第13話

 —――違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!


 ステラがそんなことを言う訳がない!! 


 いくら魔族を憎んでるからって、あの心優しいステラが「ぶっ殺す」なんて言葉を言うはずがない!! 


 それにステラの辞書にはそんな言葉は載っていない!!


 こ、これも聞き間違えなんだ……。


 ううん違う……悪い夢を一瞬、見せられてたんだ……。きっとそうだ……!!


 —――そうだと言ってよ!! 頼むよ!!


 そんなわけでボクは、悪夢から目を覚まそうとステラに確認をする。


「ご、ごめんステラ……ちょっと悪い夢を見てさ……。ステラが『魔族をぶっ殺す』なんて……。そんなこと……ステラが言うはずなのに……どうしてなのかな……」


 あははっ、と苦し紛れに、一縷の望みに縋るように笑うと、ステラはボクに呼応するように微笑む。


 しかしそれは……何かを企むような不敵な笑み。その瞬間—――ボクは理解した。


 あぁ、これは—――


「悪夢なんかではないですよ。私は紛れもなく―――魔族をぶっ殺すと言いました」


 やっぱ夢じゃなかったのかぁあああああああ!!! ……と。


 ボクはステラの悪意のない純粋無垢な笑顔を見てられず、顔をそらしてぽつりと一筋の涙を瞳から落とす。

 あぁ……まさかあのステラが本当に「ぶっ殺す」なんて言うなんて……未だに受け止められない。


 にしても殺す……それもぶっ殺すか……。


 普通、ギャップってのは魅力的に感じることがほとんどだけど……今回の場合はスゴくショック……。


 そしてそういうことか……。


 ショックを受けるということは、『ステラ』というゲームキャラクターの少女に対して、勝手なイメージを持っていたんだ、ボクは。


 それも無自覚に。なら今後は、ステラの属性を『優しい』にプラスして『腹黒』を追加しよ。


 まぁだからと言って、ボクはステラを避けないし、変わらずに接する。


 よくよく考えればそうだ。

 

 ステラのように、どんなに心優しい人だって『憎しみ』は心のどこかに少なからずある。


 ただそれが現実となって、ボクの前に現れただけだ。


 うん、ただそれだけのこと! 


 ……そう思わないと、ステラと一緒にいられないかもしれない。


 そう結論付けたところで、改めてステラと向き直る。そして、ふと思った疑問を投げかける。


「……ステラが魔族を殺したいという気持ちはよーくわかった……。だけど、どうして魔族を殺せるって思ったのかな? ステラも魔族たちの力は良く知ってるでしょ?」




〜あとがき〜


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