第3章~導きの森~
機械の町を出てエルは片羽を動かしながら色々考えていました。
「雲の上にいる時は、この片羽のせいでいじめられてたけど、この世界に落ちてきてからは、色々な人に出逢えて、友達になってくれたし、よかったけど、本当に羽、なおるのかなぁ。想いの実る岬ってどんな所だろ…。」
そう思いながら歩いていると、辺りは薄暗くなりはじめ、前の方に枯れた木々が見えてきました。
「おかしいなぁ?ルイが言ってた森ってここなのかな?なんだか薄暗いし、それにこの森、とても悲しそうな感じがする。」
エルが森に足を踏み入れると木々は枯れ、土はどろどろしています。
「綺麗な森のはずなのに…。ここであってるのかな?」
その時、突然エルの頭の上を振り子のようになった木がかすめます。
「うわっっ!!」
びっくりしたエルがしりもちをつくと、木の上から誰かが降りてきました。
「痛たた、危なかったぁ。いったいなんだぁ。」
エルが起き上がると、葉っぱを編み込んだ服にツタのカチューシャを付けた小さな女の子が近づいてきました。
「あっ、あれぇ?あなたは?」
「僕はエル・ジェンだけど…。」
それを聞いた女の子が戸惑いながら、木の上に向かって言いました。
「エージ!!違ったよ~!早く降りてきてぇ!」
すると木の上から男の子が慌てて降りてきました。
女の子と同じように葉っぱを編み込んだ服とドングリの帽子をかぶっています。
「ごめん!君、大丈夫かい?」
「ひどいじゃないか、いきなりこんな事するなんて!」
すると女の子が走りより
「ごめんなさいエルさん。私はロコって言うの。こっちがエージ。」
「私たちはこの森に住んで木々たちやお花たちの世話をしているんです。」
ロコに続けてエージが言います。
「悪い、エル。おいらはこの森の奥の心の泉を管理しながら、ロコと一緒に森を育ててんだ。」
「だけど、最近、この森に悪い魔女のクレイブが現れて、美しかった森に魔法をかけてめちゃくちゃにしやがって、それでロコとクレイブをやっつけようと。」
ロコも続けて、
「そうなの。エージと私は森を元の姿にしようと頑張ってるんだけど、私たちの力だけじゃ、限界があって…。クレイブにめちゃくちゃにされてから、誰もこの森に近づかなくなってたの、来るのは綺麗な物が嫌いなクレイブだけ。だからエルさんを魔女かと思っちゃったの。気が付かなくてご免なさい。」
謝る二人にお尻の土を払いながらエルは答えます。
「いいんだ、なんだか大変そうだね。綺麗な森って聞いていたのに、凄く悲しんでいる。この森の木々や花たちは。」
エルは森を見渡しながら、
「ねぇ、ロコ、エージ。僕も手伝うよ。なんとか、魔女をやっつけなくっちゃ、そうだ!この森の泉には不思議な力があるって聞いたんだけど。」
「心の泉だろ。森を育てるのに必要なんだけど、今はおいらとロコが持っている瓶の中に入っているのが、最後なんだ。」
「後はクレイブの魔法で汚されて、全然、効果がないんだよ。なぁロコ。」
「うん、私たちの持っている分じゃ、どうにもならないし。クレイブも今は森も荒れ果てて、たまにしか姿を見せないし、誘き寄せるいい作戦があればいいんだけど、もう綺麗な木や花がなくて…。」
「そういう事だエル、君は他に行くところでもあるんだろ?おいらたちはなんとか考えて見るよ。」
ロコとエージが立ち去ろとすると、あわててエルは、
「そんなのダメだよ!ほっておけないよ。僕も何か考えるから。」
その時、エルはふとポケットに手をいれました。
その中にはモーからもらった花の種が…。
「あっ!あるよ友達にもらった綺麗な花の種が、これでなにか出来ないかな?」
立ち止まり種を見たエージは
「いいのかよ、エル、その種は、大切な物なんじゃないのか?」
「気にしなくていいよエージ。役に立てるなら友達も喜んでくれるとおもうし。」
「そうか、ロコどうだ?」
「うん。ありがとうエルさん、花を一輪咲かせるくらいなら、私の持ってる泉の水の分でなんとかなると思います!」
「そうか、分かった。そして綺麗な花を嗅ぎ付けてきたクレイブにはおいらが持っている泉の水をぶっかける!」
「それで行こう、ロコ、エージ。後は罠を仕掛けなきゃいけないね。」
そして三人は森のはずれに引き揚げ式の網の罠を仕掛けましまた。
「出来たねエージ、エルさん、後は花を咲かせて誘き寄せるだけだね。今日は暗くなったから私たちの小屋で休みましょ!案内するわ。」
「そうだな、エル、疲れただろ、うちでやすもう。こっちだ。」
三人が森の奥に進むと、どんよりした泉と小さな小屋が見えてきました。
「これが、心の泉さ、今はクレイブの魔法で毒されてこんなだけど、今日はゆっくり小屋でやすもう。」
そうしていよいよ三人は次の朝を迎えます。
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