月が食われた瞬間(中の下)

「パラメータだよ。」

「はい?」

「スライドできるバー型のパラメータを、その場面と状況に合わせて、スライドさせること。」

「それが答えですか?」

「わからない。そもそもこれを言いつけるのも不正解になるはず。」

「ムカッとなりました。いま」

「ははは、怒るなって。適材適所という良い言葉があるから。」

「四字熟語!先人たちの知恵、真理はそこから来たのか」

「真理も存在しないと言ったら怒るよね?」

「…もちろんです」


僕はボコボコになってしまった。


「こういうとこが嫌いなんですからね!」

「好きな女性をからかう悪いくせがあってね。」

「…パラメータのことは理解しました。次の話に移ってください」

「その前に、栄養補給。」

「あっ、ミルクレア!ずるい!一本だけですか?」

「もちろん、もう一本あるよ。」


彼女の顔が明るくなる。


「2本目も僕が食べるけど。」


失望した顔。


「そして今回持ってきたミルクレアは、5本入りよ。」


明るい顔。


「つまり5-2が君の分」


さらに明るい顔。


「いただきます!おいしい!」

「まだ食べてなくない?口に入ったままだよ。」

「舌についた瞬間から味覚細胞は活性化されるので!」

「本当?」

「かも?」

「なかったことにしよう。生物学は苦手だから。」

「適当に、感でわかるものです!」

「そうやって、根拠のないものを…」


危ない。


「次の授業に行こうか。」

「授業は嫌いです!お話にしてください」

「次のお話だけど、あ…たしかに、人は平等って話だったよね。」

「そうだっけ」

「君の授業態度も適当ってことが良くわかったよ。片耳で聞いてたもの、もう片方で流していない?」

「えへへ、照れちゃいます」

「うん。褒め言葉だった。」

「半分は理解してるんですから!半分は!片耳でちゃんと受け入れてます!」

「いや、まったく聞いていない。」

「でも、この可愛さに負けて許してしまう♡」

「不正解だ。と言いたいところだが、今のところ否定に限りなく近い場所までスライドバーを動かした。」

「NOが言えない大人だ!それ反対!」

「限りなく反対に近いとこまでバーをスライドしても良いよ。」

「そうだった。限りなく反対!」

「…良いとしよう。」

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