新歓
無事、入学を果たした秀斗の日常は、とても充実していた。
藤崎美咲とのご飯会は約束通り、ほぼ毎日開催されていた。それと同時に秀斗は注目を集めていた。それはなぜか。藤崎先輩の容姿が整っていたこと、それと同時になぜか秀斗の行く先々に先輩がいるのだ。なぜか。たまに玄関で待ってくれることもある。なんと後輩思いな先輩だろうか。そんな刺激的な日々を過ごす秀斗であったが、友人ができた。本当に良かった。
今日も面倒な講義に向かう途中、
「おつかれ!しゅう」
そう挨拶するのは、友人の
彼と友人になった経緯は心理学部のオリエンテーションの時に同じグループだったからだ。藤崎先輩との関係で何とも言えない注目を集めた秀斗がグループで孤立しているところに圭太から話しかけてきて、圭太の人懐っこさと秀斗の性格は相性がよく、それからたびたび話すようになった、大切な友人である。
「おう、おつかれ。そういえば5月末にある旅行サークルの新歓いく?」
今、大学では各サークルが新歓でのご飯会を餌に新入生を釣っていた。
そして、今秀斗と圭太はそれに釣られようとしていた。
「やー、俺はパスで。多分サッカーの練習があるからそっちいくわ」
「なんだよ、もう決めたのか。早いなー」
「言ってなかったっけ、俺小中高全部サッカーやってたよ」
「まじか」
「じゃあ、今度のは俺だけで行ってくるよ。」
「ん。じゃあ気を付けていって来いよー。あっ、お酒は飲むなよー」
「当たり前だろ」
こうして、秀斗は新歓のご飯会にまんまと釣られたのだ。
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藤崎先輩との食事会や学科の講義を受ける日々を受けていく中、ついに新歓の日になった。
「今日は新入生歓迎だよっ!!いっぱい楽しんでってねっ!!」
挨拶しているのはこの旅行サークル「
やはり、四回生だからかとても大人な雰囲気を醸し出しており、数人の女の子はうっとりとした様子だった。そして先輩たちの男はそれぞれ女の子の隣で話しかけていた。要はヤ○サーである。そんな欲望の渦巻く食事会の中、秀斗は戸惑いながらも唐揚げやフライドポテトを食べていた。違和感を感じながら。
「(あれっ、新歓ってこんな感じなのかな。それにしては変な感じだな)」
「ねぇ、ちょっと聞いてる?君。」
「えっ、僕ですか?」
「そう君、桐山秀斗くん?だよね?」
そう話しかけてきたのはさっきまで佐々木先輩の隣にいた人。どうやら、席替えで隣になったらしい。その先輩の恰好は白いニットに黒のロングスカートというシンプルな装いながら身体のラインが強調される服装をしていた。
「あぁ...そうです。その人です」
「私は
「ご飯食べれるって勧誘の時に聞いてそれで。」
「そうなんだっ、男の子だしね」
「今日は一緒じゃないの?彼女さん?」
「彼女?あぁ、藤崎先輩と僕は付き合ってないですよ、ただご飯を一緒に食べるだけの関係ですし。」
「ふぅん...じゃあ、フリーなんだ?」
「そうですね、それが?」
秀斗の答えを聞いた町田先輩は、目を細めながら口角を上げた。
「私も彼氏いないんだぁ...ねぇ、秀斗くん」
そのまま秀斗に体を密着させると耳元で
「ふたりで抜け出さない?」
甘い声でささやされ、意図が分からない秀斗ではない。が初対面で言われたのは衝撃で戸惑っていた。そうして、町田先輩を見ると、
片方を耳に掛けながら上目遣いで多少目元が赤い。そんな中、秀斗の手首を掴み町田先輩の太ももへと誘導した。そこは女性特有の柔らかな弾力があり、服越しではあるが、段々とその奥へと誘いながら、そのまま...の途中で手を止め指と指を絡めながら、再びそっと耳元で、
「ここから、先は...ねっ?」
年上のお姉さんの甘い魅力という抗いがたい誘いを断ることはできず、秀斗はご飯会を抜け出した。そうして熱くなった頭に浮かんできたのは藤崎先輩の初めて会った時の鋭い眼差し。
「(あの時の藤崎先輩、目が離せないっていうかこう、捕まえるような目線で僕を...」
道すがら互いの肩は密着しており、恋人結びでたまに腕に当たる胸に理性が悶えながらもホテルへと向かっている途中、ふと視線を路地裏の方に向けるとそこには見覚えのある人が立っていた。驚いて足を止めると町田先輩が、
「どーしたの。秀斗くん?」
と不思議そうな目でこちらを見てくるが秀斗はその人から目が離せなかった。
「い、いや、その」
そんな秀斗たちの動揺を無視して秀斗へと向けられたその一言は、彼女と僕の関係を決定するものだった。
「どこいくの?秀斗くん、その女の人だれ?」
「(やっぱり、つけられてたかぁ...」
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