第12話

「えっ? ですがそれでは、萎れていたアネモネを復活させることはできないはずでは?」


 ステラの疑問の言葉に説明不足だと反省しつつ、詳細に説明を始める。


「正確には—――水分があるもの……。例えば、お花もそうだし人も魔族もそう……そして、雲といったあらゆる存在に対しての水分量を操作できる魔法だよ」


「だから、萎れていたアネモネを元気にすることができたのですね」


「うん。萎れてるってことは水分が少ないから、アネモネの水分量を上げたんだ」


「まさにお花のためにあるような……夢のような魔法ですね……」


 手に持ってるアネモネを見つめながら、しみじみと呟くステラ。


 でも……その瞳には寂しさの色が見えた。ステラは水魔法の持ち主。


 水を与え続けることはできても、ボクのように調節することはできない。


 それが一方的に愛を押し付けてるように感じたのだろう。


 そんなことは無いよ。


 と、慰めの言葉をかけた方がいいんだけど、あくまでも憶測だから外れてる可能性も考えられる。


 けど、何かを思ってるのは確かで……どうしたらいいんだろ?


 そう悩んでいると、


「あぁ――――っ!!!」


「うわぁあ!?」


 突拍子もなくステラが聞いたことない大きさで叫んだ。


 ボクはそれに情けない悲鳴を上げて尻餅をつく。


「痛ててててっ……。どうしたのさ、ステラ!? 急に叫んだりして!?」


「センカ様! センカ様! 良いことを思いついたのです!」


 立ち上がってお尻を摩って僅かばかりの痛みを和らげると、ステラは瞳をキラキラとさせてボクに近づいてくる。


 その瞳を見て、謎の息苦しさと圧迫感のようなものを感じた。


 なぜなら、誰もが見惚れるようなその可憐な瞳に—――純粋な狂気が宿っている気がしたからだ。


 いやな予感がする……。


 だけど、そう理解してるのに……何だろう?


 めちゃ興味がそそられる、この感覚は……!


 背筋に悪寒が走ってるというのに、這い上がってきてるのに、場違いなほどに好奇心が湧き上がってくる……!


 あぁダメだ……気になるぅううう!!


 ついにボクは、溢れんばかりの好奇心に抗えず……闇の世界へ足を踏み入れようとする……。


「……良いことって、どんなことを思いついたのかな?」


「はいっ! センカ様の水操作魔法で—――魔族を全員ぶっ殺すのですっ!」


「……………はっ?」


 何だかデジャブ感のある疑問の言葉が、ボクの口から発せられた。




〜あとがき〜


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