第4章~2幕、心の泉~
クレイブの退治に成功した三人、興奮冷めやらぬなか、エルがハチドリを手のひらで受けながら、
「ハチドリさん、助けてくれて本当にありがとう!」
「エルさん、いいんだよ。僕もエルさんに助けてもらったんだから。間に合って本当によかった。でも、もう行かないと仲間が待っているんだ。」
「そうなんだね。本当にありがとう。ハチドリさん、これからもずっと友達だよ。」
ロコとエージも駆け寄ります。
「鳥さん、ありがとう。疲れたらいつでも私たちの森で休んでいってね。それまでに森を綺麗にしておくから。」
「おぅ、おいら達も、もう友達だぜ!」
「その時はゆっくり、お邪魔させてもらいます。森の精霊さんたち。みんな、またね。バイバイ。」
そう言って、羽ばたき一つ、空へと向かうハチドリを見送り、三人は心の泉へ戻る事にしました。
森はまだどんよりしたまま、、、。
「ねぇ、エージ。クレイブはやっつけたけど枯れた木々に元気が戻らないわね。」
ロコの不安な顔を見てエージが言います。
「大丈夫さ、心の泉にかけられた魔法はとけているはずさ。それよりロコ、怪我はないか?」
「私は大丈夫、エルさんは大丈夫?」
「僕も大丈夫だよ、みんなや、ハチドリさんのおかけで。それに友達にもらったお守りもあったから。」
エルはお守りの四つ葉のクローバーを見せようと、ポケットから取り出しかけたその時、エージが声をあげました。
「そ、そんな!泉がまだどろどろのまんまだ!」
エージがあわてて泉にかけより、エルとロコも後を追いかけます。
「本当だ、泉の水はまだどろどろとしたまんだね…。なにか戻す方法を考えなきゃ。」
「きっと、まだ魔法がとけてないんだわ、強力な魔法だもの時間がかかるのかも知れないわ。」
「おいらの大切な心の泉が…。」
泉のふちに座りこんでぼうぜんと見ているエージの横に、エルも座ろうとした瞬間、ポケットから取り出しかけた四つ葉のクローバーがスルリと落ちました。
「あっ!お守りが!!」
エルが思わず叫びます。
その時でした。
ポケットから落ちた四つ葉のクローバーが泉の水に触れた瞬間、まばゆい光が泉全体をおおいつくし、みるみる心の泉が美しく輝きだしました。
「す、凄いよ、ロコ、エージ…。」
「泉の水が元に戻ったわ…。」
たちつくすエルとロコ、エージは何に気が付いたように、あわてて泉に落ちた四つ葉のクローバーを拾いあげて言います。
「おい!エル、こ、このクローバー、もしかてルイから貰ったのか!?」
「う、うん、そうだよ。友達の証に勇気のお守りにってルイから、なぜわかったの?」
エージはエルにクローバーを渡して
「エル、やっぱりお前は凄いやつだったんだな。」
エルが不思議な顔していると
「そのクローバーはな機械の町に咲く唯一の花だ。ルイがここの泉の水をくみに来て大事に育てたものだよ。」
「そうなんだ…エージ。」
「あぁ、しかも泉の不思議な力と同じように持つ者の心をうつすんだ。だから泉の水も…。ルイはよほどの事がない限り、誰かにあげたりしない。しかも幸運を呼ぶ四つ葉のクローバーなんて宝だせ!なぁ、ロコ!」
「そうね、きっとエルさんの事を大切に思っているんだね、ルイちゃんは。エルさんの心の美しさを分かっていたのかも。そのクローバー、大切にしてね。」
ロコが優しく微笑みます。
「そうなんだ…。うん!大切にするよ!」
三人は輝きを取り戻した泉をしばらく見つめました。
「よーし!心の泉が元に戻れば森もすぐに元どおりになるだろ。ありがとうなエル!おいらたちも頑張るからエルも頑張るんだぜ!」
「エルさんなら大丈夫よ。優しくて勇気があって。」
「ありがとう、エージ、ロコ。僕、絶対に空を飛んでみせるから。森も早く元に戻るといいね。応援してるから。」
「でも、なぜクレイブの魔法が解けなかったのかしら?」
「ロコ大丈夫さ。泉も元に戻った。また、頑張ろう!エルとハチドリとの約束だせ!」
「うん、エージ。さぁ、エルさん今日はまたうちでゆっくりしていって、明日森の出口まで案内するわ。」
「ありがとう、そうさせてもらうよ!」
その夜は、月明かりに輝く心の泉の光に包まれ、笑い合い、語り合いました。やがて、朝が来て、新しい出発の時がやってきました。
「さぁ、エルここでお別れだせ!海の綺麗な岬はしばらく行けば、すぐに分かるよ!おいらたちは友達だからな!なぁロコ。」
「そうね、エージ。エルさんも今度は綺麗な森で会えればいいわね。エルさんの願いが叶う方法が海の綺麗な岬で見つかる事を祈ってるわ。」
「ありがとう、エージ、ロコ。どうなるかは分からないけど、行ってくるよ。ずっと、ずっと、友達だよ!!」
三人は固い握手をしました。エルは想いの実る岬へと歩きだしました。
遠くに輝く心の泉を眺めながら…。
リトル エンジェル Shin @littleangel
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