第14話

 人間と魔族の戦争が拮抗してたのは確かだけど、実際にはボクたち人間は魔族よりも戦力の数が多いだけ。


 一人一人の個人の力は、圧倒的に魔族の方が優位だ。


 つまり—――人間が勝つなんてことは不可能。


 決して埋めることのできない、力の差がそこにある。


 そのことを分かりきってるからこそ、主人公である『勇者』が現れるまで、『リベリオン』の住民たちは反旗を翻さずにいる。

 

 そして、その中の一人には—――当然ステラもいる。


 だから、疑問に思って仕方がない。


 なぜステラが、魔族を殺すと言ったのか、それを可能にする材料はどこにあるのか、自信ありげなのか、確証はあるのか。


 ボクには思い付かなかった。


 だから、こうして訊ねた。今も思考を巡らして模索している。


 するとステラは、何を言ってるのか分からない、と言った表情で言う。


「センカ様、さきほどご自身の魔法について話していたではないですか。『あらゆる存在に対しての水分量を操作できる魔法』だと。そして—――お花にも人にも……魔族にもできると」


「つまり……というと? それがどうして魔族を殺せることに繋がるのかな? この魔法は、ただ水分量を操作できるだけだよ? そんな魔法で魔族を殺せるわけないじゃ~ん」


 ムリムリ、と手を横に振って呆れたように笑う。


 明らかにこの魔法は、戦闘向きじゃないもん。


 どう考えたって、お花のためにあるような魔法だ。


 だって物質の水分を操作するだけだよ? 

 

 たったそれだけで殺せるわけがない。ステラはなに言ってんだか。

 

 やれやれ、と思っていると、ステラから逆に呆れた視線と溜息が返ってきた。


「センカ様……気づいていないのですか?」


「えっ?」


「水分量を操作できるということは—――魔族を枯らして殺せる、ということなのですよ」


「………」


 しばらく沈黙する。そして理解が追い付いてきたボクは、こう言うんだ。


「—――そういうことかぁあああああああああ!!!」


 否—――叫んだ。


 腹の底から、心の底から叫んだのだった。


 そしてボクの考えてることと、ステラの考えてることを照らし合わして答え合わせをする。


「つまりステラは、ボクの魔法によって魔族の体内にある水分を飛ばして、枯らし殺そうと考えたわけだね……」


「はい、その通りです。やっとわかってくれましたか。そうです、いくら魔族といえど生きる上では水分を必要とします。するとどうです? センカ様の水操作魔法であれば魔族の水分を操作しゼロにすることで、しっわしわの皮だけ残った屍へと変えることができます」


「う、うん……」


「まさに—――無敵の魔法、ですね。これなら魔族を殺すことなど造作もないこと。そうして魔族という邪魔でしかない害悪がいなくなった世界で、私とセンカ様、二人っきりの『花園』という名の理想郷を……」


 そう言って、と三日月のように口角を上げるステラに……ボクは恐怖からか思わず身震いした。





〜あとがき〜


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