来訪者
「血中アルコール濃度が高くなると、1週回って真面目になる人がいてさ。」
「やば、2週回さなきゃってなって二瓶飲ませる」
「ダメだって。そいつはいつも1週回し状態にさせるのが正解だとそこのみんなが気づいて」
「で?どうなったの」
「ま、そっからはお見通しの通りです。アル中になって通常運転を真面目に変えてしまったわけ。」
「運転はできなくなったのに通常運転」
「ルーチンのようにずっと酒を飲ませて…」
「焦げちゃう、いただきます」
「あ!ずるいよそれ。誰が焼いてくれてると思ってるの」
「貴方が、私に、でしょ?」
「たしかに、その通りだ。その通りなんだけど。」
「安心して、途中で交代してあげるから」
もぐもぐ、まるでハムスターのように肉を頬張っている。横から見ると藤原さんの頬っぺたが通常の2倍になっている。これじゃもう藤原藤原さんだ。ダブル藤原さんになってしまう。
「ストップ!ダブル藤原さんストップ!」
「え?ダブル?」
藤原さんが連絡をとった二人が来る時間になっていて、我々は既に予定していた盗み食い…いや不正スタート?見切り発車?を始めて既に結構時間がたってしまった。二人前だけ食おうとしていたのに、もう四人前まで手を出そうとしている僕と藤原さんがいる。山奥の別荘まで歩いてきて体力と腹が減っているのだ。全てのご飯は運動してからが一番うまいから…既にうまいはずの牛肉がうまいまい状態…
「そういえば、今日来るお二人さんて誰?」
「ひゃふひゃふひゃ!」
「へ~そうなんだ。美味しくお肉を頬張る藤原さん以外の情報は入手できなかったけどなんとなく納得したわ。」
「後ろを!早く!」
「は?」
藤原さんが叫んだ瞬間、背後の何かは動きを加速させた。ステルスモードで接近してきたはずの背後の存在は、ばれたとたんに戦略を変え、対処される前に予定していた動作を完了させることにしたのだ。つまり、
後頭部を打撃されたのを認識するより先に意識が飛んだ。
「おじさん!!」
気づくと視野の画角が横になっている。僕は、倒れているのか。
かすかになっていく意識の中で、心配事が一つ。
「せめて食わせろや…まだ味見しかできなかったのに…。」
そこで意識の糸は切れてしまった。復旧まで体感1秒。目を閉じて、開けた瞬間、僕は閉じ込められていた。自分の別荘の中、死体とともに。
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