外伝:切り株の女(中)

「前回のあらずじ!私は藤原香里!どこにもいる高校1年生!今日は何か、人生を変えてしまう大事件起きそうな日!運命の人はどこ?攻略対象は思ったより近くに?次回!『恋に落ちる』!お楽しみに!」

「本編はどこに行ったの!?」


その日の通学路は、いつものよう。全国が決まったバレーボール選手になったとはいえ、大きな変化があるわけでもなく。隣には幼なじみの翔太くん。


「そんなの適当でどうにかなるよ~昨日と明日のことで頭いっぱいなのに今のことなんて気にする暇ないんだから~」

「そんな適当するから現在が苦しくなるのをそろそろ自覚するべき」

「そこは臨機応変!昨日の私が代わりに心配してくれてるからいいの~」

「気楽だな…緊張とかしないの?」

「そこは翔太くんに全任せ!代わりに緊張してあげて~」

「無理です!ダメです!」

「流石に?」

「流石にです!…どうしてでもと言われたら仕方ないですが」

「じゃあそれで!」

「どうしてでもです」

「どうしてでも!頼る人が!翔太くんしかいないの!お願い!」

「仕方ないですね」

「よっ!ナイス!冷静沈着!」

「代わりに心配する人が冷静にしていたら役割放棄ではないですか!」

「ま、いいよ!心配することないからね。たぶん。」

「圧勝したといって安心しすぎです」

「かな?」

「獅子は兎を狩るときにも全力を尽くす。です。」

「全力で逃げる兎の方がいい!」


この普通の日常こそが至福。思い返せば、長くないはずだったこの平穏を、もっと大切にするべきだったかな。


「到~着!」

「良くっできました(パチパチパチ)、んじゃ。」

「一人で大丈夫?お姉さん、ついていくよ?」

「いらないです」

「ドカーン!バサッと切られた!お姉さん大ショック」

「そもそもここまで来たのも姉さんが心配だったからだし」

「そうなの?え、嬉しい!」

「喜ぶことではありません。この前に寄り道して朝練遅刻になったって言われたから…」

「あ、宮脇さんに?困ったな…お姉さんとしての名声に響く…」

「いうほどありますか?その名声というやつ」

「あるの!たくさんあるの!」

「そのセリフでマイナスになりました」

「あ、だめだよそんな!さっきのなし!なしにして?」

「今回だけですよ。主将になるかもしれないですからしっかりしないと…」

「わかった!次回もよろしく!」

「今回!だけですからね!」

「バイバイ!」


そして朝の練習に向かう。いつものような当たり前の日常が待っているはずだったあの場所、私たちのコートが、少し濃い赤色になっていたことより、先に気付けたのは「悪臭」だった。ドアを開けると、とてつもない「悪臭」が、全身にくっつくように来てて、そして…


「今日は早かったな。君らしくないね。」

「宮脇…さん?」

「困るよ。いつもこの時間に来れるのであれば、朝練をサボらずに済んだのにね。」

「宮脇さん!何が起きたんですか!ここ、コートで、みんなが…なぜ!?」

「落ち着いて、まずは深呼吸だ。覚えているか?君が最初にここに来た時にも、それを一番最初に教えてたよ。」

「答えてください!宮脇さん!なぜ…なぜ…!」

「ん?何を?」

「なぜ…みんなを殺したんですか!!!」

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