第4話

「……!」


 予想外のステラの叫びに、ボクは思わず驚いた。

 まさか、そこまで強く否定するなんて思わなかったから……。


「私に嫌がらせをしていたセンカ様が、現にこうして優しく接して、朗らかに笑みを向けてくださって! くださって……」


 ステラは先ほどの勢いが失速して、尻すぼみなりながら申し訳なさそうな顔で呟く。


 「いえ……センカ様の言う通り、正直私の心のどこかに疑いの気持ちがあるかもしれません……」


 そして最後に、ごめんなさい、と頭を下げた。

 

 ステラ……キミは……。


「ふふっ」


「センカ様……?」


 何で笑っているの? と言いたげに、少女は不思議そうに腰を折ったままボクを見上げた。


 何で笑ってるかって、そんなの決まってるじゃん。


 だって、キミが—――


「あんまりにも正直に話してくれるもんだからさ、ついつい……。ううん、違うか……。ホント、ボクの知ってる通り—――真っ直ぐで嘘がつけなくて眩しくて……だから笑っちゃった」


 主人公が負けイベで負けて弱気になって沈んでた時……ステラの真っ直ぐな言葉で励ましてくれたおかげで……主人公は能力的には勿論、精神的な成長をするんだ。


 だからボクは……その言葉が欲しくて何周もプレイしたんだろう、とふとそんなことを思った。


「センカ様……」


「笑って気を悪くさせたら……ごめんね?」


「……!! そ、そんなことはございませんっ!! 今は……今はもう疑う気持ちなどどこにもありません! むしろ、確信を得ました! こんなことを以前のセンカ様になら絶対になさらないので! あなたは正真正銘—――この世界に転生した『新生』センカ様です!! で、ですからもう大丈夫です! そ、そそそのかわいらしい仕草を……!!」


 うぅ……、と恥ずかしそうな声を漏らして、顔を真っ赤にするステラ。


 どうやらボクの舌ペロウィンク謝罪は、純粋無垢な少女の前では効果抜群だったようだ。


 ボクは人差し指を唇に当てて、ツンツンと叩く。


 ステラが信じてくれたのはスゴく嬉しい! んだけど……何だか釈然としない。


 ボクの舌ペロ謝罪を早く終わらせるための方便にも聞こえた。


 つまりステラの本心では、まだボクが前世の記憶を持ってるセンカだとは思ってない。


 —――つまり疑問がまだ残ってる、ということ。


 なら、それを証明する必要があるんだけど……実は一つ、その方法が思い浮かんでる。


 しかし、その方法が成功しちゃうと、矛盾というか何というか……色々と辻褄が合わなくなっちゃうんだよね……。


「—――でも、まぁいっか。ステラ、これから君に見せたいものがあるんだ」




〜あとがき〜


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