第10話 探すは抜け穴

 今日はおじじのところではなく、俺の今の家であるアパートに帰ってきた。

 移住者向けの支援付きの安アパートだ。


「ああ゛~、疲れた」


 身体的にというよりは精神的に。

 そしてそれが肉体にまで影響しているのか疲労感が半端ない。


 昼飯もおじじのところでなんか作ろうと思ってたから用意してないが、今はちょっと何かを食べたい気分ではないので後回しにして、シャワーだけさっと浴びてベッドに寝転がる。


「このまま寝落ちてえ……駄目だ、ちゃんと調べよう」


 寝転がりつつも、スマホを操作して色々と検索をする。

 

 まとめ系のサイトやギルド公式、大学など研究機関の成果に、掲示板やSNSなど民間の声。

 調べるのは、『スキル』とは何か、どんなものか、どういう仕様かという様々な情報と。

 俺がフロンティアで目撃したあの巨大なモンスターや、そこからワープさせられた先の情報。


 その他様々なフロンティアに関する情報や発見の歴史。

 今の俺には、絶対的に知識が不足している。


 自分で色々とやってみたいと思ってはいたが、取り敢えず俺のスキルがちょっと変な気がするので、妥協してスキルについてはちゃんと調べたい。

 先のエリアのモンスターや地形などは調べないようにするので、自分での発見はそっちで楽しむことにする。


「現在確認されているスキル……これ公式じゃないのか」


 まず調べてみたところ、スキルを公開する義務というのは無いらしい。

 というか、冒険者の上位組織はギルドであり、ギルドはステータスカードを回収してスキルの把握をしているので、冒険者自身はそれ以上他所に公開しなくて良いのだ。

 基本的には個人情報なので秘匿されるし、例え犯罪があって調査が行われるとしても、それはギルドが記録している情報を元に対応してくれる。


「……めんどくさいのは避けられそうか」


 これで取り敢えず俺の懸念の1つがなくなった。

 ぶっちゃけスキルを今後使っていく上でどうするかとか、スキルについて知りたい以上に、『これなんか普通じゃないっぽいから面倒くさいことになりそうだな?』と思っていたので、取り敢えず取得したスキル云々でどうこうなることはなさそうで良かった。


 特に希少なスキルを持ってるせいで目をつけられるようなことは避けられそうだ。

 ギルドにはバレているが、それは仕方ないので無視する。

 

「《死亡耐性》は、流石になあ」


 特に《死亡耐性》スキル。詳細確認しておくのを忘れたが、明らかに耐性系スキルとして異質だと思う。

 実際それを受けないと発生しない耐性系スキルに《死亡》て。


 それ一回死なないと取得できないスキルってまるわかりじゃないか。


「ユニークスキルとかレアスキルみたいなのは無いのか?」


 更に調べてみれば、少なくとも表に出ている情報の限りでは、希少なスキル持ちが集められたり国に囲われたりしている、というようなことはない、らしい。

 そもそもゲームとかラノベであるような希少なスキル持ちとか、スキルが進化するとかそういう話は無いようだ。

 有用なスキルというのはいくつかあるらしいが、それが滅茶苦茶希少かというとそうではないらしい。


 いや、これに関しては秘密裏に行われてる可能性もあるか。

 まずすぐ安心は出来ないな。


「だってファンタジーだもんなあ。それこそ、アイテム開発のスキルとか転移のスキルとか持ってる人いそうだし、そういうのは国とかギルドも保護したいよな」


 世界情勢的に考えて。


 今の社会において、国同士の戦争、紛争というのはほとんどない。

 なぜならそこで戦わなくてもフロンティアから資源を持ってこれるからだ。

 

 代わりに、有力な冒険者や希少で効果の高いアイテムなどが国の財産として扱われるようになっている。

 特に有能な人材の流出は出来るだけ避けたい、らしい。

 スキルにおいては地球でも使えるので、一部のスキルはとんでもなく有用なのだ。

 例えば今現在外国の富豪はバリアを張れる冒険者を雇っていたりするらしい。


 他にも内部容量を拡張できるアイテムバッグとか、怪我を簡単に治してしまうポーションとか、他にもとんでもないアイテムもあるらしい。

 俺には遠い話だが、そういうのを持って帰ったら下手したらそれ1つで遊んで暮らせる可能性もあるとか。




 その他色々調べたところ、スキルの取得条件やレベルアップの条件など検証されているものについてはわかった。


 基本的には藤澤さんの言っていた通り、攻撃系のスキルはモンスターの討伐によって発生するらしい。

 例えば《剣術》スキルや《斧術》スキルは、俺がモンスターをそれらで倒したから取得出来た。


 ただここにも1つポイントがある。

 それが俺の《学習効率》スキル。


 このスキル自体はそれなりに持っている人はいるそうだが、その中でもレベル3を持っている人は少ないらしい。

 そしてレベル3のこのスキルは、モンスターを倒さなくても、その行動をモンスター相手に取るだけでも経験値として加算してくれるようだ。


 つまり、《学習効率》スキルをレベル3以上で持っていない人は剣でモンスターを倒さないと《剣術》スキルを取得できないしレベルも上がらないが、持っている人はモンスターを剣で切って攻撃するだけで《剣術》スキルに加算されるしレベルも上がる。


「で、それの活用がこれと」


 そしてそんなスキルの少しばかりずるい活用法として、『自分よりはるかに強いモンスターを斬ってレベリングをする』というのがある。


 通常モンスターを倒してレベルアップする際、その相手が冒険者にとって格上であればあるほど得られる経験値は多くなるらしい。

 

 ただ普通は格上の相手を倒せない。

 例え強い冒険者の援護があっても、レベルの低い冒険者の攻撃は強いモンスターの命に届かないのだ。


 そこで、『倒さなくても攻撃するだけでレベルに加算される』という仕様を利用して、更に遥か格上のモンスター相手にそれをすることで取得できる経験値にレベル差ブーストをかける。


「俺ボッチだからなあ」


 まあ俺はボッチなのでそういうことは出来ないのだが。



 さて、ある程度フロンティアのこととか、スキルについては調べることが出来た。


 取り敢えず当面すごく使えそうなのは《学習効率Lv.3》。

 シンプルに経験値効率が良いのでレベルが上げやすいし、格上のモンスターに攻撃できればそれだけでレベルが稼げる。

 まあその過程で死なないことが前提だけど。


 耐性系のスキルはあれば有用だが、そもそもそこまでダメージを受けるべきではないという評価が一般的だ。

 まあフロンティアで命がけの冒険、戦闘をしているとはいえ、そこで重度の火傷とか負ってたら命がいくつあっても足りないからね。


 《剣術》《斧術》等の武器系スキルは、今後戦っていけば順調に伸びるし、剣の腕が上がることでも上昇するらしい。

 このあたりはまだはっきりとしてないらしいが、モンスターを倒すことで得る経験値でレベルが上がるが、腕前でも上がる。逆に腕前だけでは上がらないし、モンスターを倒すだけでも上がらない。

 腕前が良い方がスキルのレベルアップが速かったりもするらしい。


 まあ要するに、ちゃんとモンスター倒して、武器を使う技術も磨けってことだな。


「そんで、《写身》、なあ」


 今のところは肉弾偵察と、耐性系スキル盛り放題?

 いくら火傷しても怪我しても本体には反映されないし。


「これ、意識移さないままダメージ与えてもだめかな」


 取り敢えず《写身》スキルについては、いくつか思いついたことがあるので今度試してみようと思う。

 活用する方法が見つかれば、何か光りそうな気がする。

 そんなスキルだから、まずはこれの調査から俺の冒険を始めていこう。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る