、最初としては上等かな」


 倒したゴブリンは、データのホログラムが崩れるような演出と共に、消滅し、その場にはゴブリンが持っていた欠けたサーベルだけが残った。ドロップアイテムだろう。


 「しばらくはこんな感じでレベリングかなー」


 そんな感じで、ロキの初戦闘は終わりを告げた。周囲を伺うと、同じように戦闘をしている他ユーザーのキャラがちらほら見える。


 その中には、パーティーを組んでいるのか、複数でモンスターと戦っているキャラもちらほらいる。


 ロキの当初の攻略方針は、まずプレイして最低限のゲームシステムを理解すること、そしてレベルをある程度上げ、仲間を募集すること。


 せっかくのVRMMOゲームなのだ、誰かと協力プレイをしないと楽しさ半減である。


 ある程度成長したら、街の中にある酒場の一角で、パーティーメンバー募集の書き込みを専用掲示板でできるらしいので、募集をかけてみる気だ。


 またはリア友で先に開始してるやつがいたはずだから、そいつらとゲーム内で落ち合ってパーティーを組むのもいいかもしれない。


 「まあ、のんびりぼちぼちやりますか」


 ロキはそう言いながら伸びをして、軽く肩を回しながら新たなモンスターを求めて歩を進めることにする。


 ロキの「ミストルティン・オンライン」の冒険は、そんな感じで始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る