第5話 留守宅の出来事。
平日、兄と姉は日本人学校へ行く。父は仕事。となると、母と僕が家に残るのだが、母にも時々は用事がある。
当時、僕は1人で留守番が出来ないくらい泣き虫だった。家の中で家族が全員いなくなると、捨てられたかのような気分がして泣き始めるのだ。何故か? 何故かはわからないが、“自分は捨てられるかもしれない”という恐怖観念があったのだ。
そんな時、家政婦さん(当時、20歳だったらしい)が、泣き止まない僕を後ろから抱き締めてくれた。劉さん、中国人、日本語ペラペラ。(英語も話せたらしい)
後ろから抱き締めて、膝の上に乗せてくれる。柔らかかった、暖かかった。僕は、毎回、次第に心地よくなり泣き止んだ。そのまま眠ったこともある。4歳の頃の話なので、勿論、エロい気持ちではなかったが、劉さんの胸の柔らかさが心地よかった。胸を押しつけられると、何故か安心できたのだ。僕は劉さんが好きだった。
しかし、人間というものはわからないもので、僕達が留守番をしている時に、母のジュエリーボックスからジュエリーが時々失くなるということがあったらしい。母は、その件に関しては、
「ボーナスや!」
と言って、劉さんを責めることは無かったが、暖かく癒やしてくれる劉さんと、泥棒の劉さん、イメージが違いすぎて混乱したのをおぼえている。劉さんが良い人なのか悪い人なのか、わからなくなったのだ。
だが、結局、僕は劉さんに抱きかかえられながらの留守番が続いた。
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