第3話 宝くじ買う気分で始めました。 3

 神殿の扉の先は中世ヨーロッパのような石造りの建物で構成された街並みだった。

 

 プレイヤーの開始地点の神殿は、この最初の街、ミストガンドの中央に位置する広場の真ん前だった。その広場の中心には噴水があり、他プレイヤーが待ち合わせ場所にしているのか様々な姿のプレイヤーのキャラクターが待ちぼうけで立ちすくんだり、談笑したりしていた。

 

 そんな光景に少し、年甲斐もなくワクワクしてきたが、まだゲームは始まったばかりだ。


 ロキはまず、広場から南に伸びる商店街に向かうことにした。その商店街の奥にこの街の門があり、そこからフィールドに出ることができるはずだからである。


 攻略サイトで下見をしていて、最初のプレイ方針は決まっていた。


 ミストガンドの外、そこには別名初心者の草原と呼ばれる、遠くに森と山が見える草原のフィールドが広がっており様々なモンスターが出現する。


 まずは、最初の戦闘を経験し操作感などを確認。そして、レベリングに励むこと。それがロキが事前に決めていた初日の目標であり、遊び方だ。


 ロキの職業は魔術師だ。見た目はローブ姿にとんがり帽子ではなく軽装の盗賊がしてそうな皮の胸当てなどをした姿で、黒いマントの外套を羽織っている。

 

 魔術師というか、傍目には弓使いのレンジャーのような格好だ。その格好にした理由は単なる趣味という以外にも、この格好の方が初期装備として防御力が高いらしいからだ。


 最初のキャラクタークリエイトの時に魔術師を選ぶと、様々な防具からお気に入りの装備を選び、気に入った見た目で始められるように、このゲーム「ミストルティン・オンライン」はなっている。


 同じ職業でも、そのように最初に選んだ防具−姿で初期ステータスが違いが出るようになっており、その自由度もこのゲームが人気の高い理由でもある。


 防具以外にも、最初にそれぞれ各ステータスポイントに任意で好きなステータス項目に振り込むことができ、それでも差別化できるようにされている。


 買い物をする他プレイヤーとNPCの住人たちの賑やかな雑踏を意気揚々と歩んでいく。


 そうやって、人混みを避けながら進んでいくと、街を覆う城壁と一つの大きな門。そして、その門の脇に小さな扉が用意されており、その扉の前にプレイヤーの列ができていた。


 その列に並び、NPCの門番の許可を得れば、晴れて初心者の草原に行くことができる。


 「さあ、ゲーム開始だ!」


 そう言って、ロキはプレイヤーで作られた長蛇の列の最後尾に並んだ。


 

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