《蒼天は君たちを祝福している》

「いや、早いな君たち。

 一時間くらい掛かるものだと思ってたんだけど」



 三人は愛想笑いで誤魔化した。

 一時間どころか十五分あれば足りたのだ。

 改めて指摘されると、少し気恥ずかしくなってしまう。



「早く決まってくれると嬉しいのは山々ですが……いいのですか?」

「はい、皆これ以上良い案は出ないってことで決まりましたから」

「じゃあ見せてもらいましょうか。

 ……なるほど、良いね。ああ、ぴったりだ」



 菊楽はバインダーを受け取り、記入された文字を読む。

 そして、三人にも見せた。

 何秒経っても反論は何もない。

 彼らも納得したのだろう。



「被りもありません」

「ならこれで決まりだ。

 合歓垣ねむがき、デザインよろしく」

「はいはい」



 合歓垣は片桐の隣に座っていた、もう一人の女性だ。

 職業はイラストレーター、ペンネームはねむのき。

 菊楽の古い友人らしい。



「じゃあ色々聞かせてね」



 そうして、いくつかの質問に答えていく。

 趣味や特技、好きなもの。

 三人の共通イメージである色の三原色も伝えた。



「……うん、おっけー。

 今直ぐ描き出したい、いい?」

「どうぞ。いつ頃完成しそうだ?」

「一週間あれば確実に」

さかき、モデリングの時間は?」

「総動員なら、二週間あれば十分だ」



 話はどんどん纏まっていく。

 詩音の調べた通りならモデルの作成に一ヶ月は掛かるらしいが、彼らはもっと早くつくれるのだろう。



「彼らが話し合っているうちに、こちらはこちらでやるべきことをしましょうか」



 片桐の指示に従って、メールアドレスの作成や必要な書類等のタスクを熟していく。

 一時間もすれば全ての作業が終わり、菊楽たちも話し終えたようだった。



「本日はありがとうございました。

 アバターの完成次第、連絡致します。

 また、デビュー前にも講習がいくつかありますので、そちらの受講もお願いします」



 長い面接はそうして終わった。

 面接会場から戻った三人は連絡先を交換し、それぞれ帰路に就いたのだった。



「詩音! どうだった?」

「上々だよ。これ以上ないほどに、ね」



 連絡をして、ビルから出れば直ぐに彩の姿は見つかった。

 どうやら周辺の店で時間を潰していたらしい。



「きみがそう言うってことは、とても良かったってことだね」

「うん。同期、って言えばいいのかな?

 その子たちと凄い仲良くなったんだ」



 二人は今日の出来事を話しながら家へと帰っていく。

 昼下がりの空は、雲一つない晴天であった。

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