入学式
秀斗たち新入生を歓迎するかのように、大学への通学路の両端を植えられている桜は満開で出迎えた。
「これからの大学生活に幸あれ」と、出会いの季節の春を迎え入れた。
「やっぱ、でかいなぁ。」
「私立華城大学」
秀斗たちが入学するのは、私立大学では中層であり、その敷居は低くない。しかし、この大学の魅力はあらゆる分野に教育費をかける姿勢とそれに魅力を感じた溢れんばかりの学生数、そして施設の規模である。それらは正門から見るだけでも圧巻である。大学という教育機関の壁を見せつけるかのようにそびえたっている。
この大学に入学したのは、秀斗の実家から近いことと、地元の人間がいないだろうと考えたからだ。
「おっと、式場に行かなきゃ」
そう式場に向かう彼を見つめる者、その者の視線は、秀斗だけに向けられていた...
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なんてことはない入学式を終え、帰路に向かおうとする彼の目は一人の少女を捉えた。というか、捉えざるを得なかった。なぜならその少女は目立ちすぎた。
艶やかな黒髪、スラっとした体形、なによりその瞳。
少女の瞳は、夜空のように綺麗な澄んだ色、甘い雰囲気を感じさせるもその中に宿る意思の強さを感じさせる、美しい瞳をしていた。
そして、その少女に見覚えがあった。いつも喫茶店で見かけるその少女だった。
「(えっ、何でここに...?なんで?ここの学生さんなのか...?)」
秀斗がその少女をぼぉっと見ているとその少女は秀斗の方に駆け寄ってきた
「あっ! 桐山くん!もう入学式終わったの?」
「あぁ、うん。終わったけど...。君は、いつも喫茶店の...」
「ちゃんと覚えててくれたんだ!良かったぁ...」
「そりゃあ、覚えるよ。あれだけ見かけたらね。それで、君は...?」
「自己紹介が遅れましたね。私は、
「そうなんだ。ってことは先輩?なのかな?」
「そうだね、ここの心理学部の四回生だよ。」
「(驚いた。まさか同じ学部の先輩だとは...でもそれにしては年上って感じがしない...なんというか年下?そういう人なのか?)」
「先輩だったんですね。よろしくお願いします!」
「うんっ!よろしくね!!」
「(やっと話せたぁ...それにしてもかっこよくなったなぁ♡でもまだ戻ってないんだね。私が絶対幸せにするからね。秀斗くんっ♡)」
こうして、主人公桐山秀斗と藤崎美咲は出会った。これが彼らにとって大きな出会いになろうとは知らずに。
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「そうだっ!桐山君。この後予定ある?無かったらご飯とかどうかな?」
「無いですよ。いきましょう」
よ
「駅前にね!...」
先輩に案内され、店に着くとそこは学生に人気なファミレスに連れていかれてた。
秀斗たちは店のテーブル席に座った。互いをテーブルの間になるように。
このファミレスの一押しは何といっても美味しいハンバーグ定食、しかも安い。
「藤崎先輩はなに頼みますか?」
「私はねー、ハンバーグ定食かな。桐山くんは?」
「僕もハンバーグ定食を頼みます。ここの美味しいんで」
「やっぱり?美味しいよね、ここの」
料理を食べ、楽しい雑談して互いにひと段落終える間、彼女は秀斗をじぃーっと見ていた。それはもう、蛇が獲物を捕らえて離さないようで、それでいて目を離せなくなるような眼差しで。見透かされているかのように。
「ちょっと、先輩さっきから見過ぎですよ、なんか変なもの付いてたりするんですか?」
「んー?なんも付いてないよ。ただ君を見てる」
「...どうして?」
「んー、内緒。ただ。桐や...いや秀斗くん、私と付き合わない?」
「...え?突然ですね。付き合うって先輩とですか?」
「うん、そうだよ。君と私が付き合うの」
「...............」
「...どうかな?」
「付き合えないです。ごめんなさい」
そう返すと、先輩はさも当然といった態度で。
「じゃあ、これはどうっ?昼食をこうやって二人で食べよ、場所は...学食かカフェテリア。ただその日は君と話したいな。どうかな?」
その返事を聞いた秀斗は彼女に強い危機感を持った。それはなぜか。
彼女が私について知っているのかもしれないと予感させる言葉を吐いたからだ。それは、彼女を警戒するには十分すぎる要素だった。しかし、そんな動揺とは反対にどこか納得もしていた。なぜなら喫茶店の時からずっと私を見ていたのだから、なにか気づくこともあるんもだろうと。半ば諦めていた。
「...わかりました。僕も先輩とのご飯楽しかったので。喜んで。」
「うんっ!よろしくね。秀斗くんっ!!」
そう答える彼女の笑顔はとても純粋に綺麗だった。とても綺麗な笑顔だった。
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