<第2章>~命の巡る街~

想いの降る街を後にしたエル、命の巡る町へ向かう途中…、

『ねえ、君。ねえ、君。』

どこからか声が聞こえて来ます。

『ねぇ、ここだよ、ここ。』

エルがふと、道の横にあるゴミ捨て場の方をみると、そこには小さなものが、動いていました。

『ねぇ、ここだってば。』

「君は?そこで何をしているの?」

エルが話しかけます。

『僕は、ルイ・サリク。この先の町に住む妖精さ!』 

「僕はエル・ジェンだよ。さっきから呼んでいたのは君?」

『そうだよ、エル、少し手伝って欲しいんだ。この大きな鉄の塊を町まで運ぶのを手伝って欲しいんだ。』

「その町は命の巡る街?」

『あぁ、そうだよ、そう呼ばれているんだよね。僕たちの町は。』

『想いの降る街から来たのかい?エルは。』

「そうだよ!!命の巡る街に行く途中なんだ。」

『そっか、ちょうど良かった、さぁ街まで案内するよ。』

二人で鉄の塊を運びながら、ぼこぼことした道をしばらく行くと、小さな鉄の門が見えてきました。

『さぁ、着いたよ。エル。ありがとう、運ぶのを手伝ってもらっちゃってさ。』

『僕のうちに行こうよ。お礼もしたいしさ!』

「いいの?」

『もちろんさ、行こうエル。』

町には色々な音が響き、所々で煙があがり、時おり熱い風が吹いてきます。

『さぁ、着いたよ、中へどうぞ。』

「う、うん。」

『おどろいたかい?この町の名前は機械の町さ。僕はあの悲しみの道に捨てられている、まだ使える物を利用して、この町の修理や、その物を直して想いの降る街で、色々と交換してもらっているんだ。』

エルは目を輝かせて

「凄いねルイ!修理屋さんなんだ!ねぇ、ルイ!僕の片羽も修理出来るかな?」

ルイはエルの片羽を見上げて、

『エル…。ごめんなさい。僕には君の羽を修理は出来ないんだ…。』

「そうなんだ…、やっぱりダメなんだ…」

エルが悲しんでいると、その時、荒々しくドアが開き大きな男が飛び込んできました。

「おい!ルイ!ルイ・サリク!居るんだろ!」

慌てる大きな男を見てルイは

『メクリイさん、どうしたの!そんなに慌てて!』

「すまん、一大事なんだ!欲望の町のやつらが、この町の物は全部、俺たちの物だって言い出しやがったんだ!すぐ、来てくれ!」

『エル、一緒に行こう!』

三人は町の広場に急ぎます。大きな歯車がある広場に着くと人々が集まっていました。すると。

「来たなぁ、ルイ・サリク。俺は欲望の町のポズインってもんさ。」

「お前たちは俺たちが捨てた物を使って、整備や商売してるらしいじゃないか。」

『そんな!僕たちは君たちが無駄にしている物を直して、皆に喜んで使ってもらっているだけだよ。』

するとルイの後ろからエルが

「あ、あの。僕はエルって言います。僕はあの悲しみの道を通った時に、回りの森や、あそこに捨てられていた物たちが泣いているのを感じました。」

ルイの後ろからポズインを見上げるエルを見て

「なんだぁ!この片羽のガキはぁ?こんな不良品は早いとこ捨てちまわなきゃなぁ。片羽のポンコツは黙ってろ!」

ポズインはエルを見て笑っています。 

「僕は…ただ…。」 

今にも泣き出しそうなエルをみてルイは

『エル!君は間違って無いよ!いいかいポズイン。君たちが無駄に捨てた物達の気持ちを今、見せてあげるよ!』

ルイは広場の歯車を回し始めました。ゆっくり、静かに、煙を出しながら、歯車は動き出します。

辺りは煙に包まれて、何も見えません。 

するとポズインの周りから煙に紛れ声がし始めました。

…僕らは君たちに、捨てられてれた…

…まだまだ、頑張れるのに…

…僕らは、傷付けられた…

…一緒懸命、働いたのに…

「うるさい!お前らは、しょせんは使い捨てなんだよ!

うずくまったポズインに煙が襲いかかります。

「やめろ!ゴミどもめ!やめろぉぉ!」

しばらくして煙が引き始めると、そこにはポズインの姿はなく、大きな鉄の塊があるばかりでした。

するとルイが、

『まだまだ、使える物の気持ちが分かったかい?反省するまでその中にいてもらうよ。』

『しかし、エルは凄いんだね。全ての物の気持ちが分かるんだ。おかげでうまく物達の精霊を呼び出すことが出来たよ!ありがとう。』

しかしエルは浮かない顔をしています。

「だけど僕はポンコツなんだ…片羽の落ちこぼれなんだ…。」

エルは目に涙を浮かべています。

『エル…君は…』

ルイの言葉をメクリイさんがさえぎります。

「おい、ルイ、今はそっとしておいてやろう…。」

『メクリイさん、わかったよ。』

『エル、僕たちは先に帰ってるから、必ず僕のうちに帰ってきなよ…。』

エルは小さくうなずいたものの、広場で1人、ただ空を見上げていました…。

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