《才能の原石たち》

「……ふはははは! 凄いな、これ!」



 菊楽は大口を開けて笑った。

 片桐が見せたのは先日マネージャーを務める少年少女たちから送られてきた、とある曲だった。



「いや、本当に凄い。

 彼、高校生だろ? しかも一年生。

 ちょっと前まで中学生じゃないか。

 アピールポイントにも曲は載せてあったが、これにはもっと情熱を感じる」

「『やることなくて暇だから』と言っていましたね。

 通信制らしいですし、時間は余っているのでしょう。

 情熱に関しては……あの二人の影響が大きいんじゃないでしょうか?」

「つくづく優秀なライバーだな。いいものを見つけたよ」



 藤咲詩音、桜庭愛歌、桂いろは。

 三人がVライバーとしてデビューする際に同時に楽曲を出したいと提案し、送ってきた曲。

 完成度はアマチュアのそれではなく、プロに至るほど。


 作詞作曲はいろは、歌っているのは詩音だ。

 今は詩音のソロであるが、投稿する際は三人で歌ったものが良いとの注意書きもある。



「で、どうします社長?」

「どうするも何も、やらせるに決まっているだろう?

 こんなものを腐らせるなんて、俺の性に合わない!」

「ですよね。スタジオの使用許可取ってきます」

「任せた」



 片桐は社長室を駆け出して行く。

 冷静に見えて彼女も興奮していたのだろう。

 送られてきて直ぐに菊楽にみせるほどだ。



 ああ、楽しみだ。プライマリーが原初の星々として輝き出す、その日が。



「なあ、響。彼らは、君のお眼鏡に必ず敵うよ」



 離れたところに居る一番旧い友人に向けて、菊楽は想いを寄せた。

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