第16話

「はぁー……、もうわかりました。今のセンカ様は『鈍感系難聴型主人公』なのですね……。あぁーなるほどなるほど、よーくわかりました」


「えっ? 鈍感で難聴とか危なくない? 主人公として成立しないよ。今すぐ病院直行した方がイイよ、絶対に」


 でも、なんか聞いたことあるな……『○○系主人公』とか『○○型主人公』とか。


 うーん、なんだっけな……もし聞いたことあるとすれば『前世』のはずなんだけど、それはどうみても違うよね? 


 いま言ったの、どれもステラには聞き馴染みのない言葉ばかりだから。


 だからこれは—――この世界での言葉なんだ。


 そんな結論に至ると、さっきの溜息よりも深く呆れた溜息がステラから返ってきた。


 だけど、その表情は母さんみたいに優しく見守る温かい目と優しい微笑みだった。


 ボクはそれに懐かしさと安心感を思い出してると、ステラは真剣な表情へと変わり口を開く。


「……センカ様は、どう考えているのですか?」


 それは間違いなく、ボクが魔族とこの世界をどうしたいかを知るための質問。


 そしてボクは、その問いに小さく笑って自信満々に胸を張ってから答える!


「ボクは人間も魔族も—――みーんなお花が大好きになってほしい!」


「………!」


「ん〜だけど、それだとただの押し付けだからね。みんな好きなものとか十人十色でバラバラだ。だから、みんなが仲良しになって互いに助け合って、好きなものを追いかけて探求したりとか、自由に生きられる世界にしたいかな?」


 たぶん、前までのボクだったら、自分の好きなもの一色に染めることだけを考えていた。


 だけど—――今は違う。


 それはゲームの中だからこそできたことであって、キャラクターの本心ではお花が好きじゃないかもしれない。


 もちろん、お花は好きになってほしい。


 ただ、押し付けはしたくないだけだ。


 だけど、この世界は現実で—――キャラクターには自分の意思がある。


 ステラを通して、そう思った。


「まぁ要するに、ボクは魔族と共存する世界を選びたい。……それがボクの考えだよ」


「………」


 ステラは俯いて考えてるようだ。おそらく、迷いに迷ってるはず。


 ステラの中には、確かに魔族を憎む気持ちもあって、確かに魔族を許したい気持ちもあるから。


 しばらく考えたのち、ステラは告げる。


「………わかりました。私もその考えに賛同いたしましょう」


「ホント!」


「はい……。センカ様を見ていると憎むだけの自分がバカバカしく思えてきました。ならいっそのこと、自分の理想のために全力を注ぐべきだと、私は判断—――」


 ステラの言葉を遮り両手をとって、


「やったー! ありがとうステラ!」


 と、大きくブンブンさせてボクは喜んだ。


「よし! じゃあ早速、殺すこと以外で魔族を説得する方法について考えよう!」


「えぇ……」


 ステラから殺意は完全に消え去り、微笑んだ。




〜あとがき〜


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