先輩の家
秀斗は藤崎先輩の連れられて(?)家に向かった。そこには、建てられてそこまで経っていないであろう新築の6階建てのマンションがあり、先輩の部屋は4階の角部屋に住んでいる。先輩は可愛い犬のストラップが付いたカギをポケットから取り出してカギを開けた。
「ほらっ、おいで。入ったらソファに座って待ってて」
「お邪魔します...」
先輩の家は2LDKで内装はシンプルな家具ながら温かみを感じさせる木製を使っていた。また、女の子の家なんだなあっと感じさせるような甘い香り。そして何より先輩の恰好が問題だった。大きめのグレーのパーカーにショートパンツ、というラフな格好。しかも髪を結んでいるため白いうなじがちらちらと見えてしまい意識せざるを得なかった。
「ほらほらっ、ソファに座って。飲み物は...コーヒーでもいいかな」
「はい。コーヒーをお願いします」
先輩の家という未知の領域に来た秀斗だったが、少しづつ冷静になりつつある。
それは、家に帰った途端に先輩の様子が元の、大学の時に戻ったからだ。怖い。
同時に、町田先輩の心配をしていた。出会った初日にお持ち帰りしようとした年下は大学でも有名な藤崎美咲が目を付けている、という事実。しかも刃物が出てくる。
怯えるのも無理はない。
「誰の事考えてる?あの女?」
「っ!」
他のことを考えるあまり、コーヒーを届けてくれた藤崎先輩に気づけなかった。それだけ脳のリソースが限界なのだろう。
「女の子はそういうのに敏感なんだよっ?」
「...」
「でも、よかった。運が良かった。偶然秀斗くんを見つけられた。
大丈夫だった?あの女に変なことされてない?」
「はい、特に何も...」
「そっかそっか、安心したよぉ」
そう言って満面の笑みを浮かべる藤崎先輩。一方で冷や汗を垂らしながらぎこちない笑みを浮かべる秀斗。主導権を奪われたのは秀斗であった。
一旦落ち着こうとコーヒーに口を付けるも飲むのをやめた。以前先輩の家で貰ったコーヒーとは違い変な味がしたからだ。
そんな秀斗を見て藤崎先輩は、
「どうしたの?」
先程の仄暗い目をして秀斗を見つめる。秀斗が飲むのをじっくりと、少しの油断も許さないように。
「いえ、なんでも...(盛られたか?)」
そんな目で見られて飲めないと正直に言える秀斗ではない。
「(どうにでもなれ、頼む。意識だけは)」
普段は神の存在など一切信じない無神論者の秀斗であったがこの時ばかりは祈らずにはいられなかった。そんな思いのこもった祈りも空しく秀斗の意識は段々とぼやけて、強い眠気に襲われた。
「ぁあ...まっ、て。なんか、あたm...」
「どうしたのぉ?しゅうとくん。...ほら、ベッドいこっか♡」
まともな思考能力を失った秀斗を藤崎は陶器を扱うかのように丁寧にベットに連れ込んだ。ベッドに倒れこんだ秀斗が最後に見たのは、秀斗を惚けた目で見つめ、口端からでる涎を拭こうともせずに倒れこんでくる藤崎先輩の姿だった
「やっとだね、秀斗くん♡愛してるよ♡」
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