第15話
「二人っきりの『花園』ってのはよくわからないけど……、要するにステラは、魔族をみんな殺して人類を解放したいってことだよね?」
「……まぁ、そういうことです」
少し遅れてステラは、ほっぺを膨らませてジト目でボクを見ながら答えた。
どうして不服そうにしてるのかな? ボク、何かステラの気に障るようなこと言っちゃった?
まぁいいか、一応ステラの思惑が見えたわけだし。
でも—――
「あのねステラ……ボクはその考えに反対だな」
ボクは真っ向からステラの思惑を否定する。
しかし、真っ向から否定すると言っても、きっぱりと突き放すような声色でじゃなくて、あくまでも柔らかい口調でそう言った。
その方が、ステラが傷つかないからね。
だけども……ボクの気遣いや工夫はあまり効果がなかった。
というより、そもそも声色や口調などといった気遣いは論外だった。
ステラの表情からは初めて見る―――怒りが滲み出ていた。
怒りで体を震わせながら、ステラは言葉を、思いを紡ぐ。
「な、なにを言っているのですか? センカ様は……。はっ? もしかしてセンカ様、魔族が生きていても良いと思っているのですか……? ふざけないでくださいっ!! 私たち人類から文化と娯楽と自由を奪い破壊した魔族など—――滅ぶべきですっ!!」
そして怒りを声に乗せて、ステラは叫んだ。魔族に対する深い憎しみを……。
でも、ボクが一番に感じたのは怒りでも憎しみでも無くて—――悲しみだった。
なぜなら、ステラの手に持っているアネモネが握り潰されていないからだ。
普通そんな激情を抱いてたら、お花のことなんか忘れられ両手に力が込められて握り潰されている。
しかしステラは、握り潰してなどいない。だからボクは、そう思ったんだ。
あぁ、ステラは悲しんでいるのだと、本当はそんな感情なんか忘れて、思うままお花を育て愛でて、お花でいっぱいの世界にしたいのだと。
—――ボクもおんなじ気持ちだ、願いだ、夢だ、理想だ、憧れだ。
だからきっと、これからボクが紡ぐ言葉はステラに届く。
—――必ず!
ボクは「うぅ……っ」と嗚咽を漏らして泣くステラの頬に人差し指を当て、そこから伝わる涙を払う。
「本当は……憎みたくなんか、ないんだよね?」
「うぅ……」
頷くステラ。
「本当はただ……お花でいっぱいの世界がいいんだよね? 誰も、魔族も殺したくなんか……ないんだよね?」
「うぅ……!」
これにも頷くステラ。
「本当はみんなと一緒に! お花を育ててお花畑を花園をたーくさんっ作りたいんだよね! そうだよね!」
「………」
しかし、これには頷かなかったステラ。
代わりに返ってきたのは、涙が溜まって揺らぐ瞳とさっきよりも膨らんだほっぺだった。
明らかにボクに怒っている。
それから顔をプイッと逸らしてぼそぼそと「……っきりが……のに」と呟く声だけ聞こえた。
だからボクは思わず—――
「う~ん?」
どういうことだ? と顎に手を当てて、首を傾げるのだった。
〜あとがき〜
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