《悪役令嬢に転生したらしい、TSしてるけど》
それから数時間後。
別れを惜しむ少女を振り切り、屋敷へと帰ってきた。
襟を緩めてベッドに倒れ込めば、鳴りを潜めていた頭痛がぶり返す。
良く耐えた俺、良く泣かなかった俺。
自分を褒めて、やっと独りぼっちに成れた空間で、抑え付けていた苦しみを開放した。
涙が出るほど痛いのに、苦しいのに、何故かとても嬉しい。
ずっと自分に足りなかった何かをやっと思い出せたのだ。
地球という星の、日本という国で生きた俺の記憶を全て。
大切な妹が大好きだったゲーム、《フラワリング・エンゲージ》。
個性的な登場人物と主人公が大恋愛の果てに結ばれる、よくある乙女ゲーム。
大人気声優とイラストレーターを起用し、フルボイス・スチルてんこ盛り・マルチエンディングの三拍子で瞬く間に人気になった。
アニメ化、舞台化までした超大作。
────ん、
そうだ、乙女ゲーム。フラエンは乙女ゲームだ。
勿論攻略対象は男。
プロテア・ブルーム=フラウは本来
いや、待て。
俺はローズ・ブルーム=ブロッサム。
あのゲームでローズって言ったらあのキャラしかいなくないか?
嘘だろ、嘘だと言ってくれよ神様。
『ローズ様……麗し過ぎて死にそう』
そう言って、妹が見ていたイラストには如何にも悪役令嬢という風の金髪縦ロールお嬢様が鎮座していた。
今の俺を女にしたらこんな感じなんだろうなっていう女が。
「確定じゃねーか!」
拝啓、妹様。
お兄ちゃんは
助けてください。
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