第3話

 前世の話を終えると、ステラは戸惑いながら順々に内容の確認をする。


「え、えっと……センカ様は『地球』という、こことは違う場所から来て……」


「うん」


「そこでお母様と一緒にお花屋さんの手伝いをしていて、だからこうしてお花に詳しいわけで……」


「うん」


「そしてここが『ブレイブ・オブ・フロンティア』というゲーム? の世界で、気が付いたらセンカ様に転生していて、目の前にはそのゲームの登場人物である私がいて今に至る、と……」


「うん! その通り!」


「何て羨まし—――いったい、どういうこと!? 訳が分かりません!?」


 ステラは両手で頭を抱え、ブルブルと体を震わせる。


 そして—――嘆いた。


 今……真っ先に『羨ましい』って言いそうになったよね? そうだよね?


 それってお花を自由に愛し、育てられる『地球』が羨ましいって、そう思ったからだよね!?


 まっ、お花好きだったら誰しもそう思うのは当たり前か。


 何せこの世界は、人類が生み出してきた文化や心を豊かにする娯楽が、魔王によって破壊され再起できないよう禁止してるのだから。


 ボクもステラの立場だったらそう思う。


 —――絶対に。


 好きなことができず、探求することすら許されていないほど、苦痛なものは無い。


 気が狂いそうになる……正気を保てる自信がない……。

 

 —――でも。


「信じて……くれる?」


 さっきまでは信じてくれるかどうかは二の次だったけど、やっぱり自分のことを話すと信じてほしいという思いが生まれた。


 —――前世の記憶を持つという、極めて不気味で不可解な存在であるボクを……受け入れてほしいと願ってしまった……。


 だから、この少女にそう訊いた。


 不安な気持ちになりながら、ステラの言葉を待つと、


「それは……その……」


 ステラは頭を抱える手を下げ、気まずそうに下を向いた。


 そんな少女の姿を見て、納得すると同時に心が苦しくなった。


 きっとどこかで、期待してたのだろう……この苦しさはその反動。


 ボクはその苦しさから解放されたくて、あははっ、と振り払うように笑い、そして苦し紛れに誤魔化し始める。


「そうだよね。いきなりこんなこと言っても信じられないよね?」


「—――そんなことはありません!」




〜あとがき〜


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