第5話 6つの王国 



「不動産王の異名を持つガイヤースグル-プ社長の息子サラーフと秘密裏に付き合っていた王家の美しいアーリヤ王女だったが、ガイヤースグル-プが 地面師のタ―ゲットに遭い大事件に発展した」


「一体それってどういう事?」


「 地面師とは、不動産の本当の所有者になりすまし、ターゲットの買主にその不動産を購入させ、買主から代金をだまし取る詐欺師のことをいい、その事実が分かってしまい、怒り狂ったガイヤースグル-プ側が、徹底的に追及している最中に、事件に巻き込まれて、不動産王の異名を持つガイヤース氏が殺害されてしまった。そして…ボーイフレンドだった息子のサラーフを、慰め励ましていたアーリヤ王女だったけれど、反対にアーリヤ王女が誘拐されて、ダウリー王国の秘宝黄金の鳥まで奪われてしまったんだ」 


「ダウリー王国は殆どが外国企業、その賃貸料金は相当なものだった。土地やオフィスビルなどを外国企業に貸して賃料を取る。それはそれは莫大な資金を稼ぎ出していたガイヤース氏だったが、結局はガイヤース氏に成り済まし、バレてしまいガイヤース氏は殺害されてしまった」


「全く酷い話だな。チャッカリ不動産王に成り済ますなんて」


「何で関係ない王女様が誘拐されなくては行けなかったんだい?」


「どうも…その話には続きがあるらしい。6つの王国で構成されるサハラ王国連邦だが実は…アズィーム王国やダウリー王国の他に、ジャミール王国、アムン王国、ハヤーリー王国、ラーメェ王国の6つの王国があるが、過去には何もない砂漠地帯で領土争いで争いが絶えなかった。近年目覚ましい発展を遂げている近未来都市ダウリー王国だが、その発展の裏でダウリー王国有数の不動産王ガイヤース氏が、アムン王国の土地を汚い手を使って奪った過去があると聞いた」


「復讐に燃えた領土を奪われたアムン王国の不動産業者が地面師になり、不動産王ガイヤース氏を殺害したって事は十分に考えられるわね」


「そうじゃ!こういう時こそおマル様。地面師がアムン王国の不動産業者の仕業ってのは本当ですか?」


「NO」


 おマル様はアムン王国の仕業では無いと言っていた。

 深まる謎。不動産王ガイヤース氏殺害犯は一体誰なのか?



 ★☆


「オイ!調べで何か……分かって来た事があるか?」

 早速ドラキュラ伯爵が問い質している。


「6つの王国で構成されるサハラ王国連邦だが、実は…アズィーム王国やダウリー王国の他に、ジャミール王国、アムン王国、ハヤーリー王国、ラーメェ王国の中の1つが、とんでもない王国でマフィヤに牛耳られている王国があるらしいと聞いたけど……噓でしょう蘭舞留?」


「イヤそれが……聞く所によるとラーメェ王国らしいんだよね。建築ラッシュで近未来都市が乱立する発展著しいダウリー王国に多くの労働者を送り込んでいるラーメェ王国だが、近年ダウリー王国で犯罪者が急激に増えて来た。調べたところ60%がラーメェ王国から派遣された従業員だというのだ。それなのでラーメェ王国からやって来る労働者の質の悪さに、警戒してダウリー王国のザーイル王が契約を打ち切ったらしいんだ。そこでラーメェ王国と亀裂が入ったらしい。」


「ダウリー王国は色んな王国との問題を抱えてるって訳ね。アムン王国の土地を奪った件も有るし……」


「そうなんじゃ。ダウリー王国有数の不動産王ガイヤース氏が、アムン王国の土地を汚い手を使って奪った過去があると聞いたが、どうも…ダウリー王国のザーイル王も絡んでいるらしい。ザーイル王の妹がガイヤース氏の親戚筋に嫁いでいるらしく、国家ぐるみの犯行だというんじゃ。全く恐ろしい話じゃ」


