第11話
き、聞き間違えかな~? 今、素晴らしいって聞こえたんだけど……。
「い、今……素晴らしいって言った? 母さんの印象が変わったとかじゃなくて、素晴らしいって言った?」
「はい。お母様に対する印象も勿論、変わりましたが、素晴らしいという言葉が一番に頭に浮かんできました。我が子のためにそこまでなさるなんて……素晴らしいという他に何といえましょうか!! 心から尊敬します!!」
早くお会いしてご挨拶を、と鼻息を荒くしてボクに迫るステラ。
こ、ここまで母さんへの印象が百八十度変わるだなんて……流石に想像できなかった……。
予想外の好印象にボクは思わず苦笑いしながら、興奮状態のステラを落ち着かせる。
「ま、まぁまぁ、落ち着いてよ。それに会うことはできない……ここは異世界なんだから……」
「そ、そうでした……」
瞳を伏せて落ち込むステラを見て、ボクは寂しさを感じていた。
ステラが母さんに会いたいって言ってくれてスゴく嬉しいんだけど……ボクも会いたくなってきちゃったなぁ……。
やっぱり母さんの話をすると思い出しちゃうね……元の世界での日常を……。
これがホームシック?
あぁ、母さん……今、何してるのかな? ボクと同じで会いたいって思ってるのかな?
一度思い出すと、母さんのことばかり考えてしまう。堰を切ったかのように……。
次々と脳裏に母さんとの穏やかな日常がフラッシュバックする。
でも、もうやめよう―――今のボクの現実はこの世界だから。
これ以上は……ダメだ……っ!
―――我慢するんだ……っ!
瞳から熱いものが零れそうになるのを必死に抑えていると、
「ところでセンカ様。水操作魔法とは一体、どういう魔法なのでしょうか?」
落ち着きを取り戻したステラが、そんなことを訊いてきた。
そしてボクは—――その言葉によって、一気に現実へと引き戻された。
今はもう、瞳に宿っていた熱いものがどこかに消えている。
どうやら、その熱さは別の場所へと移ったらしい。
ねぇ早くない!?
いくら何でも切り替え早くない!?
ボクなんか、めちゃくちゃ母さんのこと思い返して引きずって、何とか気持ちを立て直そうと必死なのに!?
早くないかな、ステラ!?
もうちょっとさぁ、感傷に浸ると言うかさぁ、君ってば、そういうの無いの!?
機械のような心なの!?
……って、それはないか。
表情には一切出さないように、内心でステラに文句を叫びまくる。
しかし、文句を言う途中、冷静になったボクは、ステラは優しい子だということを思い出した。
ステラの心が機械に冷たくない。
寧ろ、温かい。
ただ単純に、母さんに会えないという現実を受け止めて、前に進んでるんだ。
立ち止まってるのは、ボク。
変わるべきは、ボクなんだ。
うん、ステラを見習うべきだ。
それに、『こんなことでクヨクヨしたらダメよ!』って母さんに叱られちゃう……。
母さん……大丈夫だよ。ボクはこの世界でも楽しく生きてやる!
では早速、決意が固まった所で―――。
「……ボクの魔法について、まだ説明していなかったね。うーん、説明するほどでも無いんだけどね。名前の通り、水を操作する魔法だから」
〜あとがき〜
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