「って事は……結局領土争いって事?この6つのサハラ王国連邦はキラキラ輝く夢の国だと思っていたが、裏では領土争いで恐ろしい戦いを繰り広げてるって事なのね」


「それはやはり妬みもあるじゃろう。アズィーム王国は元々領土も広いし、資源のある国だから到底勝ち目はない。潤沢なオイルマネーで経済発展を遂げているサハラ王国連邦の首都だから…到底太刀打ちできない。だが、ダウリー王国は近年活気付いた成り上がり国。それも汚い手を使ってライバル国から次々に領土を奪っている。それにダウリー王国の不動産王ガイヤース氏が加わったって事か?」


「結局、他の王国もダウリー王国に狙われて領土を奪われた過去があるらしい。こうして…堪忍袋の緒が切れた、どこか分からないが、どこかの王家が復讐心から、アーリヤ王女と黄金の鳥を奪ったという事は十分考えられる。そして…これ以上領土を奪われる訳には行かず、色んな手を打って対処している。そのひとつラーメェ王国はマフィヤに泣き付いたって事?」


「だけど……ラーメェ王国のやり方も尋常じゃない。犯罪者や死刑囚の他、極貧地帯ではやむを得ず奴隷や買春目的で子供たちを、売り飛ばす親がいるらしい。お金をもらった親は良いが、どうも…悪徳就職ブローカーによって航空料、宿泊費、就労ビザなどの発行と引き換えに借金を背負わせ、不当な方法で給料を削られる形で働く者が多いらしい。ダウリー王国発展の裏では外国人が安い賃金で扱き使われ人件費が非常に低く、一日中働く労働者がほとんどで、ダウリーで産業災害で死亡した労働者の数は900人以上に達しているという。全く発展の裏ではこのような事が起こっていたのだ」


「会社経営者や会社員、個人事業主として海外で働くことが可能な在留資格をいわゆる「就労ビザ」と呼んでいるが、その中でも殺人事件を起こして自国にいられない厄介な人物などを、他人に成り済まし偽造パスポートで入国させているいわくつきの人物や、貧困で仕方なく親に売られた子供達、極貧で食うや食わずの過酷な状況の人達にすれば仕方がない。生活の為にこんな悪徳ブローカーに頼るしかないって訳ね?」



「多くの出稼ぎ労働者がダウリーの街で働いているが、夏場の工事現場は気温が50度にも達する中で、汗水を垂らしながら限界の中で働く出稼ぎ労働者は、必死以外の何物でもない。プラチナにきらきら✨光り輝く荘厳かつ、富の象徴である「ブルジュ・ターヒル」を始めとする超高層ビル群も、それだけを取り出せば、絶対的な富の象徴のようにも見えるが、華やかさの裏には彼らの努力があり、その栄華を支えているんだ」


「それでも…犯罪者も本来ならばムショ生活が待っている所を、偽造パスポートで入国出来てシャバでおまんま食べれるだけマシと思っているのかな?」


「まだ刑務所の方がマシでしょう。夏場の工事現場は気温が50度にも達するというのに、けれど死刑囚は刑務所にいれば、いずれは死刑執行される。だから偽造パスポートで入国してどんな過酷な仕事でも、死刑を免れる為だったらなんだってやるって訳ね?」



 ☆★

 

 実は…ドラキュラ伯爵とおマル様が空中遊泳していた時に空から見た下界を歩く人物、あの時のオーロラはハーネスに繋がれて金持ち風の紳士と歩いていた。


 どうも…金持ち風の紳士だが、ハヤーリー王国の妖獣が紳士に化けていた。そして美猫オーロラも妖獣だった。だから妖獣村でしきりに買い物をしていたのだ。

 

 実は…アーリヤ王女と黄金の鳥を奪った犯人は、この金持ち風の紳士と重要な接点がある。だから…おのずと美猫オーロラもこの事件に関わりがあるって事になる。


 それにはまず金持ち風の紳士とオーロラを探さなくてはいけない。どこにいるのか?


 そして…この妖獣村にはどんな秘密が隠されているのか?


 ★☆

 ここは……ここは……どこだろう?深い森の中。


「フッフッフウ!美しいアーリヤ王女、僕は……僕は……君を離さない」


「ヤメテ……ヤメテクダサイ。キャキャ————————————ッ!」









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